ダイヤ強盗を襲う恐怖を描くホラー映画、FROM A HOUSE ON WILLOW STREETをレビュー及び評価、感想、解説。
あらすじ
ダイヤモンド卸商を狙った犯行を練る4人組。
作戦は一家の一人娘を誘拐し、引き換えに300カラットの宝石を要求するという、至ってシンプルなものだった。
夜半に強盗団は忍び込むと、易々とその娘=キャサリンを拉致、監禁。
残りはダイヤをせしめるだけ、という段までこぎつけた。
しかし計画と裏腹に、一家への呼び出し電話はいつまでも応答しない。
不穏な気配を感じたエイドらは、卸商の家を探索することに。
そこで一家の死体を発見したことで、彼らの運命は狂い出した。
ネタバレ概略
- 1.強盗計画ヘーゼルは三人の仲間と共にダイヤモンドの強盗計画を練る。
- 2.誘拐一同はダイヤモンド卸商の家に夜間押し込むと、手早くその家の娘を誘拐した。
しかしその娘=キャサリンはなぜか身体中に傷を負っている。妙に思った一行だが、ひとまず彼女を隠れ家の倉庫に連行することに。 - 3.要求ダイヤを渡すよう、人質の姿をビデオに撮影するヘーゼル。
だが卸商の家に連絡を入れようとしたが、一向に通話口に誰も出ない。 - 4.再訪計画と異なる展開に戸惑う一同。そこで再び卸商の家に向かい様子を見てこよう、となった。
エイドとジェームズが偵察、ヘーゼルとマークが見張りをすることに。 - 5.死体銃を手に偵察を行うふたり。そこで見たものは、神父ふたりと卸商夫妻の死体だった。
- 6.脱出異常事態を察したふたりは家を脱出するが、エイドは友人のジョージーを目撃する。
既に故人である彼の登場に、半ばパニックを誘発するエイドたち。 - 7.横転再び現れたジョージーに驚いたエイドは、運転していたバンを横転させる。
ふたりはそこで意識を失った。 - 8.停電一方の倉庫でも、異常な現象が起きていた。
停電した倉庫内を歩き回るマークは、そこで亡き娘の後ろ姿を見る。だが振り返った彼女は、化け物のような顔をしていた。
驚いて発砲したマークだが、そこにはもう何も居なかった。 - 9.母親目を醒ましたジェームズはバンから抜け出し、助けを呼ぶために夜の森を彷徨う。
そこで彼は死んだはずの母の姿をした化け物と出会い、口内に触手を飲みこませられた。 - 10.発狂目覚めたエイドはジェームズを連れて倉庫へ戻るも、触手を飲んだ彼は明らかにおかしくなっている。
作戦を諦め切れないヘーゼルだったが、エイドとマークはダイヤよりも生死の方が重要だと諭した。 - 11.悪魔卸商の家の地下で撮影されたビデオテープを再生する一同。
そこではキャサリンが、歴代の自宅の所有者がことごとく不審死を遂げている事実を突き止めていた。
またその中には、火事で死んだヘーゼルの両親も含まれていた。彼女は以前、あの家に住んでいたのだ。 - 12.過去ヘーゼルの両親の死後、キャサリンの両親が事業を乗っ取ったことが明かされる。
ヘーゼルが容易に計画を練れたのはこのためだった。 - 13.憑依ビデオの中のキャサリンは徐々に悪魔に憑依されていく。
やがて彼女は、地下で死んでいた神父らによって除霊を施されることに。 - 14.殺害地下での除霊中、キャサリンは恐るべき力によって神父と両親の四人を殺害する。
テープはそこで途切れていた。 - 15.支配下様子のおかしかったジェームズは暴走し、宙に浮きながら大量の血を吐く。既に彼は、キャサリンの支配下にあった。
- 16.裏切り「娘にもう一度会いたいか」マークは悪魔と取引を促され、これに乗ってしまう。
彼はエイドとヘーゼルを捕まえると、キャサリンの前に突き出した。 - 17.供物ふたりの魂を喰らおうとするキャサリン。しかし寸前で理性を取り戻したマークは、キャサリンを羽交い絞めにして彼らを逃がす。
- 18.犠牲通風孔からヘーゼルを逃がしたエイドは、その場に残って犠牲を払った。
キャサリン、マーク、ジェームズは彼を取り囲み、その魂を喰らう。 - 19.決着横転したバンに逃げ込むヘーゼル。もはやこれまでかと思ったその時、焼死した母の霊が現れ、彼女を救う。
ヘーゼルはキャサリンに火を放つと、バンごと彼女を焼き払った。
グロ感良好

良い面から紹介すると、主に死体や悪霊たちのビジュアルが映えているところだ。
- 焼死体のエグみ
- サラ(子供)のおっかない顔
- なぜか裸のジョージー
割と高水準で描かれるこれらの霊たちは、そこそこのインパクトと恐怖感を演出している。
特に頻繁に現れることとなるジョージーに関しては、でっぷりとした体躯に素っ裸の特徴も相まって、かなり忘れ難いようなキャラクター性を獲得している。
彼がメインでも問題無いほどだ。
一方でメイン敵役となるキャサリンであるが、こちらには不満がある。
とりたてて特徴と言える特徴もなく、パーカーのフードを被る姿が逆に印象をぼかしている。
彼女が最大にして最後の砦であるにもかかわらず、このような扱いではラストでの緊張感も失せるだろう。
なぜ他の霊体はそこそこ良い出来なのに、本体であるキャサリンを凄まじいビジュアルに仕上げなかったのだろうか。
作品自体は直球ど真ん中勝負系なので、視覚で与えるインパクトは最優先の必須事項だ。
よって彼女を手抜きで表すなどもってのほか。
なにをおいても、とんでもない怪物として登場させるべきだった。
まさか、ストーリーや演出で恐怖感を演出できていると自負していたのだろうか?
ならばそれは間違いだ。
サイキックが萎える

キャサリンは銃弾を止める。念動力。サイキック悪魔。
我々はホラー映画が見たいのであって、サイコパワーで銃弾をはじき返すサイキックバトルが見たいのではない。
銃弾を空中で止めても、驚きこそすれ怖さはない。
この演出については本当に採用理由が分からない。というかこのあたりまでストーリーが進むと、概ねいい加減で適当な展開が急激に増してくる。
序盤でつけた勢いを最後まで保てない、先行逃げ切れていない型ホラーの典型だ。
銃弾を止めるキャサリンだが、実際には銃で撃たれても全く堪えない。ピンピンしている。
よって弾を止める必要などないのだ。パフォーマンス的なサービス演出ということになる。
にもかかわらずヘーゼルにパイプレンチでぶん殴られると、キャサリンは随分と長い昏倒をする。
これには打撃武器>銃火器の謎物理法則か、或いはヘーゼルがパイプレンチに聖なるエンチャントを施したかのいずれかだろう。
もうSFだかファンタジーだか、わけがわからない。
凝ったようで、結局悪魔憑依

割と変わった設定から始まるホラーのため、やや期待感はあった。
「宝石と謎の女、そこに怪死した一家か。ここからどう展開する?」
ところが始まってみれば、なんのことはない、ただの悪魔憑依ホラー。これにはがっかり。
今考えると強盗という設定は、自然に銃火器を携帯させるためだけのものだったのだろう。
タフでマッドネスな悪霊を引き立たせるだけの、ひねりもなにもない強盗設定。
結局は神父が除霊を試みて返り討ち、というエクソシストのオマージュに落ち着く。
この図式はいい加減飽きた。
完全に意味不明生物が強襲するテリファイドや、異常性へのフォーカスが尋常でないヘレディタリーなど、いくらでも代わり映えのある成り立ちは創造可能だ。
強盗や宝石などのキーをもっと深掘りしていれば、既存のテンプレホラーと差別化を図れる一作が出来上がっていただろうに。
ぶん投げラスト

「地獄で焼かれな」
キメ台詞で引火したガソリン。かくして恐るべき悪魔は業火に焼かれ、人の世に平和が訪れた。
綺麗にまとめたようで、その実アクション映画と変わらないラストシーン。
終盤は全体的な脱力感が増しており、制作側のやる気低下や疲労が垣間見える。
ヘーゼルの生存に関しても疑問が残る。
なぜ彼女に憑りついた亡霊=母のみが、協力的になるのだろう。この点に言及するものはなく、単なるご都合演出の域をど真ん中で射貫いている。
また、「悪×悪」という図式に基づけば、喧嘩両成敗よろしく互いの全滅が最も好ましい結末に感じる。
いかにもテンプレっぽくひとり生き残ったヘーゼルだが、ここに対して感慨はゼロなのだ。
むしろ誘拐事件の首謀者らしく、然るべき裁きを受けてもいいようには感じた。
なんにしろ、「もうあとはお約束でいいよね?」という監督の意図が透けて見える。
道中でやるべきことは全てこなした、とでも言わんばかりの投げっぱなしジャーマン。
そして虚無感だけを残すエンドロール。
評価
邦題は凝っているものの、内容は遠く及ばない。

コメント