【映画】フラグメント 偽りと真実の狭間/あとワンパンあれば…【ネタバレ:レビュー】

サスペンス

メキシコを舞台に25万ドルと麻薬を巡る争いを描くクライムサスペンス映画、FRAGMENTEDをレビュー及び評価、感想、解説。

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あらすじ

何かから逃亡する夫妻、ナタリーとカーステン。
安ホテルで一晩を過ごす彼らだが、翌日ナタリーが目を醒ますとカーステンの姿が無い。

慌て街中を捜索する彼女は、立ち寄った警察署で衝撃の事実を知る。
なんと夫は、麻薬カルテルの運び屋だというのだ。

カルテルの資金洗浄を請け負っていたセバスチャン。
カルテル非道の親玉ミゲル。
そして25万ドルをどこかに隠した夫、カーステン。

複雑な人間関係が絡み合った時、事件は大きく動き出す。

サスペンスの基本はクリア

洗面台で髪を切るナタリー

米などのメジャー国産でない映画を観る際、まず不安に思うのが、”映画としての体を成しているか”であろう。
中にはそういった不安を的中させる作品があり、時間を無為にしたことを激しく後悔させられる(邦画も含むが)


が、本作でそのような不安は杞憂。
サスペンスとしてのイロハを勝手知ったる、きちんとした脚本家によって構成されているのだ。

  • 時系列ミスリード
  • 交錯する人間関係
  • 二転三転する立ち位置



ちゃんとしている。

シーンチェンジで視点が行方不明になることもなく、登場人物も多過ぎず少な過ぎず。
謎解きやミステリー好きに、しっかり刺さろうという情熱を感じるだろう。

我々の知るメキシカン映画とはやや遠し

市街地に現れた警官

メキシコの麻薬カルテル事情などは頻繁にニュースになる。
映画化されたものも多く、時勢や海外事情に疎い層でもどのような治安情勢かを割と知られていると言っていいだろう。

特に前任のペニャニエト大統領の頃は、強硬路線まっしぐら。導入された軍と既存カルテルの、血で血を洗う争いで通りは戦場と化していたという。


本作はこうした麻薬戦争を描く題材ではない。比較的穏やかな街の中で、ひっそりとドラッグマネーが動いているような描写だ。
ド派手な銃撃戦も無ければ、無残な処刑シーンも無い。

こうしたややもすると、”メキシコらしくない”映画に不満や戸惑いを感じるかもしれない。
しかしこれらは、現在の時勢を的確に表したとも取れる。


と言うのも、現大統領のロペスオブラドールは、前任の強硬姿勢と真逆のタイプ。
麻薬王は、逮捕しない」とまで公言しているのだ。

しかしこれは彼が日和見主義ということではない。
暴力に暴力で相対すれば、更に大きな悲劇を生むことを前政権時に学んだのだ。

どれだけディーラーやプッシャーを射殺しても、結局犯罪率は低下しなかった。
それどころか空座となったカルテルの立ち位置にあやかろうと、新たに台頭する犯罪者たちで更なる悲劇を誘発したらしい。

ロペスオブラドール大統領は相手に平和を与えることで、相手からも平和を引き出そうという策に出た。これが的確な戦略かどうかは未だ未知数だが、本作がこのような背景に大きく感化されていると考えるのは自然なことだ。

ミゲルは小物

裏切りを問い詰めるミゲル

カーステンは、

もう麻薬王のフリはやめろ



こうミゲルに言った。

ミゲルの戦略とも呼べない戦略は、単なる強盗に過ぎない。
麻薬を売るフリをして、大金を持った相手を暴力で制圧するのみ。

いずれこうした商売の仕方は業界内で噂になり、やがて彼と取引をする者は居なくなるか、或いは逆襲にあってのたれ死ぬのみだ。

作中でカーステンは賢い男として描かれる。彼にはこうした未来がある程度読めていたのだろう。


麻薬王のフリはやめろ。

どこか空しさすら感じる、辛辣なワードだ。

あと一息のラストシーン

カバンいっぱいの札束
もうせめてあと二転、或いは一転でもどんでん返しがあれば……



かなり終盤まで疾走感をキープしたシナリオだったが、まこと惜しい。
もうひと捻りあれば、間違いなく優良作の太鼓判を捺されただろう。

ナタリーの妄想癖が単一でしか機能しなかったのが痛い。
ここをセバスチャンや25万ドルあたりに引っ掛けて、もうちょっとだけこねくり回して欲しかったのが本音。

ラストがハッピーとかバッドとか、そんな細かいことは要らない。
あの場面でどれだけ視聴者の意識をぶん回せるかで、クライマックスシーンに対する評価は大きく変わっただろうに。

思いがけず淡々と一方通行な終わり方をするので、どうにも肩透かし感を最後に残してしまったことになる。
まこと惜しい。

伏線のパンチが弱い

ホテルを訪れたナタリーと幻覚

思うに最大の盛り上がりとなる部分が、カーステンに対する誤解の部分だろう。

しかし彼をナタリーと同行させる期間が短すぎた。もっと長々引っ張ってなんとなく違和感を残さねば、相対的に後の衝撃と爽快感は減少する。
この部分も惜しかった箇所だ。

トリック的にはありがちであるものの、やはりこの手のネタは謎解きファンには好まれる傾向がある。選択肢的には過ちでなかったと言えるだろう。


また、この他の部分で構築された伏線がゼロなのも残念だ。

せっかくナタリーの足跡を追ってくれるアロンゾというオイシイ要素があるのだから、セシリアの件も単なる事件でなく、更なる妄想を絡めたカオスムービーに寄せても良かったとは思う。

とにかく惜しい、あと一歩。

評価

あとワンパン入れば、優良作品の称号を得たと思われる



メチャクチャ面白いワケではないのに、可能性を考えると無下に出来ない不思議な魅力がある。

★★★☆☆
三ツ星の良作。
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行方不明の夫は、麻薬組織の一味で大金を持ち逃げし、愛人もいた。警察と麻薬組織は妻が金の行方を知っているのではと疑うも、妻の証言は事実と違うことが判明して...。嘘をついているのは警察か、組織か、愛人か、はたまた妻自身!?衝撃の真実が明かされるサスペンス・ミステリー!

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