【映画】ザ・セル/○○で狂った?カールの過去を完全解明【考察あり:ネタバレ注意】

ホラー

精神世界での殺人鬼との対話を描いたマインドホラー映画The Cellをレビュー及び 評価、感想、解説、考察。

スポンサーリンク

あらすじ

特殊医療機関キャンベルセンターに従事するキャサリン。この機関では先進技術にて昏睡状態の他者の精神に入り込む技術を研究しており、キャサリンはその実行員に唯一選ばれているエージェントである。


ある日、連続猟奇殺人事件の犯人をFBIは追い詰める。
だが家宅に突入し捕縛間もない寸前で、犯人のカールは持病の発作により意識を失い、昏睡する。

カールにより拉致、監禁された最後の少女の生存を知ったFBIは、彼女の捜索を開始する。
しかし時間が無い。カールは時限装置により少女を監禁している水槽に大量の水を注入する仕掛けを施しており、少女に残された時間は僅かなものだったのだ。


昏睡から目覚める見込みのないカールをFBIはキャンベルセンターに急遽搬入した。
カールの精神世界に侵入し、監禁された少女の情報を速やかに入手して貰いたい。キャサリンに協力を願うFBIだが、それは大変な危険を伴うことを誰もが危惧した。

カールは幼少期のトラウマで完全に精神を病んでいたのだから。

キャサリン

カールに話しかけるキャサリン

美しきエージェント。元小児精神科医。
彼女の卓越した診断力を見抜いたキャンベルセンターは、彼女をスカウトした。
通常、他者の精神世界へ入り込むことはキャサリン以外には許されておらず、その優れた資質を窺わせる。

特に幼い者へ対する慈愛に満ち溢れており、カールの精神世界にて邂逅した幼少のカールを救おうともがく。
一方で本来の任務を忘れて突っ走ってしまう危うさもあり、終盤では独断専行が見られる。

作品内でいくつもの面を表現することになるキャラクターである。
仕事に打ち込む女性、少年を守ろうと奔走する姉、闇に堕ちた悪女、慈愛に溢るる聖母。

カール

次の被害者を物色するカール

連続猟奇殺人事件犯人。同時に精神病質者でもある。

「漂白」に対して尋常でない執着を持ち、被害者を真っ白に色抜きして廃棄する特徴がある。
FBIの見立てでは、無意識化の良心が犯行現場にわざと痕跡を残していた。これは即ち、犯行を止められない自分を捕まえて欲しいというアピールだった。

精神世界内で彼も多数の顔を見せる。少年期、青年期、狂気の王、そして邪悪。

恐れを感じる幼いカール


幼少期に父親から受けた酷い虐待で精神を病んだことを知ったキャサリンは、既に手遅れなことを知りつつも、カールを救おうと奮闘する。

ネタバレ概略

ネタバレストーリー
  • 1.
    心療
    心を病んだ少年エドワードの世界。砂漠の大地に降り立ったキャサリンは、心を開くように少年に語り掛ける。しかし彼に潜む狂気の片鱗がまたも現れると、キャサリンに襲い掛かろうとした。
    心療は中断。またも彼女は、憐れな少年を救うことが出来なかった。
  • 2.
    カール
    郊外のサイロに立ち入った青年と、アルビノ犬。水槽に浸かった少女の遺体を眺めながら、彼は自分の犯した罪に震えた。
  • 3.
    遺棄
    浅瀬の川で、何件目かの連続殺人被害者が発見される。
    一連の犯人は敢えて証拠を残しており、死体も見つかりやすい場所に遺棄した。これらから、連続殺人鬼は心を病んだ精神病質者であり、自ら止められない犯行を誰かに止めて欲しい一面が見える。
  • 4.
    拉致
    カールは新たな被害者を選別する。駐車場で捕らえた若い女性=ジュリアは、為す術なくサイロ脇の小屋へと連れ込まれる。
  • 5.
    突入
    証拠を辿ったFBIは、遂にカールの自宅を突き止める。しかし突入の寸前に、彼は持病の発作により昏睡状態に陥っていた。
    そして自宅からは、消えた女性ジュリアは見つからないままに。
  • 6.
    要請
    カール宅のビデオテープから、囚われたジュリアが未だ存命である可能性を見出したFBI。自動放水によって命が奪われる前に、居場所を特定する必要がある。
    昏睡状態のカールへ尋問を行うため、キャンベルセンターで犯人の精神世界に侵入することを要請した。
  • 7.
    初動
    カールの中に侵入したキャサリン。そこで出会ったのは、善を保ったカールの自意識だった。
    幼少カールにジュリアの居所を訪ねるキャサリンだったが、取り巻く世界は徐々に不気味で奇怪になりつつあった。
  • 8.
    幼少カールのあとを追って探索するキャサリンを、カールの中の不気味な護衛が捕らえる。そこで彼女は、カールの中に眠る悪の自意識=神との邂逅を果たした。
    あまりにおぞましい悪の権化との出会いに、キャサリンは緊急脱出スイッチを押す。
  • 9.
    過去
    二度目の侵入で、またも幼少のカールと出会ったキャサリン。そこで見た彼の過去は、あまりにも酷い仕打ちを強いる彼の父親の姿だった。
    そこでまたも、悪の権化たるカールが現れる。今度は為す術なく捕まった彼女は、現実でも異常な身体データを発していた。
  • 10.
    救援
    ピーターはキャサリンを救うため、自らも精神世界へと挑む。
    洗脳を受けた彼女と再会を果たすも、ピーター自身も悪のカールに捕らわれる。そこで彼は、小腸をオルゴールで引きずり出される拷問を受けることとなった。
  • 11.
    天啓
    正気に戻ったキャサリンに助けられたピーターは、幼少カールの元で見つけたオブジェクトの造形から、とうとうジュリアの監禁場所を割り出すことに成功する。
  • 12.
    救済
    ピーターはジュリアを救いに行ったが、キャサリンはまだやるべきことがあると感じていた。それは、カールの救済だ。
    今度は自身の世界にカールを呼び込ませ、三度目の精神世界が始まる。
  • 13.
    甘い死
    キャサリンの精神世界を蝕もうと目論んだ悪のカールだったが、主導権を握っているのはキャサリンの方だった。
    カールの善良な部分は、自分もろとも悪の部分を殺してほしいと願う。
    彼女が悪のカールを滅ぼすと、同時に善のカールも死んでいった。
  • 14.
    救出
    ピーターはサイロの地下に監禁室があることを突き止め、ギリギリで水槽を割ることに成功した。
    ジュリアは無事に生還し、全ての幕はそこで下りたのだった。

悪夢の世界

優雅に階段を降りるカールの中の神

カールのおぞましい精神世界はまるで、見れば飛び起きるような悪夢そのものだ。
彼は殺害した被害者女性を自分の管理下に置けると考えており、女性たちは不愉快なオブジェと化して永遠に彼の世界に捕らわれ続ける。

また彼の自己理想像を具現化した上記画像などは、禍々しさに満ち溢れた表現であった。
その一方で壊れてしまう自分に悲観する幼少期、青年期のカールも同時に存在することで、彼を単純で純粋な悪であると断することは出来ないと暗に示している。
誰であれ、カールになり得るのだ。

ピーターに拷問を下す狂気のカール


FBI捜査官ピーターがオルゴールで腸を引きずり出されるシーンは衝撃的だろう。
この回転仕掛けで腸を引っ張る拷問は他作品でも見たことはあるが、当作品では格別な狂気度だった。
実に嬉しそうにオルゴールを鳴らすカールと、やまぬ絶叫をコーラスに叫び続けるピーター。
きっとこんな夢は誰も見たくないだろう。

ディテールは美を意識

美しき、悪に落ちたキャサリン

ショッキングなシーンの多い当作品だが、どのシーンも大なり小なりの「美」が散りばめられていることが印象的だ。これがザ・セルを下品で粗野なスプラッター映画から一段上の存在へと昇華させている。
意外なほどに流血シーンが少ないことも特筆される。象徴的な「馬の輪切り」シーンですら、うごめく臓器断面を見せても、ほとんど血液は見えない。

キャサリンが美の体現であることは周知だが、カールもまたある種の美を求めているように感じた。彼が泣きながら被害者女性を洗浄するワンシーンでは、おぞましさ以外の奇妙な感情を抱いた方も多いのではないだろうか。

筋骨のたくましいカールの親衛隊

肉体美、衣装美、表現美。
勢作のこだわりは数秒のカット割にすら込められている。

評価

優しく微笑むキャサリン

J.LOがとにかくセクシーかつ美しい。彼女に惹かれたら見るべきだ。

また暴力的表現や性的表現も含まれる当作品だが、視覚頼みでゴア表現を行うタイプの映画とは一味違い、耐性の少ない方でも見やすいような配慮は一応存在していると感じた。

2000年作品と古いが、現代でもまだまだ通用する一作であった。

★★★☆☆
三ツ星の良作。
Amazon.co.jp: ザ・セル (字幕版)を観る | Prime Video
若き心理学者キャサリンは、最先端の技術を使って研究患者の精神世界に入り込む治療を行っていた。ある時、逮捕された異常連続殺人犯カール・スターガーの脳に入り、彼が拉致した女性の監禁場所を探り出して欲しいとFBIからの依頼を受けることに。キャサリンは、危険人物の潜在意識に入る、そして前代未聞の危険な冒険に挑み始める。 Rat...




以下、考察及びネタバレ注意。






カールの過去

初めの被害者を記憶として振り返るカール

カールは先天性の精神病質者ではない。その過去の一端に触れたキャサリンは、彼の目を覆いたくなるような幼少期を知ることになる。

洗礼式

しばしば多くの作品で取り扱われる洗礼の儀。

カールは六歳の時に受けた儀礼によって溺れかけ、その時に周囲の大人や父親は、自分がどんなに苦しんでいても助けてはくれないことを悟った。
そこで彼は解離性同一性障害に頻繁に見られる、「自己を救う者を自己内へ作り出す」という解決法に至る。多くの場合それは暴力的な別人格だったりするのだが、彼の場合はそれが「神」だった。

この洗礼式の件によってカールの中には「水」へのトラウマと強い拘りが生まれた。

父親

カールが洗礼式に臨む前から、父による虐待は行われていた。洗礼の時を指して父は、「あの時溺れちまえばよかった」と罵る。
彼の母親は、夫である父とカールを捨てて出ていったとされる。これが虐待のきっかけであり、父親自身もまた、大きく心に傷を負っていたようではある。

父親の存在はカールにとって絶対であり、また憎悪の対象でもある。作中で言及は無いが、もしかすると彼は息子の手によって殺害されているのかもしれない。
その理由として精神世界のバスルームでキャサリンが父について触れた場面にある。

「あんな奴なんでもない あいつはクズだ」
大きく反応を示しながら叫ぶカール。既に乗り越えた試練であるかのように言ったその言葉に、父親が過去のものであるような含みが見られた。

人形趣味

カールは父親に隠れた趣味として、人形遊びがあった。これは現在でも続いており、FBIが捜索に入った部屋にも人形の飾られている場面が見られた。

父はこの趣味を女々しい女遊びと断している。これは彼が昔気質な「男」のイメージを強く要求するマスキュリズム思考を有していたことが窺える。どっしり大きく構えた者こそ、まさに男そのものであるというアイデンティティ。

精神世界では、被害女性はみな人形として自らの所有物となると考えていたような描写がある。
彼の施した異様な処理方法の理由はここにあった。

継母

カールの父の後妻はそこまで悪い人間ではなかったが、かといって彼の惨状を救うほどの素晴らしい人格者でもなかった。父はカールに、彼女に対して卑猥な行為をするよう要求した。

このことはカールが女性に対してトラウマと異常性癖を持つきっかけになる。父の行為の根底には、男らしくない息子に女性との対比を植え付けようという思惑があったように思う。
だが許されない言葉で罵られたカールには、それらは逆効果だった。

行為の意味

天井から鎖で自らをつり下げ、歪んだ欲望で恍惚を感じるカール

カールは水槽に閉じ込めた女性を水に浸けることで、自分が過去に受けた洗礼を他者にも強いている。
しかしそれだけでは足りない。彼女たちは死亡した後、塩素にて漂白される。
真っ白にwashedを経て彼女らはようやくカールの王国へ迎えられ、そこで自動人形として永遠のオブジェと化す。

最初の被害者を手にかけた際は、精神世界の描写が正しいのであればこの行為は見られなかった。無我夢中で殺害し、わけもわからず肉を削ぎ落とした。
その後徐々に内側に沸き上がる欲望を理解していき、今の形式を取るに至った。

これは彼の中で次第に「神」の影響が増していることを指し、いずれ自身がそれに飲み込まれることに対して危惧している節もある。これは薬を服用していたことからも明らかだ。

泉から生まれ出るカールの神

ラストシーンで「神」は、水の中から出でる。洗礼によって生まれた身が、幾年もの時を隔てて生まれようとする。

そして「神」が完全にカールの肉体と精神を奪い取った時、彼は完全に世界とのつながりを断ち切られた。
カールは最後に残った自我で、キャサリンに自分を殺すよう願う。
キャサリンは、本当の洗礼の儀をもってそれに応えた。

終わりに

日本人には馴染みのない洗礼式がテーマであり、なかなか理解が及びづらい部分もある。
カールを単なる異常者という枠から切り離して観ることで、より深くストーリーを呑み込むことが出来るだろう。

Amazon.co.jp: ザ・セル (字幕版)を観る | Prime Video
若き心理学者キャサリンは、最先端の技術を使って研究患者の精神世界に入り込む治療を行っていた。ある時、逮捕された異常連続殺人犯カール・スターガーの脳に入り、彼が拉致した女性の監禁場所を探り出して欲しいとFBIからの依頼を受けることに。キャサリンは、危険人物の潜在意識に入る、そして前代未聞の危険な冒険に挑み始める。 Rat...

コメント