【映画】クワイエット・プレイス/風刺表現3か所まとめ【ネタバレ:レビュー】

ホラー

静寂をテーマにした珍しいタイプのモンスターホラー映画、A Quiet Placeをレビュー及び評価、感想、解説。

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あらすじ

とあるひと気のない街を放浪する、一組の家族。
彼らはひと言も発せず、何か恐るべきものから身を隠すように、ひたすらに慎重でいる。

ドラッグストアで物資を調達のさなか、最も年若い末の息子がロケットのおもちゃを拾う。
彼がビープ音を発するスイッチに手を触れる寸前で、父はそれを取り上げた。

「持っていけないんだ」
そう手話で伝えると、ストアを立ち去りまた、あてどない旅の続きへ向かう家族。
だが幼い弟を見かねた姉は、こっそりと先の玩具を弟に持たせていたのだ。

裸足で往来を征く彼らは、ある桟橋にさしかかる。
最後尾を歩く末の息子は、先程のロケットのバッテリーをはめた。何の悪気もなく。
鳴り響くビープ音。


振り返り走り寄る父の眼前で、最愛の息子は化け物に貪り食われていた。

ネタバレ概略

ネタバレストーリー
  • 1.
    補給
    とある薬局に、四人の家族が息を潜めるように物品を拝借する姿。
    彼らはみな靴も履かず、何かに怯えるように物資を集めている。
  • 2.
    玩具
    末息子のボーがスペースシャトルの玩具を持ち出したのを見て、両親は肝を冷やす。
    そっと電池を取り外し、その玩具を持っていけないと息子に伝えた父。
    だが薬局を立ち去る前、姉のリーガンはこっそりとその玩具を弟に与えた。
  • 3.
    死別
    桟橋にさしかかったところで、鳴り響くビープ音。ボーがはめた電池によってけたたましく玩具が音を鳴らしている。
    そして幼い息子は、家族の目の前で怪物に喰われた。
  • 4.
    472日目
    郊外の農場に居ついた一家は、音の無い生活を営む。
    父リーは救援信号を送り続けるも、反応が返ってくることはなかった。
  • 5.
    補聴器
    リーは耳の不自由なリーガンのため、自前の補聴器を作成しようと試みる。
    だが娘はそれをうまくいくわけない、と喜ばなかった。
  • 6.
    出産
    母のイヴリンは妊娠中であり、もう間もなく出産予定日になる。
  • 7.
    訓練
    長男のマーカスは父に釣りに連れて行かれることになった。これは先の未来でも、自給自足が可能なように彼を鍛える意味合いも含んでいる。
    だがマーカスは怪物を怯えて嫌がり、逆にリーガンは自分を連れて行くように頼んだ。
    結局リーは、マーカスだけを半ば無理に連れて行くことにする。
  • 8.
    慚愧
    リーガンは末息子のボーが死んだ原因は自分にあると考え、両親に憎まれていると思い込み、家を出る。
    彼女は音が出ないように改造した例の玩具を、そっとボーの墓前に供える。
  • 9.
    自害
    狩猟の帰り道、リーとマーカスは老人に出会う。彼の足元には同じ年頃の女性が倒れており、怪物に喰われた痕跡が見られた。
    その老人はぐっと顔をしかめると、怒りとも哀しみとも判別出来ないような叫びを自ら上げた。
    そして彼は、妻と同じように喰われる。
  • 10.
    自宅でひとり皆の帰りを待つ母のイヴリンは、地下室への階段から飛び出した釘をうっかり踏み抜いてしまう。
    持っていた額縁が割れる音を聞きつけ、家の周囲を取り囲む怪物の気配。
    彼女は声を堪えながらも、緊急を知らせる赤い照明を点灯させた。
  • 11.
    帰還
    異変に気付いたリーは銃を持ち家へと戻り、マーカスは怪物の気を逸らすために花火を打ち上げる。
    ちょうどその時、イヴリンは産気づいてしまう。
  • 12.
    赤子
    リーは自力で出産を終えた妻と赤子を助けると、地下に籠る。
    そこで予め用意していた酸素マスクを赤子に付け、箱の中に隠すと、ひとまず泣き声は聞こえないようになった。
  • 13.
    共鳴
    花火に気付いて家路を急ぐリーガンの背後に化け物が迫る。
    だが不思議なことに両者が接近すると、補聴器と化け物の耳がハウリングし始める。これに堪らず逃げ出す怪物。
  • 14.
    姉弟
    トラクターの下に逃げ込んだマーカスとリーガンは再会を果たす。
    彼らはサイロの屋上で火を灯し、父に合図を送ることにした。
  • 15.
    浸水
    イヴリンと赤子の隠れる地下室に、壊れた配水管から水が溜まってゆく。
    箱の蓋は開いてしまい、悪いことに化け物が同じ地下室に一匹忍び込んでいた。
  • 16.
    落下
    サイロの扉を開けてしまい、穀物庫に落下するマーカス。
    音を聞きつけた怪物の集まる中、必死にリーガンは弟を救おうとする。
    やがて化け物はサイロの中に侵入してきたが、やはりリーガンの補聴器を嫌がって逃走していった。
  • 17.
    父親
    リーはとうとう姉弟を発見する。だが運悪く、怪物も同じだった。
    父は最後に、リーガンを責めていないことと、永遠に愛していることを告げて犠牲となった。
  • 18.
    帰宅
    壊れたピックアップトラックで、坂を下らせて家に辿り着く姉弟。
    迎える母は夫の死を悟り、自分の手で子供たちを守ることを決意する。
    だがそこに、新たな怪物が一匹忍び寄る。
  • 19.
    弱点
    ショットガンを発砲して同胞を葬ったイヴリン目がけて、何匹もの化け物が忍び寄る。
    だが既にその弱点が自分の補聴器であると掴んでいるリーガンたちは、もはやそれを恐ろしいとは感じていなかった。

モンスター

モンスターの特殊な耳の図

このグロテスクなクリーチャーについて判明している事実は少ない。作中の新聞記事とその様子以外に窺い知ることが困難だからだ。

メキシコ沖に隕石が墜落した直後からこの化け物は発生したようで、人類に甚大な被害をもたらした。主に哺乳類全般を食料とするらしく、人間もその例外ではない。


体長は直立でおよそ2~3mほどあり、俊敏にして獰猛、食欲も旺盛で個体数もかなり多いようだ。

特筆されるのはその聴覚器官であり、音を聞く際には格納されている集音器のような部分が露出し、かなりの精度と範囲でそれを捉える。
その為生存者は、靴音にすら気遣う生活を余儀なくされている。

逆に視覚は退化しているらしく、完全な盲目。
嗅覚も特に発達しているわけではないようで、眼前の獲物でも音がなければ補足出来ないようだ。

生存者

物音を立てないように木立を歩く家族

作中のメインであるこの家族以外にも生存者はいるようだが、その数は相当減っている。
父親は毎日各無線チャンネルでSOS信号を送り続けているが、反応は乏しい。

仮に通信が確立しても声を出せば化け物が寄ってくるので、意思の疎通は難しそうだ。


対抗手段として銃火器や刃物で応戦することも可能ではあるが、やはり同種のモンスターを呼び寄せる引き金になり得るだろう。個人での戦闘は自殺行為に思われる。

一方で軍隊や警察機関もこのおぞましい化け物に対応出来なかったようで、いくつかの国では完全に国家機能が麻痺してしまっている。

現実的に現代軍事力は負けるのか?

ショットガンを構えて怪物を迎え撃つイヴリン

作中の国家はことごとく滅びた描写をされていたため、人類の最大の武力をもってしてもこの化け物を制することが出来ていない設定になっている。

もちろん最大火力といえば核兵器だが、これは自国には撃てない。仮に怪物を駆逐しても、向こう数十年住めない土地を作ってしまえば元も子もないからだ。

ということで作中の比較対象は、

核を除いた人類全兵力 × 怪物



このようになるだろう。

ではこれを考慮した時、作中の人類敗北済み設定は果たして正しいだろうか?
化け物の戦闘力を考えながら推察してみよう。

装甲

銃火器の効かない堅牢な装甲を持つ場合、人類は苦戦を強いられるだろう。

銃所持の認められる地域で一般的に普及した銃火器で対抗出来ないとすると、化け物を倒せるのは必然、軍隊以上の武力保有者のみになる。
毎度毎度RPG-7や装甲戦闘車両に重戦車、或いは巡行ミサイルを必要とするのであれば確かに人類敗北も否めない。


しかし作中でイヴリンは一撃で化け物の顔を吹き飛ばしており、少なくとも散弾銃の近接射撃が有効であることは確かになった。
であるならば、あらゆる銃火器を弾くほどの固い装甲が備えられているわけでもなさそうだ。

一般歩兵で立ち向かえる装甲ならば、仮に兵士が大量に失われたとて、民間人から有志を募る方式で駆逐戦を行えない道理は無い。

音に敏感というのは操りやすいという裏返しでもあるため、視界の開けた箇所で全方位を固めた掃討を行いやすいと思われる。

数の暴力

明確に示されない部分として、化け物の数がある。

仮にこれらが人類を超えるような数、或いは無尽蔵に補充されるようなシステムが確立されていれば、当然勝ち目はない。
繁殖の仕組みも示されないので、ここは言及し辛い箇所だ。

個の能力値

音に敏感である反面、目の前の人間にすら気付けない鈍感さもある。
そのため戦闘にあたっては、ひたすら足音を消すだけで優位性が保てるだろう。

怪物がどの程度集音可能かは不明なものの、クロスボウやスペツナズナイフなど、大きな音を発しない武器も有効そうに思える。

また例え位置がバレても仕切り直しをするだけでこちらを見失うため、熟練の猟師などは扱いが容易そうな気もする。

集音の際に、頭部の重要器官を剥き出しにするのも弱点に思われる。
身体の内側を鍛えられる者は居ないため、この部分を開いた際に矢などを突き刺すのが効果的だろう。

結論:負けないよね?

恐ろしいほどの物量で攻められない限りは、恐らく全人類滅亡とはならないだろう。

銃規制国ならまだしも、銃天国アメリカで対応出来ない未来は想像し辛い。

何を風刺しているのか?

脚本を手がけたクラシンスキーが、

風刺が含まれている



と言うので風刺を探していこう。


なお、余計なお世話かもしれないが、そういう裏設定は自分で口にせず、行間を読ませる方が趣がある。

騒音問題

赤子を抱え、息を潜めるイヴリン

明確なテーマとして、

騒音に苛立つモンスタークレーマーと、それを気遣う家族



これが挙がるだろう。

特に顕著なのは赤ん坊が生まれた場面で、「どうか今だけは泣かないで」と願うイヴリンの姿が印象的だった。

この他にも、

  • 足音
  • 喋り声
  • 玩具の音



こういった様々に気遣いながら生きていかねばならない、息苦しさを表したのだろう。
冒頭の末息子ボーは、まさに文字通りのモンスタークレーマーの餌食になったというわけだ。

恐らくアパートやマンションでこういった経験のある方は多いだろう。
子供の声や物音に、必要以上に過敏なモンスターは割かし多い。


また印象的なシーンとして、妻を殺された老人の場面がある。
モンスターに最愛の人を殺されてなお、沈黙を強いられた老人。

「感情が昂ぶった時ぐらい、好きに叫ばせてやれよ!」

といったところだろうか。

死の責任

スペースシャトルの玩具を持つボーに襲い掛かる怪物

往々に予期しない死とは、死んでしまった者よりもその周りの方が辛い思いを抱えたりする。
中にはそれらに押し潰されて自らも命を絶つことさえあり、耐え切れない悲しみを思わせる。


作中で死亡した弟ボーの責任を、延々とリーガンは背負っている。
しかしよくよく考えれば彼の命を奪ったのは怪物であり、過ちこそあれど彼女に責任など無いのだ。


我々はよく、最も悪い者を見逃しがちだ。
「自己責任」「予防不足」「配慮が足りない」というまやかしの言葉で、責められるべきでない人を非難したりもする。
本当に悪いのはモンスターで、それに襲われた家族を責められる人など居ない。


モンスターの部分は、色々なものと差し替えられる。

  • 病気
  • 事故
  • 犯罪
  • テロリスト



リーガンを責める外野も、自分を責めるリーガンも。

全部間違ってるぜ!」と言いたい気持ちは伝わった。

障がいへの想い

無線チャンネルを操作するリーガン

リーガンの補聴器で、いわば残りの人類は救われたと言っていい。
この機能を拡張していけば、全ての化け物は恐るるに足らない存在と化す。

つまり人より劣ると謗られる障がい者のリーガンが、誰よりも素晴らしい働きをしたということになる。


この部分に強く感じるメッセージとしては、

障がいはハンデじゃねえ、個性だ!



なかなかクールなギミックだった。

評価

キャッチコピーや話題性、一部評論家の絶賛で良作の声も聞こえる当作だが、蓋を開けてみればシナリオや演出はそこまで良質とも言えなかった。

また割とゆったりと進行する構成が逆に、ボリューム不足も感じさせてしまった。
ホラー作に必要なスピードとテンポの良さは、イマイチな感もある。

続編のクランクインが発表されたので、そちらに期待。

★★★☆☆
三ツ星の良作。
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この恐怖とスリルに満ちたホラー映画で描かれるのは、音を聞きつけると即座に襲ってくる謎の生物から隠れながら、静寂の中なんとか生き延びている、ある一組の家族。世界中の批評家や映画ファンから大絶賛された、今年絶対見るべき1本を体感せよ。

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