【映画】ハザード・オブ Z/無双しないPOVゾンビ映画【ネタバレ:レビュー】

ホラー

全編POV(主観視点)で描かれるパニックホラー映画、Dead Rushをレビュー及び評価、感想、解説。

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あらすじ

妻と平穏に暮らしていたデビッド。
ある夜、バーで酒盛りをしていた彼に妻からSOSの電話が。
慌て自宅へ向かうと、妻は目の前で警察官に射殺されたのだった。

ウィルス感染。
死人を蘇らせる細菌が、既に妻を侵食していた。
そしてその猛威は既に、世界中を包み込むほどに勢いを増し続けている。

哀しみもそこそこに、デビッドは友人とフィットネスクラブへ立て籠もる。
果たして彼は無事に週末の世界を生き延びることが出来るのだろうか。

ネタバレ概略

ネタバレストーリー
  • 1.
    世界中で謎のウィルス汚染の噂が流れている。父はしきりにそれを心配して連絡を入れてくるも、デビッドにはどこか現実感の無い話だった。
  • 2.
    パニック
    ある夜、友人とバーにくり出したデビッド。そこで妻から助けを求める電話を受け取る。
    急ぎ家路を急ごうとする彼だったが、通りには人が人を喰う地獄が顕現していた。
  • 3.
    死別
    友人のウェインと共に自宅へ戻ったデビッドだったが、目の前で妻が警官に射殺される。
    絶望に打ちひしがれる彼を、ウェインは安全そうなフィットネスクラブへ連れて行き、そこで籠城を始める。
  • 4.
    物資
    プロテインなどを食料に閉じこもった彼らだったが、いずれ糧も尽きる。
    9日間耐えたところで最後の食料が無くなった。
  • 5.
    感染
    籠城前にウェインが感染していたことが発覚。彼は潜伏期間を経て発症し、ゾンビとなる。
  • 6.
    突破
    フィットネスクラブで見つけた銃でデビッドは友の苦しみを断つ。
    しかし溢れだしたゾンビはとうとう防壁を破り、内部へとなだれ込んで来た。
  • 7.
    昏倒
    辛くも逃れたデビッドは車で逃げ出すが、操作を誤って事故を起こし、昏倒してしまう。
  • 8.
    救助
    目覚めたデビッドは、安全なセーフハウスへ連れ込まれていた。
    彼を助けたカーリーという女性と、リーダーで神父のパトリック。
  • 9.
    探索
    セーフハウス存続のため、食料探索に駆り出されるデビッド。
    しかし彼の身体にも、ウェインと同じ感染の兆候が出始めていた。
  • 10.
    失敗
    探索中に大量のゾンビと出くわした一同。
    犠牲を出しながらも基地へ帰還することになったが、まずいことにゾンビの大群にあとを尾けられることになった。
  • 11.
    自害
    全てに絶望したパトリックは、自分を慕う信者たちに服毒自殺をさせた。
    生き残ったカーリーを、ゾンビ化しながらも逃そうと必死に抗うデビッド。
  • 12.
    最期
    ゾンビと化したデビッドが、ある母娘を襲う。
    彼は母親に殴られ、最期の時を迎えた。

ファースト・パーソン

車で逃げ出すデビッド

主観視点(POV/First-Person)を使用したホラー映画は増えた。多くはその没入感や、半強制的な共感によって実際以上の恐怖感を得られる。

これが最も古く、効果的に働いたのはブレア・ウィッチ・プロジェクトだろう。
当時あの映画は、「ガチなんじゃないか?」「実話らしい」と噂された。懐かしい話だ。

というのも、全編がハンディカム映像である作品などそうそう見たことのなかった我々にとって、あの仕様は衝撃だった。
バッドエンドと、残されるテープ。ホラーにとって最高に親和性の高い手法が掘り出された瞬間でもあった。


さて本作だが、撮影タイプの主観でなく、主人公視野タイプになる。
似たタイプの映画だと、ハードコアだろう。こちらはアクション映画だが、同じように視野がそのまま視点になる。

こちらの純然たる主観タイプだと、メリットとしては手ぶれ防止が挙がる。
往々にしてPOV慣れしていない視聴者にとって、最大の敵は”酔い”になる。
画面が振り回され、尚且つ補完の切られているステディカメラではこの弊害が起きやすい。
そこで言えば、この映画は細心の注意で”酔わない視点”に傾注していると呼べるだろう。


一方のデメリットだが、ひとつは「臨時三人称が使えない」というものがあるだろう。
ハンディカムは撮影者の転倒を機に、一時的な三人称視点を得ることが出来る。
これにより、撮影者自身の死亡や交代というリフレッシュを図ることも可能になる。

またカメラタイプのメリットとして、「撮影自体がひとつの行動」として描けることだ。
単純な画面描写や被写体の切り替えにすら、撮影者の意図が反映される。

これにより撮影者は言葉や表情を使わずとも、色とりどりの感情を吐露することが許されるのだ。
反して視野=視点タイプだと、単に主観の人物が見えている視界を我々がジャックしているだけ、という事実は変わりない。


僅かな違いかもしれないが、同じ主観視点でもカメラ有りと無しでは与えられる印象が異なる。

誇示気味?

一部気になるのが、鏡越しにデビッドを映す場面が多いこと。
当然ながら、彼の周囲にカメラは存在しないように見える。


だがこれらは技術的には精度の高さを窺わせるものの、演出として意味のあるものは皆無だ。
使用頻度や目立たせ方からして、どうも技術水準の誇示に見えて仕方ない。
あくまで手段である描写を、目的に挿げ替えているのだ。

せめてそれらが作中ギミックとして一度でも作用するならいいものの、今の状態では見栄っ張りなしたり顔しか浮かばない。

やや冗長

箱を開けるデビッド

冒頭、少女視点からしばらく事件は無い。

むろんインフェクションパニックらしく、ささめくような不穏を徐々に立ち上がらせる手法になる。
よって必要な前置きといえばそうだが、フィーチャーされる大部分が妻との愛になるのがややくどい。
その後の悲劇を際立たせるためとは分かっているが、かと言って妻の死はその後のシナリオにほぼ関与しないのだ。
一時的にイージーなエモーションを獲得するためだけに冒頭のダラダラを見せられたのかと思うと、残念な気持ちになってしまうだろう。


中盤以降もストーリーは加速しない。
割とゆったりした緊迫感の薄い場面が続き、このあたりで不安が鎌首をもたげ出す。
部分部分でラッシュ的なものは起こるが、そこでも大きな満足感が得られない。


幾たびかのゾンビ戦を経て、ようやく根本的な弱点を悟る。
この脚本、POVに全く合っていない。


POVに求められるのは絶え間なく訪れる危機であり、せわしなさこそがエッセンスとも言える。
のろのろとした展開は全く合わないのである。


作中では数日~数週間のような長いスパンが用意されており、その面が致命的にPOVと融合しない。
求められるのは数時間ノンストップのような短期決戦であり、チンタラ寝食を描かれても少しも面白くならない。


もっと素早さを。
走るゾンビ対して、人間側がいつまでもスローライフでは立ち向かいようがない。

ラストシーンはよく出来た感

倒れた少女と目が合うデビッドのゾンビ

冒頭の視点だった少女と、その横で息絶えるデビッド。
明示されないが、状況的にこの娘が「天使」と呼ばれた免疫持ちなのではないだろうか。

本作がPOVであった理由の大半が、最終的にゾンビ化するデビッドのためだろう。
ゾンビ側の視点を描いた作品はそこそこあるので、目新しさという面ではそこまででもない。

が、想像を大きく裏切るラストでないにしろ、ゾンビ化の過程や死に際に浮かぶ走馬燈など、一連に関して感慨深いものを感じることも確か。
冒頭で張った小さな伏線も相まって、綺麗な落としどころを生み出したと言えるだろう。


往々にぐだぐだになりがちなゾンビ映画において、ラストがさっぱりしているのは好印象だ。
主観視点の死亡というバッドエンドではあるが、後味の悪さは微塵も感じない。

評価

マジメ系ゾンビ映画をPOVで撮った、という感触



有象無象よりは抜けているものの、一級作品とまではいかない感もある。

★★★☆☆
三ツ星の良作。
ハザード・オブZ(字幕版)
ハザード・オブZ(字幕版)

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