【映画】28週後……/○○ゆえに死んでいく者たち【考察あり:ネタバレ注意】

ホラー

ゾンビホラー作品、28日後……の続編映画である、28 Weeks Laterをレビュー及び 評価、感想、解説、考察。

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あらすじ

とある農場。ドンとその妻アリス、更には彼らの親族一同は、この小さな納屋と家屋を頼りないシェルターとしている。

外には狂気のウィルスに侵された感染者たちがうろつき、動くものを殺すためだけに生気を失った目を輝かせている。
農場で彼らは鼠のように暗がりで息を潜め、わずかな蓄えの食糧を分け合いながら過ごす日々が続いていた。来るかも分からぬ助けを待って。


感染者の襲来に怯える家族

崩壊は一瞬だ。
感染者に追われ逃げている子供をどうしても見捨てられなかった彼らは、禁断の錠前を外し、無辜の幼子に門扉を開いてしまった。
感染者たちはそれを見逃すはずはない。猛烈な勢いで木扉を殴打し、壁を毟り、屋根を蹴り割る。

ひとり、またひとり。
喉笛を食い破られ、拳骨で頭蓋を砕かれ、内臓を穿り出される。
アリスは名も知らぬ子供を抱えて走り回り、家屋の階段を駆け上る。
感染者の群れが背中に迫った時に彼女が窓越しに見たものは。

家族を見捨て、走り去るドン


こちらを振り返りながら、背を向けて脱兎の様に逃げてゆく夫の姿だった。

絶望の淵に倒れ伏す妻の姿を見ながらドンは何度も「すまない」と呟いた。


家族すべてを捨てて逃げおおせたドンは、生存者の多く集まり、NATO軍の保護下でもあるセーフゾーンに到着していた。
そこで幸運なことに修学旅行中で離れ離れになっていた娘タミーと、息子アンディに無事再会することになる。

バイクで旧家を訪ねる姉弟

子供らにことの真相を話せないドンは、自分の行いは伏せて、妻含む家族は皆死んでしまったと告げる。胸のつかえが取れぬ後悔の日々を送るドン。

そんな折、死んだと思っていた妻アリスをアンディが発見することになる。
アリスは無症候性キャリア、すなわちウィルス保持はしても感染に至らぬ免疫者であったのだ。
凶暴性こそないものの、人としての自我は虚ろなアリスは軍の保護、監視下に置かれる。

そこへ罪悪感を抑え切れないドンが忍び込み、赦しを乞うように口づけをしたことで、全ては再び壊れ出した……。

ネタバレ概略

ネタバレストーリー
  • 1.
    農場
    とある農場に籠る一家。外を徘徊する感染者たちに気付かれぬよう、ひたすら静寂を保つ毎日。
    そこへある日、助けを求める少年が走り込んで来る。見捨てる選択肢をどうしても選べず、彼を招き入れてしまう一家。
  • 2.
    崩壊
    少年を保護したのも束の間、彼を追ってきた感染者が家の木板を突き破る。
    ひとりが感染すれば、あとは雪崩式だ。一家はあっという間に食い殺され、或いは化け物の仲間入りを果たした。
  • 3.
    脱兎
    妻のアリスを助けるために奔走したドンだが、すんでのところで感染者に阻まれる。そこで彼が取った行動は、妻を見捨て、脱兎のように背を向けることだった。
    弟と合流した彼はモーターボートに飛び乗るが、追撃する感染者たちによってジェイコブは引きずり込まれる。
    結局助かったのは、誰もを見捨てて逃げ出したドンだけだったのだ。
  • 4.
    セーフゾーン
    感染開始から28週後。
    逃げ延びたドンは、旅行中で難を逃れていた子供たちと再会する。ロンドン一帯を防衛するNATO軍の庇護下にある当該ホテル周辺は、感染者から隔絶されたセーフゾーンであった。
  • 5.
    発見
    母の死を受け止めきれない姉弟は、近隣にある生家にこっそり立ち寄ることとした。むろん安全の保障されていないエリアへの立ち入りは、厳禁である。
    そこでタミーとアンディが見たのは、感染しながらも凶暴性を発現しない、母アリスの姿だった。
  • 6.
    回収
    RAGEウィルスへの耐性を持つアリスは、貴重な検体としてNATOに保護される。
    母の死を偽った父に、姉弟は不信感を抱いた。
  • 7.
    感染再び
    ドンはこっそりアリスの拘禁される部屋に赴くと、彼女に赦しを乞うた。そして禁断の口づけを交わしたのだ。
    ウィルスに感染したドンはアリスを自らの手で殺害し、ロンドンの街へ再び厄災をもたらすこととなる。
  • 8.
    コード・レッド
    タミーとアンディはロス少佐に救われ、辛くも窮地から逃げ出した。
    一方でNATOが出した緊急時プロトコルは最終手段、すなわち全市民の抹殺だった。
    市街地を逃げ回る民間人、感染者問わず次々に射殺していくNATO軍。
  • 9.
    義憤
    ドイル軍曹は市民の抹殺という命令に疑問を感じ、無辜の民を救うために離反した。
    やがて街でタミーらと合流した彼は、出会った民間人らだけでもロンドンから救い出すことを目的とする。
  • 10.
    秒読み
    感染を丸ごと焼き払うため、空爆が投下されることを無線で知ったドイル。友軍のヘリに合流地点を聞いた彼は、なんとか4分後の爆撃前に辿り着こうと足掻く。
  • 11.
    空爆
    合流は間に合わず、大規模空爆が開始される。
    ドイルたちは危うく焼死寸前ながらも、すんでのところで危機を脱した。
  • 12.
    予定外
    新たな合流地点でフリンの操縦するヘリと落ち合ったドイルだが、民間人たちを乗せることは出来ない、と彼は断った。
    押し問答のさなか、生存者のサムがヘリに飛びつく。フリンは慌て、感染者の群れをローターで切り裂きながらサムを振り落とした。
  • 13.
    猛毒
    新たな合流地点をスタジアムとしたフリンは飛び去り、感染者から逃れるためにドイルたちは走り出す。
    再び市街地に入った彼らを、NATO軍による毒ガスが迫り来る。
  • 14.
    焼却
    車に入ってガスを凌いだ一行だが、続けざまに火炎放射器を持った焼却部隊が迫る。
    エンジンがかからない車を押しがけで始動するため、ドイルは車外から車体を押す。
    最後に見た姿は、彼が炎に包まれているところだった。
  • 15.
    地下
    ヘリから掃射を受けながらも、ロスは車を走らせて地下鉄の入り口に辿り着く。
    そこで暗闇から現れたドンによって、彼女は殴打され死んでいく。
  • 16.
    親子
    ドンはアンディに迫り、首筋に噛みつく。タミーは拾ったライフルで彼を撃ち、自らの手で父を殺した。
    アンディには母アリスのウィルス耐性がいくらか受け継がれており、すぐさま発症はしないようだった。
  • 17.
    英仏海峡
    スタジアムでフリンと落ち合う姉弟。
    英仏海峡を越える彼らだったが、それは全世界へ感染を広げるための第一歩だった。

感染者の特徴

行動力

前作と共通して、この「28」シリーズの感染者は恐るべき強靭さを備えている。

走る、昇る、殴る。

草原を全力疾走する感染者たち


まず走る。感染者は皆、トップアスリートのようなフォームで全力疾走し、生存者を追い詰める。その執拗さと無尽蔵のスタミナはそれだけで脅威だ。生存者は迫り来る感染者の誰よりも早足でなければ、生きる資格を剥奪される。

そして昇る。生前の感覚を完全に失ってはいないので、階段で躓いたり梯子に苦戦するようなことは一切無い。段差や遮蔽物で追跡を振り切ろうと考えれば、瞬く間に捕らえられるだろう。
例外的に、泳ぐことが出来ない様子は冒頭で見られる。水の上は数少ないセーフエリアになり得るだろう。

更には殴る。当シリーズの感染者は飢餓感で生存者に追いすがるゾンビではない。RAGEウィルスは人間の根源にある原初の怒りを触発する働きをしている。
勿論噛みついて肉を貪ることも出来るが、その腐った前歯だけを注視しているようでは生き残ることは至難だ。
奴らは生きて動めくというだけの理由で、その存在全てを憎んでいる。

感染力

ビルの屋上でスナイパーライフルを抱えるドイル

空気感染の無い粘膜接触が基本の感染ルートだ。噛みつかれたり、血液を浴びたり、襲われて重傷を受ければすぐさま感染者の仲間入りを果たす。

物語の時系列であるパンデミック発症から「28週後」には米軍主導のNATOによりこの感染の連鎖にも終わりは見えていた。

僻地の感染者が飢餓状態で自然死を迎えたほか、首都でも掃討が行われたためだ。
NATOは事態の再発を防ぐ為に相当入念なチェック態勢を用意している。不測の事態に備えたプランもいくつか準備済みのようだ。

そうでもしなければこの恐るべき爆発的感染力によって、それこそ人類の尽くが滅びてしまうことを見抜いていたのだろう。

記憶

意識の虚ろなアリス

感染者の内の何割かは、生前の記憶を宿している節がある。
懐かしい生家へ自然と戻る者や、愛憎をすり替えて執拗に家族を追う者。

奇妙な性質ではあるが、科学者の中にはこれを感染治療への希望と感じている者も居るようである。

カメラワークが最高

泣きわめきながら走るドン

アクションパートのカメラワークが最高峰。
リテイクを恐れないハンドヘルド(手持ち)によって、血が通った躍動感ある描写に成功している。

一般的に高効率なのは、手ぶれを一切排除した固定カメラになる。撮影技術を全く度外視で演者側だけの問題を問うのみであれば、必然リテイクは減少することになるだろう。
しかしそういった趣向は無機質感を余儀なくされ、必然的に冷たいカメラワークになりがちだ。


本作では素晴らしく手持ち感溢れるカメラが活躍し、アクションシーンの緊迫感を最大限まで高めている。
しかも副作用である「カメラ酔い」や、「状況の分かり辛さ」を全く感じさせず、心地良いぶれに特化した技術が見られるのだ。

個人的には、好きを通り越して愛しているレベルのカメラだ。
あらゆるシーンで用いられるムーブが完全に適切で、全く意図した通りの効果を最大限で付与している。

案外重要視されないカメラワークだが、実はこれが悪いと全てご破算になる。
陰の功労者、カメラマンに惜しみない賞賛を贈りたい。

前作との趣向の違い

市街地を走るアンディと、それを追うドイルとロス

たいへんに評判の良かった前作と違い、今作では不満を漏らす声も一定数存在する。

28日後はそれまでのパニックホラー系作品に多用されていた、ビックリさせるような演出や過剰なゴアシーンを意図して排していたからだ。
更に要所にメッセージ性も含まれており、これはジョージ・A・ロメロ作品に感銘を受けたコアなファン達の感性に良く刺さったことだろう。


今作ではゴアシーンや、緩急を用いたドッキリシーンがやや多く見られる。
そういった演出の変化を機微に感じ取ったカスタマーからは、前作に劣るとの烙印を押されることもやぶさかではない。


では28週後は一般的なゾンビパニック映画に比べて劣る出来か?
否、そんなことは少しもない。


愛という一本筋のテーマに沿って展開する情景に、緊張感溢れるパニックムービー。
ラストシーンの哀しい過ちに至るまでの間、我々は目を離せないだろう。

多くのレビュワーにとって物足りぬとの印を押された今作だが、筆者はこの映画が大好きだ。

評価

強靭な感染者、愛をなぞるストーリー、忘れられないエンディング。

ゾンビファンを名乗るならば必見の一作である。

★★★★★
文句無しの満点。
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以下、考察及びネタバレ注意。





解答は冒頭で出ている

感染者から逃げるドン

愛がテーマだ。しかし愛がテーマだが、一般の作品のそれとは異なる。
愛に従って行動した者がことごとく死ぬか、或いは不幸を呼び込むという、通常とは真逆の描かれ方をしているのが最大の特徴だ。

映画インターステラーでは愛に従うことの合理性を説いていたが、この作品ではまったくそれを否定したつくりになっている。

血の繋がった親族や愛を誓い合った妻。守るべき者たちを捨て去って、脱兎のように逃げる。
冒頭でドンが取った行動こそ、唯一このRAGEウィルスの蔓延した世界で生き残るために必要な手段だった。

これは決して、シナリオライターが別れた妻に多額の慰謝料を請求されているからと、嫌がらせで書いた脚本ではないだろう。
一般的な作品と似たような描写では、数ある映画の中にあっという間に埋もれる。そういう判断が働いたと信じたい。

王道を好む視聴者には不満が残るのかもしれないが、筆者のようにヒネた性格のファンには深く刺さった。

愛で死ぬ壱:口づけ

アリスから感染したドン

言うまでもなく、ドンがアリスに赦しを乞う口づけを交わすシーンだ。行動の愚かしさを揶揄する声も一定数あるが、しかしこれを抜きにしては物語が展開しない。

このシーンの恐ろしくも悲しいところは、口づけで正気を失うドンと対照的に、アリスが理性を取り戻しているような部分が見られることにある。かくして農場ですれ違った夫婦の意識は、再び邂逅することなく血だまりの中へと沈んだ。

一部故意の復讐説もあるこの感染事故だが、アリスは口づけの瞬間まで正気ではなかったと思う。これは白雪姫オマージュと筆者は捉えた。

だが28週後……の毒リンゴは、くちびる越しに毒を移すことになった。

愛で死ぬ弐:命令違反

ロスに肩を貸すドイルと、そのあとを歩く姉弟

ドイル軍曹は明らかな命令違反、ロス少佐も成り行き任せとはいえ、民間人の保護を行うことは本来、緊急時プロトコルに含まれていないはずだ。

無辜の命、幼い姉弟を守ろうとして彼らは死んだ。ドイルは味方に焼き払われ、ロスは元市民に殴殺され。
彼らが命を賭してまで成し遂げたのは、結果的にとはいえ、収束しかけていたウィルスの再パンデミックだった。

命の無駄遣いどころではない。こんな皮肉はそうそうありはしないだろう。

愛で死ぬ参:家族

感染した弟を黙ってヘリに乗せ、最悪の結末を誘引したタミーとアンディ。
劇中で明言されないが、弟アンディは母アリスと違い、完全な感染免疫は持っていない。彼の左右の目の色がその伏線となっている。

つまり母親のようにある程度安定した状態は望めず、感染後に一時的に凶暴性が発現し辛くなっているに過ぎない。その後RAGEウィルスによって暴力衝動を引き起こした示唆は意味ありげなヘリの飛行カットであり、フランス到着後に何が起きたかは語るまでもないだろう。

ドンが執拗に娘と息子を追う理由

前を見つめるドン

これも同じく愛に起因する。愛憎表裏一体、深い愛は時に深い憎しみへと変わる。
感染者と化したドンに強く残されたのは家族への思いであり、それをRAGEウィルスによって憎悪へと塗り替えられた。

通常無作為に生存者を襲う感染者であるが、生前の記憶の一部を引き継ぐことはアリスで実証されている。ドンが家族を追い回すのはシナリオの中で違和感を感じるかもしれないが、それほど不自然な描写でもない。

終わりに

多くの視聴者にとってグッドエンディングや、正の感情に従って幸福な未来を迎えるストーリーは正義だ。
ゲーム、映画、漫画、ドラマ。多くの作品でアンケートを取った媒体が以前に掲載していたが、ストーリー自体は鬱屈とした救いのない構成であったとしても、最終的には登場人物らが幸せな結末を迎えることに賛同する意見は圧倒的に多数であった。


28週後……はバッドもバッド、最悪に後味の悪いエンディングを迎える。だが筆者のように穿った心もちで斜に構えた偏屈者たちがバッドエンディングを望むこともまた、少数意見でありながら存在する。
そういう意味では多数派に迎合せずに、敢えて後味の悪い終焉を見せてくれた今作に感謝を示したい。

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コメント

  1. 匿名 より:

    肝心な場面を省いて、家族全てを見捨てて逃げたドンとか言ってる時点で何も解っていない。ドンはアリスに手を差し伸べ、一緒に逃げようとした。その手を振り払い、見知らぬ子供の手を取りドンをや家族を見捨てたのはアリス。