【映画】デトロイト/実際に起きた警察の処刑行為の真相とは【ネタバレ:レビュー】

ヒューマン

実際に起きた事件であるデトロイト暴動を映像化したドキュメント映画、DETROITをレビュー及び 評価、感想、解説。

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あらすじ

1967年7月、無許可の違法酒場エコノミー・ブリンティングが全ての発端になる。

デトロイト市警による当該酒場の摘発を不服とした黒人住民らにより、小さな小競り合いは次第に大きなムーブメントとして市全域に伝播する。

通りでは盗みが横行し、人種間の争いは激化。毎夜怪我人の数は膨れ上がり、比例するように逮捕者の数も甚大なものへとのぼっていく。


当時形式的に黒人の人権を擁護する法律は出来上がってはいたものの、まだまだ多くの白人には上位種であるという驕りが残っていた。
反発する黒人住民と、それを不当に取り締まる白人警官。

戒厳令まではいかぬものの、緊急事態宣言が発令。通りには州兵、ミシガン州警察、デトロイト市警の三機関が常時配備される。
夜間は外出禁止となり、ものものしい雰囲気が街中を支配した。

ショーウィンドゥを叩き割る暴徒ら



ある日町のモーテルに、バンド:ザ・ドラマティックスのボーカルであるラリーと、その友人フレッドが訪れていた。
彼らはひと夜を過ごして発つ予定であったが、夜間に建物付近で警察隊らの大きな動きを感知。奇妙な緊張感が通りに流れた。


そこで日頃の反発心を爆発させた宿泊客カールが、競技用の空砲入りピストルを数発発射。彼には害意よりかは、驚かせてやろうという悪戯心の方が大きかった。

だが市警らは、これをモーテルからの狙撃行動と判断。
直ちに屋内へ踏み込むと、銃と主謀犯の割り出しに取りかかる。


そして地獄の夜の幕が開いた。

実話

デトロイトを巡回する戦車と随伴歩兵

50年前のアメリカ本土で、このような戦時下にも似た出来事が起きていたことに驚きを隠せないだろう。
街中を銃火器で武装した歩兵が哨戒し、通りを戦車が横行する。まるで対テロ同然の対応だ。

現実では把握されているだけで43人が死亡し、およそ1189人が負傷したとされている。この未曽有の大事件の背後を描くのが本作のテーマであり、その痛ましさに胸が痛むことだろう。


またあくまで実際の事件に忠実である一面を持つため、エンターテイメント性は限りなく低い。結末に関してもかなり胸糞の悪いエンディングを迎えることになるので、憤りは避けられないと思われる。

爽快感やストレス発散を目的に観る作品ではなく、歴史の教科書としての意味合いが強い。
悲惨な過去と人種差別という悪しき慣習を反面教師に、現実へと活かす教材としては素晴らしい作品だった。

歌唱力

歌うアルジー・スミス

作中でラリーを演じたアルジー・スミスの歌唱力には度肝を抜かれた。彼の透き通った高音は、アカペラの中でも素晴らしいメロディーラインを描く。
その凄まじさは、鼻歌ですらも聞く者を魅了する技術力を有している。


現実でのラリーとアルジーが本作のために競演した書き下ろし作「Grow」をYouTubeで視聴可能だ。彼らのタッグが実現したことは喜ばしい。



日本語歌詞もしたためられているので、作品と照らし合わせるとより強く楽曲を感じ取ることが出来るだろう。

越権

引き上げるミシガン州警察

容疑者確保の権限を最も強く持つのがデトロイト市警であり、これによって今回の事件が悲惨なものになったと考えられる。

州兵やミシガン州警察はデトロイト市警の傍若無人なやり口を見ても、これを止めることはせずに黙認した。関わることで人権問題や、或いは殺人の責を問われることを恐れたのだ。

仮に市警に対して命令権執行や、道義的責任を強く問える人物が同行していればこのような悲劇は起きなかったかもしれない。


こうした機関間連携について大きな革新を余儀なくされたのは数十年後、最大の悲劇である9.11まで経ってからだった。

当該事件ではCIA-FBI-NSAの連携不足がのちに非難されることになる。

裁判

判決を受けるデトロイト市警の三名

警察官、とりわけ白人警官はしばしば裁判において有利な評決を受けやすい。

これは採決によっては、現職の警察官が危険に立ち向かうことに否定的な意向を見せることになるためだ。
そのため実際に起きた事件のみへのフォーカスだけでなく、それが世論に与えるインパクトも加味する必要がある。

一見して不公平にも思われるこのからくりだが、現実では政治の絡まない判決など殆ど無いのが実情だ。
このような裁判の事例は昨今でも多く見られ、事実関係だけを見れば汚職警官と思われるような人物が、あっけなく無罪を勝ち取る判例も少なくない。


作中で驚かせられるのは、仲裁のために現場で活躍したディスミュークスへの容疑だろう。彼自身、まさか自分が暴行や殺人に関与していると指摘されることになるとは、夢にも思わなかったろう。

レイシズムの末路

逃げる黒人をショットガンで撃つ白人

2019年現在、世界的に歪んだナショナリズムを錦の御旗に、自称愛国者らの支持を集める政治家は増えてきている。
ここで言う”歪んだナショナリズム”とは、異民族の排斥や、自民族の崇高さを声高に叫ぶ者である。


こうした動きは日本国内でも高まりつつあり、一見して粗野で歪曲した政治観であろうと、その過激さを好まれることも少なくない。
自他ともに認めるレイシストが、大きな発言権を持っているこの恐怖。


世界は差別撤廃に運動を起こした数十年前に、逆行しつつある。
時代の波はファッションのように繰り返すとは言われてはいるが、差別観までもが揺り戻すことは誰も想定していなかっただろう。


本作の顛末は一種のレイシズムの末路でもある。互いを責めあう者たちは、いずれぶつかりあって屍を築く。
第二のデトロイト暴動は、案外すぐそばまで迫っているのかもしれない。

評価

過去の踏襲、未来への教訓



痛ましい事件を風化させない試みに、強い警鐘を感じた。
多くの方に見て欲しい作品だった。

★★★★☆
四つ星の優良作。
デトロイト(字幕版)
デトロイト(字幕版)



また、この事件ののちに日本車ブームで白人人口の激減したデトロイトを描いた作品が、「グラン・トリノ」になる。
こちらも人種間を描いた優良作品なので、未見の方にはオススメである。

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