【映画】デッドマン・ダウン/全てを台無しにする兎の足【ネタバレ:レビュー】

アクション

一組の男女が画策する復讐を描くアクション映画、Dead Man Downをレビュー及び 評価、感想、解説。

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あらすじ

マフィアの幹部ヴィクター。彼はある日、向かいのマンションから殺人を目撃され、それをネタにゆすられることとなった。
条件:指定の男への復讐。
交通事故で顔に傷を負った女ベアトリス。彼女の自暴自棄な殺人計画に加担を余儀なくされたヴィクターだった。

だが一方で、彼自身の胸にも果たすべき復讐劇は秘めており……。

ネタバレ概略

ネタバレストーリー
  • 1.
    冷凍
    マフィアの邸宅に冷蔵庫が送りつけられる。中には配下のポールが、紙きれを握りながら氷漬けになっていた。
    怒りに震える一同は、三か月前に揉めたマフィアのハリー一家に押し込み、全員を射殺した。
  • 2.
    出会い
    マンションの向かいの部屋に住む女性=ベアトリスと知り合ったヴィクター。彼女をディナーに誘うことに。
    しかし互いの思惑は異なり、ヴィクターは自室の殺人現場を目撃された疑いを確かめるため、またベアトリスはそれをネタに彼に頼みごとをするつもりだった。
  • 3.
    依頼
    ベアトリスは追突事故で自分の顔に傷を負わせた犯人を、殺害して欲しいとヴィクターに頼んだ。曰く、「自分の人生を壊した」と。
  • 4.
    潜入
    ヴィクターは港でハンガリー人と密会する。彼は潜入が長引いていることと、なぜターゲットをすぐに殺さないのか問いただした。
    つまりヴィクターは純然たるマフィアではなく、何かの目的を持って懐に潜り込んだ男であることが判明した。
  • 5.
    捕虜
    ヴィクターは密かにうち捨てられた船に忍び込むと、船倉に捕らえた男に食事を与える。縛り付けられたアルバニア人は、兄がヴィクターを殺すと脅し続けた。
  • 6.
    狙撃
    アルフォンスがマフィアの上級幹部と面会する瞬間を狙い、ヴィクターは狙撃を開始する。狙いはアルフォンスでなく、彼の護衛に回った部下たちだった。
    一部正体を見られる場面もあったが、目撃したマフィアをヴィクターは全て殺害した。
    そこに偶然現れたベアトリスが、恋人のフリをして彼の窮地を救う。
  • 7.
    吐露
    家族をアルフォンス一家とアルバニア人ギャングたちに殺され、復讐のために潜入していることを明かすヴィクター。
  • 8.
    設置
    アルフォンス一家が溜まり場にしている倉庫に、大量のC4爆弾を仕掛けるヴィクター。しかるべき時に備えた用意である。
    が、電波の妨害が激しいため、起爆時はすぐそば、すなわち自身の命を引き換えにしなければならないことが判明した。
    だが彼は、その結末を受け入れることに。
  • 9.
    電話の盗聴を知ったアルフォンスは、未だ正体の見えない復讐人を暴き出すために偽の会合をセッティングする。
    ヴィクターはこれをまんまと盗聴していた。
  • 10.
    調査
    下っ端のダーシーはアルフォンスに手柄を見せるため、独自のルートで復讐人を調べ出すことに。目の前のヴィクターこそがその人物と知らない彼は、際どいところまで迫りつつあるも、それを全て本人に知られていることになる。
  • 11.
    疑心暗鬼
    アルフォンスからの呼び出しにより、会合の行われるビルに入ったヴィクター。正体が露見しているか否かの危険な状態だったが、ハリーの一件でアルフォンスを救ったことから疑いの目は逸れた。
  • 12.
    ビデオ撮影
    船倉のアルバニア人に今居る場所がアルフォンス所有の倉庫であると誤認させ、兄イリルへの助けを求めるビデオを撮影するヴィクター。
    これによりアルフォンス一家とアルバニア人を一堂に会させる作戦が発動した。
  • 13.
    委託
    ダーシーが新たな情報を掴む気配を察したヴィクターは、匿名メール便でビデオのSDカードを送る手筈をベアトリスに託した。
    自身は急ぎ、ダーシーの居る墓地へと向かう。
  • 14.
    反故
    死の前の一興と、ベアトリスとデートを約束したヴィクター。だがダーシーがアルフォンスへ墓石の名前を報告することを知った彼は、残された時間が少ないことを察する。
    デートは取りやめ、ベアトリスが復讐したい男の居るバーに向かう。
  • 15.
    銃撃
    既に復讐のことは忘れかけていたベアトリスをよそに、ヴィクターは対象の男を捕らえ、手早く銃撃した。
    血の付いたBMWのエンブレムを投げ渡すと、契約が完了した旨を伝える。
  • 16.
    すり替え
    全ての準備を終えたヴィクターは、倉庫にて全ての悪党たちが集うのを待つ。
    だが一向に現れない連中に奇妙なものを察した彼は、ベアトリスに預けたSDカードが正しく機能していないことに気付く。
    彼女は電話越しに、彼を死なせたくない一心でウサギの足とすり替えたことを告白する。
  • 17.
    露見
    ヴィクターが不在であることを不審に思ったダーシーは、彼の部屋へ押し込む。そこで自分たちを狙っていたのが彼だったことを悟るダーシー。
    またそこに運悪く、ベアトリスが訪ねてきたのだった。
  • 18.
    人質
    ダーシーにより裏切りを知ったアルフォンスは、ベアトリスを自分の邸宅に連れてこさせ、人質としてヴィクターを呼び寄せる。
    アルバニア人も集い、全ての役者が一堂に会することとなった。
  • 19.
    決着
    ヴィクターは武装すると、アルフォンス邸宅に単身突入。全ての悪人を撃ち殺すことに成功した。
    だがその中で、一連に関わっていない新入りのダーシーだけは見逃し、また彼もヴィクターを見逃した。
  • 20.
    終焉
    全ては終わり、ヴィクターとベアトリスは帰途の列車内で愛を誓い合った。

至高のバイオレンス感

冷凍庫を開けるマフィアたち

冒頭から飛ばし気味に暴力の匂いが充満する。この空気感は見事なもので、作品の色合いを即座に見せつけた。
復讐者の陰、カチコミ、銃撃戦。
10分間でスピーディーに行われるこれらによって、スクリーンに意識を釘付けにさせる。
凡庸で冗長な序盤を嫌った、素晴らしい滑り出しだった。


序盤の氷漬け以降も狙撃、首吊り、邸宅の乱戦と。
割り合いハードな手法で次々にマフィアの手下たちを葬るヴィクター。
土壇場で妙な良心が芽生える気持ちの悪い演出は用いられず、爽快感のある復讐パートが視聴できる。

船倉で捕虜に話すヴィクター

例外的に情けを見せたのは、船倉の虜囚をネズミに喰わせる場面だ。
この手の演出はゴアをウリにした映画で多く見られ、被害者は泣き叫びながら身体中を食い尽くされることになる。悪党に相応しい末路だ。


しかしヴィクターは当該場面において、彼に情けの銃弾を浴びせた。

激しいゴアを嫌ったというなら直写せずにヴィクターを立ち去らせるだけで良く、断末魔だけ流せば済む。
不愉快な場面ではあるものの、そう思うのならば最初からギミックとして搭載しなければいいだけの話だ。

思うにここで感じる違和感とは、

この段においても、未だヴィクターを美化しようという姿勢



これに尽きる。

彼は思うほど残酷な男ではない」という印象操作のためにネズミを配置した、という思惑が見えてしまっている。
だがこのチープなやり取りで失ったカタルシスや、立ち位置を単純な善悪構造に近付けた功罪は大きかった。

特にここでの、「用意したギミックを敢えて使わない」という姿勢は、作中最大の失敗点になった”ウサギの足”に繋がる。

ベアトリスの存在

煙草を吸うベアトリス

作品を単純な復讐劇にしてしまうと、既存で伝説と化してしまっているランボーやマッドマックスにはどうしても劣る。
よって大筋に絡めるサイドストーリーは必須であり、そこに人間関係や感情を交錯させればより深みを増すことが出来る。


よってベアトリスの存在は必須。彼女の狂気と自暴自棄は、冒頭で我々を驚かせた。
退屈で無意味な夕食シーンを見せられている苦痛からの、急転直下の脅迫動画。
かなり腹にズシンと来る、思わぬ方向からのリバーブローだ。

また彼女自身が復讐を望んでいる、という立ち位置により、自然にヴィクターとの対比として描けたことになる。
本筋と並行して走らせるには最高のスパイスだっただろう。

リベンジを忘れるな

登場直後こそ昏い情念を滾らせる姿が印象的だったものの、その後のベアトリスはパッとしない。

中盤では恋にうつつを抜かす有り様で、ヴィクターへ計画の進捗を訊ねることすら疎かになっているのだ。
やがて最後には憎いはずの相手が死んだと思い込んだことで、茫然自失と目も虚ろになった。


これこそユーザーの求めるコンテンツと、制作者の意図が乖離した瞬間だ。

我々は復讐劇を観たいのであって、心に傷を負った女の甘く切ないラブストーリーが観たいのではない。

よってベアトリスのやるべきことは、復讐の慚愧に悔恨の慟哭をすることでも、またヴィクターに人任せで殺人をさせることでもない。
ワーゲンで逆にBMWのカマを掘り、自らの手で自分の人生に決着をつけることだ。

ウサギの足?やめてくれよ

ウサギの足

SDカードの代わりに送ったウサギの足

  • ウサギの足(Rabbit foot)
多産で生命力の象徴であるウサギは、しばしば幸運のシンボルとされる。
また地下の巣穴で聖霊と交流を持つ一種の霊獣であるという見方もあるため、その一部である足には幸運の力が宿るともされる。

半世紀以上前に、アクセサリとして主にヒッピーやバイカーの文化で流行った。



この足によって周到なギミック、また前段で築いたサスペンスとしての空気感を全て放棄することとなった。
クライマックスシーンのアクション場面では、白けた半笑いで無双するヴィクターを眺めなければならない。
最高の主人公補正でもって全悪党を射殺した彼だったが、あの数をひとりでこなせるならば最初から倉庫の爆発物など不要だった。


これが両想いのハッピーエンドだったからいいものの、ベアトリスからの一方的な片思いであれば、ヴィクターにとっては青筋を通り越して蒼白になる心持ちだったろう。
普通なら発狂だ。家族のカタキよりもまず、最初にベアトリスを葬りたいと思うほどに。

Tips:自分がヴィクターの立場なら?

突然憎い仇敵に、人質を餌に屋敷へ呼び出されたらどう対処するか?



人間、用意が必要だ。急場で慌てないために、日頃から頭の中で訓練をしておこう。

  • 倉庫に仕掛けたアレを取り外す
プラスチック爆弾の製造工場

まずは倉庫に仕掛けたアレ・・を再利用するため、取り外そう。
ベアトリスの命は刻一刻と危機に瀕しているが、焦るのは良くない。
誤作動に気を付けながら、全ての設置物をクルマに積む。

  • クルマに設置
戦地でプラスチック爆弾を設置するアメリカ兵たち

敷地内に侵入したら、今度は先程の積み荷をクルマの内、外装部に設置しよう。
この時室内には釘やガラス、ネジに小石などを目いっぱい詰め込もう。何とは言わないが、効率アップだ!
あとはガスタンクのキャップを空けて、アクセルに大きめの石を置いたら準備完了。

アルフォンス邸目がけて発進!

  • スイッチオン
主観視点で爆発を見る

あとはリモコンのスイッチを押すだけ。
残骸からヨロヨロ這い出てくる残党をやっつけよう!

ベアトリス?ウサギの足が守ってくれるでしょ、たぶん。

評価

ベアトリスがウサギの足を持ち出す以前は面白く、その後は酷い。



前半のやり方を最後まで貫ければ最高の復讐映画だった。

★★★☆☆
三ツ星の良作。
デッドマン・ダウン(字幕版)
デッドマン・ダウン(字幕版)

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