正統派ホラー映画、INSIDIOUSをレビュー及び 評価、感想、解説。
あらすじ
ジョシュら五人家族は、戸建ての中古物件に引っ越した。
あらかた荷物の片付け終わる前に、その事故は起きた。
屋根裏で遊んでいた長男のダルトンが、梯子から足を踏み外して落下。
大きな怪我は見られなかったはずが、翌日から彼は昏睡状態に陥ってしまったのだ。
母ルネは生まれて間もないカリの育児や、一向に目覚める気配のない息子に疲弊していく。
と同時に、昼夜問わずその家で、何やら不気味な現象が起こり始めるのだった。
初めはそれらを信じられなかったジョシュだが、やがて認めざるを得ない事態へと発展していく。
古典的ホラー

「振り返ったらそこにいた」であったり、「耳を澄ますと何か聞こえる」だったりと、非常に使い古された演出が多い。
だがそういった王道演出がなぜ王道たるかを、このインシディアスは再確認させてくれるだろう。
とにかく怖い。デカめのSEとドッキリ演出で「これはどうだ?」と制作が投げかけてくる恐怖シーンのひとつひとつが、とにかく怖い。
一般的に、コアなホラーファンであれば展開を読むなど造作もないと思う。
「ここで来るんだろう」とアタリをつけたシーンで悪霊が待ってましたと現れても、それは大抵の場合驚かせこそすれ、恐怖を感じるには程遠い。
では何故インシディアスが王道演出ながら、怖いホラーたるか。
非常に微細な工夫だが、効果は絶大だ。
「絶対にここで来る」というポイントから敢えて半テンポ遅くずらしたり、逆に早める。
これにより無意識化で緊張状態を瞬間的に保った精神が弛緩、或いは緊張に入る寸前で演出が放り込まれることになる。
この絶妙な間の取り方は随所で見られ、良い意味でヤラれた。
また登場する霊魂や悪魔の見た目のバリエーションが豊富であり、似たような悪霊が何度も現れることで「慣れ」が発生することを防いでいる。
きちんと恐怖というものに対して、苦労や手間をかけているさまが見て取れるだろう。
やや荒唐無稽?

中盤で霊能力者エリーズの口から語られる事件の背景に、やや違和感を感じる方も居ると思う。実際にジョシュも彼女を一度は「弱みにつけこむ者」と非難した。
やけに大風呂敷を広げてしまったストーリーではあるものの、しかし心配するには至らない。
このインシディアスは全四作の内の一作品であり、全てを見終える時には一見荒唐無稽なぶっ飛んだストーリー構成も、なかなかどうして案外しっくりと馴染んでいると思う。
よってストーリーの違和感だけで萎えてしまうのは些か勿体ない。
ともかくエリーズの言うことを信じてみよう。彼女の優れた霊能力は折り紙付きだ。
老婆の恐怖

シリーズ通して最恐の存在である「老婆」
この恐るべき悪霊はしばしばジョシュらの前に現れ、その風貌で視聴者を恐れさせる。
彼女との対峙はひとつのテーマであり、逃れることの出来ないカルマだ。
果たしてこの家族は、悪意の権化ともいえる老婆から逃げ延びることが出来るのだろうか。
光量不足

AVP2ほどの愚かな失敗ではないものの、終盤のクライマックシーンではやや明かりの不足が目立った。
ディテールや行動、起きている事態は確認出来るが、見えない部分を怖いと思うよりは、単に見え辛いと思うことの方が圧倒的に多い。
序盤では昼間でもしっかりとした恐怖演出を描写出来ていたので、ここまで暗くする必要は無かったように感じる。
行き過ぎた暗闇はライトユーザーには恐れを抱かせるだろうが、ホラーを見慣れている立場からすると眠気しか感じない。
印象的な前半と比べて後半が失速気味なのは、ひとえにこの安易な暗闇に頼ったためと思われる。
ゴア表現

監督がジェームズ・ワンということで、ソウのような流血やスプラッターシーンを期待する方には残念な知らせだが、今作ではグロテスクなシーンは一切排されている。
だが独特の世界観や、ディテールに拘った奇妙なアンティークといった部分では共通項を見出すことが出来るだろう。
ともかくこれは、ゴアシーンの苦手なユーザーでも楽しめるように、純粋なホラーを追求した作品だ。
血や臓物を好まない方でも安心して視聴可能である。
評価
正統派ホラー映画一作目。
次回作への引きたっぷりでエンディングを迎える仕様に、続きがついつい気になるだろう。
ホラーファンにはお勧めの一作だ。

二作目はコチラ。
三作目はコチラ。
四作目はコチラ。
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