露、米が協力して作成した全編FP(ファーストパーソン)仕立てのアクション映画、HARDCOREをレビュー及び評価。
あらすじ
目覚めると目の前に美女が。君の身体は動かない。彼女はエステルと名乗り、君の妻だという。
どうやら君の身体は粉々になったようで、エステルはそれを修復すべく、サイボーグ技術で手術の真っ最中だ。
時間はない。何らかの理由で君を追ってきたサイキック能力者エイカンとその手下たちが現れ、君たちの身柄を確保しようと目論む。
すんでのところで空中研究所から脱出した君たちだが、エイカンの手によってエステルは攫われる。
君は不思議な協力者ジミーからの助力を受けながら、 命を狙う暗殺者たちを掻い潜り、 エステルを救い、憎きエイカンを撃破しなければならない。
窮地には、君の身体に施された改造技術が役立つだろう。
幸運を祈る、ヘンリー。
ネタバレ概略
- 1.目覚めヘンリーが培養液から目覚めると、目の前にはエステルと言う名の女性が居た。彼女はヘンリーが失った左の手足を用意すると、接合にて元の姿と寸分変わらぬように戻した。
- 2.襲撃サイキックのエイカンは突如施設を襲うと、ヘンリーの身柄を要求。
彼は死者を蘇らせて、自分だけのアンデッド軍団を作ろうという魂胆らしい。ヘンリーの身体の素材を提供したのも、彼だった。 - 3.逃走エステルはエイカンの企みを危険に思い、ヘンリーと共に脱出を目論む。
地上から遥か上空にある施設より、ふたりは脱出ポッドで降下した。 - 4.拉致だが地上に回り込んでいた部隊によって、エステルは捕獲される。
高架下に落下したヘンリーは、そこでジミーという男に助けられ、車に乗せられた。 - 5.寿命ジミーはグローブボックスにある充電装置でバッテリーを回復させるように言った。
そう、ヘンリーはあくまでサイボーグ。電池が切れればシャットダウンなのだ。
ジミーは彼の寿命は、せいぜい残り20~30分だと告げた。 - 6.死亡街中にもエイカンの手下は大勢居る。車を止めた警官らも同様で、彼らの銃撃によってジミーは頭を撃ち抜かれて死んだ。
- 7.再会徒歩で逃走したヘンリーはバスに飛び込む。そこで向かいに座った浮浪者は、なんと先ほど死んだはずのジミーだった。
彼はヘンリーの手首に埋め込まれた追跡装置をほじくり出すと、それを破壊。
そして当面の目標として、エイカンの右腕であるスリックという男の心臓に埋め込まれたチャージポンプを奪い取れ、と彼は言った。 - 8.手術スリックからチャージポンプをぶんどったヘンリーは、売春クラブでまた別のジミーと合流する。
ただしこのジミーは手術の出来る状態でなかったため、更に新たなジミーがヘンリーの心臓にチャージポンプを組み込むことになった。
これにより、ヘンリーの寿命はしばし永らえることになる。 - 9.エイカン再び売春宿に攻め込んできたエイカン。逃げ出すヘンリー。
応戦するジミーは死亡するも、駐車場ではヒッピー風のジミーがヘンリーを待っていた。 - 10.逆襲宿の女性ふたりとジミーを加え、ヘンリーはエステル奪還のためにエイカンの車両を襲う。
遂にエステルを奪い返したと思いきや、またもエイカンは上手を行った。
バットで殴り倒され、車外に放り出されるヘンリー。 - 11.隠れ家再びジミーに救われたヘンリー。団地跡に隠した、研究所へと案内される。
- 12.本体ジミーの本体、オリジナルと対面するヘンリー。彼は車椅子が手放せない、麻痺を抱えた身体だった。
自分の代わりに体験させたことを共有するため、多数のジミーを生み出していたのだ。 - 13.スパイウェアヘンリーは今まで、エイカンに視界をジャックされていた。
知らぬ間に視界映像を全て盗み見られていたため、ジミーの研究所に多数の手勢が迫ることになった。 - 14.脱出作戦オリジナルジミーを守りながら、クローンジミーと協力して団地を脱出すべく動き出すヘンリー。
- 15.死別エイカンの本拠地ビルへと乗り込んだヘンリーとジミー。
だがオリジナルジミーに瓦礫の破片が首に刺さってしまう。先を託した戦友は、友情に抱かれて逝った。 - 16.決戦エイカン率いるクローン兵士軍団と、たったひとりの男の闘いが始まる。
死闘の末に、ヘンリーはエイカンの前に倒れた。
そこへ、エステルが現れる。 - 17.偽りエステルとエイカンは、ヘンリーに見せつけるように愛を示した。
そう、全てはエステルの狂言だったのだ。 - 18.復活怒りに打ち震えるヘンリーは、父の言葉を胸に再び立ち上がる。
そしてとうとうエイカンを、ワイヤーハーネスで真っ二つにしてみせた。 - 19.贖罪飛び立つヘリに飛び乗ったヘンリー。赦しを乞うエステルを、迷うことなく夜空へ放り出した。
Go Proで撮影された没入感溢れる一人称視点

一人称視点のメリットとして、その優れた没入感が挙がる。
実際に自分がこのハイスピードアクションを体験しているかのような緊張感を味わえるだろう。
視野角の狭さや、三人称を用いないことで起きる状況の把握し辛さなどは、当作では完璧にクリアされた問題だ。全てのシーンで一目瞭然、何が起きているかを一瞬で理解できるだろう。
シナリオを煩雑にしなかったことがプラスに働いた結果だ。
一部人物が複数回にわたって奇妙な登場をする部分や、謎の女が現れても別段、気にする必要はない。
要は実際のFPSゲームのように、目に映る敵を片っ端からぶちのめせばオールクリア。
非常に単純明快。
一人称慣れしていないユーザーには若干の不安?

筆者はFPSゲーム歴が10年以上あるので、もう一人称酔いの感覚を忘れてしまったが、そうではない方はもしかするとこの作品では酔いに悩まされるかもしれない。
かなり激しめに視点を振ることもあるので、環境的にはFP慣れしていない方向けとは言い難い。
視聴していて気分が悪くなった場合は、一度休憩をした方が良いだろう。
豊富な武器レパートリー

拳銃の二丁持ちからナイフにカラシニコフ、ミニガンをぶっ放してハンドグレネードを投げたらお次はM32でポンポングレネード乱射。
様々なFPSゲームの良いとこ取りのように多数の武器で無双する主人公ヘンリーに、ゲーマーは拳を突き上げるだろう。
銃火器に詳しくない視聴者も、小難しいことを考える必要は無い。
これはバッタバッタと敵をなぎ倒すヘンリーにシンクロして、ひたすら爽快感だけを味わう映画だ。
ゴア表現

普段から海外作品に慣れ親しんでいると、多少の流血や斬首程度ではゴアの部類ではないと思いがちだったが、慣れていない方にはそういった表現が存在することを前もって記しておく。
ただし悪趣味なグロテスク表現ではなく、あっさりめのテイストなので不快感は無い。
銃撃だけでなく焼死や爆死、落下死とレパートリーは様々で、その中でも画一的にならないよう色々な小道具や変わったギミックを使用している。
単純なバンバンアクションに比べれば格段に面白味のあるワザが詰め込まれているため、主観視点という特色を差っ引いてもアクション映画としての出来映えは良い。
出来の良いキャンペーンモード

ここ十数年で日本でも多くのプレイヤーを獲得し出したFPSゲーム。
当作品は完全にゲームに寄せた作りであって、実写版でキャンペーンモードをプレイしている感覚そのものである。
走る、殴る、突き刺す、撃つ、車で追う、飛び移る。
三人称で構成すれば間違いなく駄作と言われるような使い古し演出だらけなのに、一人称ではそうならない。
これは筆者のFPSファンとしての贔屓目なのだろうか?
いや、そんなことはないと思いたい。
友軍:ジミーが面白い

ヒッピーや軍人、浮浪者などさまざまな格好で現れるジミー。
彼は街中に配置されたクローンであるため、統一された思考を持ちながら個体差がエラく激しい男(たち)になる。
作中では味方であるため、ゲームで言うところの友軍やNPC扱い。
ただしその働きは甚大で、死亡するその瞬間までヘンリーを要所要所で救ってくれる。
一部行き違いもあったが、最高にナイスな友人だったと言えるだろう。
イカしたラスト

ヘンリーは声帯にダメージを負い、喋ることが出来ない。なので意思を視聴者である我々に伝える術は行動=暴力的解決のみであり、それは概ね全てのシーンで正しい。
しかし唯一、まるで我々に見えないはずの選択肢をクリックさせるかの如くのシーンがラストに存在する。
これに絶妙の間で応えるヘンリー。
思わずガッツポーズを取ったのは筆者だけでないだろう。
評価
アドレナリンマシマシ。
FPSファンは必見、そうでないアクション好きにもお勧めの一作だ。
FPSゲーム未プレイの方は、この機に興味を持って貰えると嬉しい。

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