実話ベースで展開する呪い人形にまつわるホラー映画、Annabelleをレビュー及び 評価、感想、解説。
あらすじ
触れる者にことごとく死を振り撒く呪い人形、アナベル。
現在はウォーレン夫妻によってガラスケースに厳重保管されているこのドールだが、その恐るべき誕生の秘密まで遡る。
研修医のジョンとその妻ミアは、ある夜隣家の住人による叫び声で目を醒ました。
不審に思ったジョンは隣家の様子を探ると、驚くべきことに住民の夫婦が殺害されていた。
更に殺人犯の男女はジョンらの住まう家にも標的を変え、強引に押し込んで来た。
間一髪で到着した警官により、夫妻は辛くも難を逃れる。この時警官による発砲で犯人の男は死亡、また女の方も自ら首を掻き切り、自害に及んでいた。
死亡した犯人らは、カルト集団の一員だった。また女の身元は隣家の実子だったことが明らかになり、父母を狙った娘による残忍な殺人事件として多くの注目を集める。
その女の名前は、アナベル。彼女が自害の際にその胸に抱いていた人形こそが、のちの呪い人形そのものだった……。
今作はスピンオフ

死霊館シリーズの2作目にあたる今作だが、シリーズ内での位置付けはあくまで”スピンオフ”扱いである。
ウォーレン夫妻は登場せず、アナベル人形にその名が付けられるまでを描いたストーリーになっている。
現実で語られるアナベル人形起源の内容とはかなり乖離しているため、完全なフィクションとして捉えるのが良さそうだ。
ストーリー自体は、
といったもの。可もなく不可もなくといったところだろうか。
一方で生前のアナベルがチャールズ・マンソンの影響下にあったという独自解釈も為されていて、この辺りは面白いと感じた。
恐怖演出

作中ではアナベル人形が動き回って恐怖を振り撒く、いわゆるチャッキー的な演出方法は選ばなかった。
主に悪霊と化したアナベルと、その背後に潜む悪魔がメインで暴れ回る。うっすらした霞のようなJPタイプの霊魂ではなく、ガッツリ重量感を伴った悪霊なのはいかにも海外製といったところか。
アナベルをチャッキー化しなかったのは正解に思える。現代であの映画をオマージュすれば失笑は逃れ得ないだろう。
やはり時代に即した演出を選ばねば、適切な恐怖感を与えるには至らない。
上記画像の場面は見どころのひとつだ。ありそうでなかったこのドアを跨いだドッキリシーンに、感嘆と恐怖を同時に強く感じた。
スピード不足

死霊館に比べ、展開のもたつきや不要な茶番の挿しこみが目立った本作。
特に序盤の30分程度まではストーリー的には必須であるものの、もっと凝縮や省略によってスリム化が必要だ。だらだらと見せられる研修医と妊婦の苦労話など、ホラーの前菜として何の役にも立たない。
こうした尺の圧迫によって、肝心の恐怖パートの割合が少なく感じるのもバッド。展開の緩急バランスを損ねたことで、退屈を感じる時間が長すぎるのは看過出来ない。
宗教色

このシリーズはもちろん、割と多くのホラー作品ではカソリックに寄った構成であることが見られる。
本作のエヴリンがまさにそれを体現したキャラクターであり、無神論者の立場で彼女の行動を追ってしまうと、意味合いが伝わらない。
カソリック教徒とその教えを理解した状態で視聴することが、実は前提として必要だったのだ。
批評家などはフラットな立場での視聴を求められることがままあるが、しかしまっさら過ぎるのも考え物だ。
視聴する上で則した前提を自分にセッティングすることこそ、真にフラットなポジショニングと呼べるだろう。
キリスト教徒の美徳。これを把握しているか否かで、結末で感じるものに差異が生まれるだろう。
可視化された脅威

賛否分かれる”脅威の可視化”であるが、今作でははっきりと悪魔の姿を描いている。
否定派にとっては、
- イマジネーションこそが最大の恐怖である
- 前段で煽りが強ければ強いほど、具体化された時のイメージの乖離による落胆が大きい
- スピリチュアルな存在の表現に、質量を伴わせるのは不躾
概ねこういった意見が見られる。本作の悪魔が実体を見せた時に、大きな嘆息を吐き出した方も多いかもしれない。
古参の和ホラー作品のコアなファンはこうした傾向が強く、実体を敢えて露わにせずに想像力に問いかけることを許容する者が多い。これは民族性による部分が大きいだろう。
肯定派の意見はどうか。
- 登場人物への共感と恐怖を高めるには、害意を露わにした実体が必要
- 単純に出来映えが良ければ、直写で恐怖感を加速可能
- 霞や陰でうやむやにせず、解答をラストシーンまでに示すのは義務
このような意見を出す。海外勢はこの傾向が強く、明暗をくっきり線引きしないと駄作と烙印を捺す者が多い。
クローバーフィールド/HAKAISHAを例に挙げると、序盤の全容の掴めぬ巨大生物が分かりやすい。
視聴者によっては空撮で実体を丸ごと見せた後半パートに不満を持つ者も一定数おり、全体像の不明瞭な前半部分の流れを終始貫くべきであったと彼らは考えている。
結果的にその巨体を把握させる仕組みへとシフトさせたのは、視聴者層の多数決を意識したつくりだったと思われる。
いずれも共通して言えるのは、
ということではないだろうか。
花形ともいえる敵役の正体露出で折衷案を探るとすれば、やはり徹底的にこだわり抜いたメイクやグラフィックスの造形が求められるのだ。
さて本作の悪魔はどうだったか?

演出で上手く盛り上げていた部分は評価出来るだろうが、単純なその容姿についてを問われれば、イマイチと感じる方が多いのではないだろうか。
既存の別作品で描かれる悪魔像と大差なく、目新しい要素も無い。ここに注力するにはやや登場シーンが少ない者であるため、ある程度の妥協が見られたと思わざるを得ないだろう。
評価
このような感想にとどまった。
とはいえホラーとして駄作とまでは思わないので、アナベルシリーズに興味のある方にはお勧めと言えるだろう。
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