Apple TV+より配信中のドラマ、For All Mankindシーズン1エピソード4をレビュー及び 評価、感想、解説。
あらすじ
ベッドフレームの訓練中に事故死したパティ。
計画の続行が危ぶまれる中、果たして候補生らの運命はいかなるものになるのか。
ネタバレ概略
- 1.殉職ベッドフレームの事故により、訓練生のパティは亡くなる。国民は総出で哀悼を示した。
- 2.自責エドは教官として彼女を導く立場だったため、その死に自責を感じることに。
- 3.警句元宇宙飛行士のジョン・グレンがディークを訪ねる。彼はパティの死を期に、女性宇宙飛行士の採用を見送るべきだと進言を贈った。
- 4.隠蔽ソ連の宇宙飛行士のひとりが、月面上で死亡していたことが発覚する。
米国と違い、情報が公になり辛いソ連の月面計画がどこまで進行しているかは定かでないものの、少なくとも彼らが氷のあると思しき周辺で基地と居住区を展開していることは確かだった。 - 5.中止ニクソンからの言づてで、ディークは月の乙女計画を中止するように迫られる。
だが見事に厳しい試練を乗り越えた彼女らを、今さら投げ出すことは出来ないと憤った。 - 6.報道発表ディークは先手として、記者を集めて候補生らの正式な繰り上げを発表してしまう。
これによりトレイシー、モリー、エレン、ダニーは、女性初の宇宙飛行士として正式に採用された。
しかし独断の決定により、明確にディークはニクソンに刃向かうことになる。 - 7.変更ディークはエド家を訪ねる。そこで彼は、15号からゴードーを外すことを告げた。
そして代わりのクルーとして、女性宇宙飛行士を入れる、と。 - 8.逆効果エド、セッジ、モリーはアウトポストで親睦を深めるために食事会を開く。
しかし見下した態度を見せるエドとセッジに、彼女は大きな反発心を抱いた。 - 9.立場15号から外されたことに落胆するゴードー。
妻のトレイシーはそれに同情したが、今や同じ宇宙飛行士である彼らの立場は、以前とは真逆になりつつあった。 - 10.同性愛者管制官のラリーは、エレンがアウトポストのバーテンダー、パムと恋人同士であることに勘付いていた。
世間に知れると大きなダメージになりかねない同性愛という事実を、彼は自身が偽装の恋人と成り変わって隠すことを提案した。 - 11.趣味息抜きにジャズクラブでピアノ演奏しているところを、モリーとその夫のウェインに見られてしまうマーゴ。
彼女は絶対に周囲に言いふらさないよう、言い含めた。 - 12.力不足エドとモリーの合同訓練が行われる。だが訓練生の中では段違いに優秀だった彼女も、手順違いやミスが目立ち始めてしまう。
マーゴは彼女に、「女性初の宇宙飛行士としての自覚を持て」と諭した。 - 13.ケープ・ケネディアレイダは父が買ってくれたなけなしのバスチケットを握りしめ、アポロ15号の発射を見学に行くことになった。
- 14.当日アポロ15号打ち上げ当日。ゴードーはフロリダへ出張した妻に電話をかけると、そこでバスルームから何者かの気配を感じた。
実際にはトレイシーは不義など果たしていなかったものの、以前に夫にされたことの意趣返しをしてみせたのだ。 - 15.見送り大勢に見送られるエド、モリー、セッジ。多くの女性がモリーを讃えていた。
- 16.15号発射期待を背負いながら、アポロ15号が遂に月面へ向けて発射される。
- 17.直電ニクソンからディークへ電話が入る。
彼は、「モリーがしくじった時の全責任は、君にある」とだけ言った。
ディークの造反

パティの死を受け、月の乙女計画を中断するよう求めたニクソン。
ここまでは想定通りだ。
国民感情を推し量り、悲しいニュースに尾ひれを付けさせない。
そもそもニクソンの目的は次期大統領選挙でいかに票を得るかにのみ腐心しており、NASAの都合など全く考慮にない。
徹底的なポピュリズムが垣間見える中、この判断は容易に読めた。
ところが指揮官ディーク、これを振り切って独断の報道発表へ走る。
確かに厳しい試練を受け切った彼女らの心情や、これまで費やしたコストを考えれば容易に中止したくないのも人情だ。
だがNASAにはすでに、フォン・ブラウンという前例がある。
彼ほどの人気者ですら一瞬で貶められるさまを、ディークは最も間近で見ていたはずだ。
つまりニクソンに刃向かうことは、自ら死刑台に踏み出るようなものである。
なぜゴードーを外し、モリーを採用したのか?
かなり意図の不明なディークの行動として、モリーの15号クルー入りが挙がる。
能力値や実績、信頼関係などでゴードーにモリーが勝るはずもない。
特に相棒のエドからの反発は大いに予想され、任務に支障を来たすことすら考え得る。
実際にそれらは訓練課程で示されている。モリーは抜群の能力を見せつけることはなく、不和とミスを露呈することになった。
彼女は性別を理由に見下されていると感じていたが、それは実際には逆だ。
エドには性別などにこだわらない信念がある。
男女間のコンプレックスに惑わされるあまり、モリーは自身の技能を過大評価している節が見えていた。
また既に女性宇宙飛行士は政府からも望まれていないため、今回の人事は完全にディークの思惑内での出来事になる。
ではなぜモリーを起用したのか?
ジェンダーへの取り組みとして、ディークが世間へPRとしてモリーを起用したのだろうか。
しかし1-3で明らかに彼はそういう立場を取らないことが明示されており、純粋な飛行士の能力値を最優先する節が見えた。
よって体面的なお飾りとしてモリーを月面に立たせようと考えているとは思い辛い。
現段階では、”大衆に迎合しコロコロと意見を左右させる、愚鈍な大統領への当てつけ“というのが強そうになる。
このあたりはラストシーンでも対立構造が表されており、次回の1-5でトラブルの予感をはらませる。
しかしこの説にしても、やはりディークが理性的な判断を示したとは思い難い。
なんにせよ彼が、政治と月面着陸を切り離して考えることが出来なくなってしまったのは間違いないだろう。
LGBTへの言及

トランスジェンダーにも言及した今エピソード。
この当時、同性愛は未だ禁忌とされていた。
エレンはアウトポストのバーテンダー、パムと恋人関係にある。
この事実が露見することはNASAにとっては痛手で、事実関係を正しく報告しようがしまいが、エレンが正式な宇宙飛行士として登用される未来に大きく響くことになるだろう。
ラリーだけはこの事実に辿り着いていた。
しかし彼はこれを公言などせず、オブラートに包んだ遠まわしでエレンに警句だけを送り続けていた。
彼は恋人のフリで皆の目を誤魔化すことを提案し、エレンはそれを受け入れる。
彼にとっては何の利も無い演技。恐らく純粋に、友人として彼女の未来を応援したい、という気持ちの元だろうか。
実に理解ある、ナイスガイである。
印象的なのは、エレンの涙。
色々な意味が含まれたワンカットになる。
- ラリーの優しさ
- 世間から容認されない同性愛への悲哀
- 宇宙飛行士という重責への戒め
不思議なもので、一粒の涙というのは時に、雄弁な舌よりも多くを語っている。
総評
一筋縄ではいかないのが宇宙飛行。
次回起こるであろうトラブルが気になって仕方ない。

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