怪しげなゲームを求められるスリラー映画、Cheap Thrillsをレビュー及び 評価、感想、解説。
あらすじ
クレイグは働いていた自動車店を、その日クビになった。
途方に暮れた彼は、バーに立ち寄った。そこで偶然にも、五年ぶりの再会を果たしたのはヴィンスだった。
懐かしい友人との会話に華が咲き、彼らは意気投合する。するとそこへ、一組の男女が話しかけてきた。
男はコリン、妻はバイオレットと名乗る。彼らは気前よく一番良いボトルのテキーラを奢ると言い、懐から金の匂いを漂わせる。
「先にイッキ飲みしたら50ドルやる」「あの女をキレさせて顔を叩かれたら200ドルやる」
クレイグもヴィンスも、決して裕福な生活を送っているわけではない。その魅力的な報酬につられゲームを受けていくと、次第にその内容と金額がエスカレートしていき……。
ネタバレ概略
- 1.家計自動車整備工のクレイグ。貧しい家計のために必死で働く彼だったが、その日クビを言い渡される。
- 2.酒場ヤケになったクレイグはバーにくり出す。妻には友人のエンリケと出かけるとウソをつき。
- 3.再会バーで偶然、昔の友人のヴィンスと出会う。彼は金貸しの仕事をしているらしく、仕事は順調だが、そこまで羽振りは良くないようだった。
- 4.夫妻彼らはそこで、ある夫妻と出会う。
コリンとバイオレット。男は豪勢に高い酒を振る舞うと、話し相手になってくれるよう頼んできた。 - 5.賭け「先に飲み干した方に50ドルやる」コリンは賭けが好きらしく、クレイグとヴィンスを競わせ始める。
懐の寂しいふたりにとっては、願ってもないゲームだった。 - 6.挑発「あの女をキレさせて、顔を叩かれろ」200ドルを賭けた闘いには、ヴィンスが勝利した。
- 7.移動盛り上がった一行はストリップクラブへと移動する。
帰りを待つ妻のために家路につこうとしたクレイグだったが、ヴィンスはそれを強引に引き留めた。 - 8.出禁退屈したコリンは、「あの女の尻を叩いてこい」200ドルをエサに言う。
ヴィンスはこれを実行し、一行は大笑いで店をあとにした。しかし追いかけて来たバウンサーに詰め寄られたクレイグは、「先に殴ったら500ドル」を受け、彼の顔を殴る。
反撃を受け、気を失うクレイグ。 - 9.豪邸目覚めたクレイグは、コリンの家に連れてこられたことを知る。
痛み止めを取って来ると言ったコリンとヴィンスは、別室で悪企みをしていた。 - 10.小便テラスで夜景を見る三人の男。コリンの話の途中、ヴィンスはこっそりとクレイグの靴に小便をかける。
怒るクレイグだったが、300ドルのためにやったことだった。 - 11.計画トイレに入ったクレイグを追いかけたヴィンスは、そこで金庫に入っていた大金のことを彼に告げる。
コカイン吸入をしているコリンが警察を呼べないのをいいことに、強盗を働こうと持ちかけたのだ。
金に困っていたクレイグはしぶしぶこれを了承。 - 12.強盗クレイグはナイフを取り出すと、コリンの首筋に当てる。ヴィンスは金を取りに行き、箱一杯の大金を持ち去ろうとした。
しかしコリンは武術の達人であり、隙を見せたヴィンスを一瞬で取り押さえた。 - 13.リセットコリンは強盗しようとしたふたりに、「何もなかったフリで忘れよう」と言う。
意味が分からない彼らだったが、今夜の全てはバイオレットのための誕生日ゲームなのだとコリンは言った。 - 14.25万ドル元々金庫の金はクレイグとヴィンスのために用意したもので、その他に25万ドルもの大金を用意しているという。
- 15.再開ゲームは再開される。”息止め500ドルゲーム”を行うヴィンス。
その時クレイグの携帯電話に、妻からのコールが入った。
エンリケと話したという彼女は、ウソをついた彼を少しも責めることなく、帰って来て欲しいと願う。
しかしクレイグは金のため、電話を切った。 - 16.妨害自分の記録を抜かれそうになったヴィンスは、クレイグを殴って妨害する。
反則を訴えるも、コリンは「そんなルールは決めていない」 - 17.犬のフン自宅の庭に習慣的にフンをする隣家の犬を疎ましく思っていたコリンは、復讐として隣家の屋内で排泄してくるゲームを提案。
1200ドルにつられたふたりの男は早速隣家に忍び込む。 - 18.お先手早く済ませたクレイグはわざと声をかけ、隣家の住人が起きるように仕向けた。
家人に気付かれたヴィンスは撤退を迫られ、代わりに「元を断つ」という名目で隣家の飼い犬をさらってきた。 - 19.険悪徐々にクレイグとヴィンスの関係は壊れ始める。互いに相手の妨害を試み、先んじて金を貰うことだけを考え出した。
- 20.男娼バイオレットはクレイグを誘うと、全員の目の前で性行為を彼に求める。コリンはそれに2000ドルを払うと言い、妻を抱くことを賭けにした。
クレイグはそれを受け入れると、コリンはその光景を見て自慰を始める。 - 21.逆競売コリンは次のゲームとして、2万5000ドルで小指を切るよう言った。
それを受けたヴィンスだったが、クレイグは2万3000ドルでやると言う。
互いにどんどん、自身の小指へ安値をつけていく。
最終的にクレイグは、1万5000ドルで小指を切ると言った。 - 22.断指落とした指をアイロンで焼き、止血を行う。
- 23.物音クレイグの成功を祝う一同だったが、そこで奇妙な物音に気付く。
部屋の隅をのたうつ音を辿ると、なんとさらってきた隣家の犬が死んでいたのだ。
犬は驚くことに、クレイグの小指を喉に詰まらせて窒息していた。 - 24.夜食コリンは夜食をこしらえ、男たちに食べるよう言った。皿の上に乗っていたのは、先ほどの犬だった。
「先に完食した方に、5万ドルやる」 - 25.同時食べ終わるのは同時だった。判定に困ったコリンは、決定戦としてこう提案する。
「先ほど落とした、クレイグの指を食べた者が勝ちだ」 - 26.嘔吐嘔吐して吐き出してしまったものの、クレイグが一度は自身の指を飲みこみ、バイオレットに勝利を認められた。
5万ドルを横取りしたクレイグを、ヴィンスは引き倒して殴りつける。 - 27.教唆最大の賞金総取りゲームとして、コリンはヴィンスと二人きりで相談を行う。
それは対戦相手のクレイグを殺害しろ、という内容だった。 - 28.獲物クレイグの背後にナイフを持って忍び寄るヴィンス。しかし彼は、友人を殺すことをやめたのだった。
そこで気付いたのは、スライドに映ったバイオレットの撮影写真。
そう初めから、この最終決戦をコリンとバイオレットは想定していたのだ。 - 29.勝者振り返ったクレイグはヴィンスを拳銃で撃つ。
コリンがヴィンスを唆したように、バイオレットも同じくクレイグに殺人ゲームを持ちかけていたのだ。
そしてクレイグは、それを了承した。 - 30.50ドル25万ドルを持って家に帰っていくクレイグ。
彼の姿を見ながら、コリンは妻に「やられたよ」と言い、50ドルを手渡した。
歯止めのないゲーム

コリンの提案するゲームは尽きることがない。
無尽蔵に次から次へ、賭け金の上昇と共に痛みを伴うような遊びをいくらでもふっかけてくる。
やる気満々といった風のヴィンスと対照的に、クレイグは初めの内にきな臭い空気を感じ取っていた。
しかし、なし崩しで結局は巻き込まれていく。
血を、肉を、自尊心を。
あらゆるものをコリンはベットさせ、それに対し報酬を支払う。
この狂った胴元が最終的に願うのは、いったいどのような形の未来なのだろうか。
内容は捻りのないスカスカゲーム
ジグソウの持ちかけるような一風変わったギミックなどはなく、ひたすら身の回りの物や行動を用いた、一種くだらないゲームが大半になる。
特に隣家で排泄してこい、なんてのは小学生レベルの馬鹿げた遊びに思えた。
かなり低俗でみみっちい内容が多く、それがラストまで変わらないのには若干の不満をおぼえるだろう。
少なくともクライマックスシーンでは、ステージやギミックにある程度のこだわりが欲しかった。
良かったゲームというと、”指切断”のひとつだけかもしれない。
こちらは逆オークションで自らの一部をどんどん安売りしていく狂気をうまく演出しており、また、いざ切断のおりには逡巡する様子などが非常にリアルで楽しめる。
飛んだ指をワンコが食べるのもグッド。
ゴア表現

コリン自身で言及しているが、彼にグロテスク趣味はない。
だが行為に対し付随する結果というものはいつでも存在を切り離せない。痛みを伴う挑戦であれば、なおのこと。
今作での臓器露出や激しい欠損表現は無い。グロ耐性の無い方でもギリギリ見ていられるレベルに抑えられている。
ただし間接表現はそこそこ多めなので、気分の悪い描写もいくらかはシーンとして存在する。
個人的にはコア層とそうでない者との間ぐらいの、ちょうどいいエグさだったように感じた。
ラストシーン

スリラー映画を見続けた者であればある程度予測の範疇かと思う。
互いの生命を賭けさせるという部分には、大した驚きも目新しさも見えない。
ただしこれは、演出で上手くやった感があった。
全く予測していない方向からのアプローチがバシッと決まった典型で、意識を手前にとどめてからの、奥で打つ、というテクが光った。
また同シーン、互いの表情が何とも言えない。
「まさか、嘘だろ」という面持ちのヴィンス。
「オカネ、ホシイ」と無機質な鉄面皮を見せるクレイグ。
この部分、静寂が最高にイイ。
下手にドラマティックさやスリリングを演出しない、無BGMが強マッチング。
“銃で撃つ”という映画ではたいして珍しくもないワンシーンだが、かなり印象的な一場面として心に残った。
評価
ダウナー系スリル映画。金の魔力に憑りつかれた亡者たちの行く末を見届けよう。
お茶の間でのご視聴には向かないが、充分に楽しめる一作である。

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