【映画】怪怪怪怪物!/自称”人間”への警鐘【ネタバレ:レビュー】

ヒューマン

ホラーのようでホラーじゃない新感覚ヒューマン映画、怪怪怪怪物!をレビュー及び評価、感想、解説。

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あらすじ

ドアン率いる三人組と、いじめられっ子リン。

彼らはその日、金塊を入れた箱を呆け老人から強奪する作戦中だった。
作戦は見事成功。重い箱は彼らのものになった。

だが運悪くそこで、人の肉を喰らい血を啜る怪物と遭遇。慌て逃げ回るリンたち。
暗い団地の中を人外の魔物が迫る恐怖。

驚くことに、幕切れは交通事故だった。
化け物の一体はクルマに撥ね飛ばされると、そのまま気を失ったのだ。

ドアンは刑事事件になることを恐れ、怪物を拉致、学校の廃プールへ監禁する。
やがて怪物がリンの代わりに新たないじめの対象になるのに、そう時間はかからなかった。

ネタバレ概略

ネタバレストーリー
  • 1.
    怪物
    とある貧困層の住む住宅地で、密かに怪物姉妹による人間狩りが行われる。
    しかしそれらは明るみには出ず、彼女らは闇の中に潜み続けていた。
  • 2.
    いじめ
    いじめられっ子のリン。教師にすらも見放されてしまった彼をいじめる筆頭は、ドアンという同級生。
  • 3.
    横領
    クラスの給食費が消えた。犯人はリンとされ、誰も疑いを持たない。
    しかし彼に罪を着せたのは、ドアン率いるいじめグループだった。
  • 4.
    贖罪
    リンの更生の機会として、担任教師は社会福祉を命じる。
    また同時にいじめグループを同伴させ、彼らの仲を取り持とうと目論んだのだ。
  • 5.
    介助
    貧困老人が集う住宅地を回り、生活の介助を行うドアンら。というのは建前で、好き放題のイタズラと過激な遊びを繰り返していた。
  • 6.
    宝箱
    ある老人の家で、彼らは大仰な箱を見つける。彼は若い頃に戦地へ赴いた過去があり、どうも中には金塊があると目された。
    ドアンたちはこれを夜間に盗み出すことに。
  • 7.
    泥棒
    老人は痴呆がひどく、昼夜問わず意識朦朧としており、泥棒に際して困ることはなかった。
    揚々と宝箱を盗み出す一同。
  • 8.
    遭遇
    だが帰り際。何かをむさぼる影を見た一同。
    そこには人間を貪り食う怪物の姿があった。
  • 9.
    事故
    怪物の片割れはすぐに逃げ出したものの、小さい方の個体がドアンらに迫る。
    だが通りかかった車にその怪物は撥ねられ、意識を失ったようだった。
  • 10.
    拉致
    事故現場は監視カメラの範囲内で、いじめっ子たちは事件の発覚を恐れた。
    そこで彼らは怪物を学校の秘密基地=廃プールへと拉致することにした。
  • 11.
    玩具
    鎖で縛りつけた怪物は早速ドアンらのいじめの標的になった。
    言葉を話さず人権すらも怪しいその存在は、嗜虐性を思う存分ぶつけるには最高の素体だった。
  • 12.
    第二候補
    いじめられる気持ちの分かるだけに、それに躊躇するリン。
    そこでドアンは、「この怪物が居なくなったら、同じことをお前にする」と言い、彼に罪の共有を促した。
  • 13.
    怪物の食料は人間の血肉。
    ドアンはリンに血を餌として与えるよう告げ、怪物の飢え死にを防ぐことに。
  • 14.
    同調
    怪物に血を与える内、次第にリンは彼女にシンパシーを感じていく。
    だが同情こそすれ、逃がすことは出来ない。次にターゲットとされることだけは、彼には耐えられない事実なのだ。
  • 15.
    実験
    担任教師に侮辱されたドアン。彼は復讐を誓う。
    かくして彼女の水筒には、怪物の血液が入れられることになった。
  • 16.
    炎上
    体育館でバスケットボールの観戦中、担任教師は見るからに体調をおかしくした。
    やがて彼女は怪物と同じ、”陽の光に弱い”という特性を発現させ、衆人環視の中で燃え上がった。
  • 17.
    教師炎上のニュースは大々的に報じられた。偶然テレビを見かけた怪物の姉は、妹を拉致した連中が通う東実高校を見つけ出すことになる。
  • 18.
    根絶やし
    怪物の姉は、東実高校の生徒を片っ端から殺すことに決めた。
    日に日に不審死を遂げる生徒。更には彼らの通学バスを狙った皆殺し事件もが発生する。
  • 19.
    応酬
    バスの一件で恋人を殺されたドアン。彼は怪物の妹を餌として使い、憎い仇を呼び寄せる作戦を思い付く。
  • 20.
    偽善
    作戦の最後には、封鎖した部屋内に撒かれる大量のガソリンで怪物姉妹は焼き尽くされることになっていた。
    しかし彼女らを不憫に感じたリンは、窓の留め金を前もって緩めておき、そこから脱出するように耳打ちする。
  • 21.
    翻意
    作戦決行日。リンの中に、ある昏い情動がこみ上げた。
    彼は怪物が現れた瞬間に、隠れた仲間の位置を携帯電話の呼び出し音で知らせたのだ。
    「きみたちを殺せるのは、今だけ」
    ドアン含む、三人の仲間は全て殺された。
  • 22.
    善意
    怪物の姉が迫る中、妹に、「自分が善人だと伝えてくれ」と頼むリン。
    しかし彼の言葉は届かず、彼女はリンを殺そうとにじり寄る。
  • 23.
    累々
    リンは脱出用の窓を使い、陽の光で怪物たちを焼き払う。
    廃プールで生き残った者は、彼ひとりしか居なかった。
  • 24.
    給食
    事件からしばし後。給食当番のリンは、スープの中にあるものを入れた。
    学生のほとんどはその日、燃え上がった。
    もちろんリンも同じく。

ホラーじゃない

血に乾く怪物の妹

一応ホラーという触れ込みで語られる本作だが、本質はそこにはない。
他の恐怖映画と比較した場合、恐怖感やドキドキでは大きく劣る。
よってスリリングな展開を求めて視聴すると、肩を落とす結果となるだろう。

一部スプラッターやホラー的展開も含むが、それらは作品の一面でしかない。
あくまで副次的テーマであるこれらにフォーカスせず、全体の成り立ちを見極める必要があるだろう。


唯一無二のテーマは、

怪物は誰か



これに尽きる。

怪物は怪物か?

咽ぶ怪物の姉

怪物は怪物だ。

作中で、

  • 可哀想な姉妹
  • 家族愛に満ちた心根
  • 人間よりおよそ人間らしい



このような像として描かれる怪物たち。

しかしこれには”周りの人間が群を抜いて酷かった”、というフィルターがかかっている。

やっていることを見直せば、単にカニバリズムであり、全くフォローの利かない大罪である。

不良がときおり見せる善意は、一般の者より褒め称えられる



この法則が効いている。

だが最初に人類側へ被害をもたらしたのは彼らであり、純然たる加害者であるという事実。
これを忘失すると、不思議に救いようのない怪物も可愛いように見えてしまうのだから不思議だ。

ドアンは怪物か?

教師を睨むドアン

ドアンは怪物だ。

刹那的な一興を至上とし、その暴虐ぶりや残虐性、更にそれにまつわる想像力が抜群に抜けている。
殺人すらもいとわない昏さをときおり現し、その暗君たる将来性を垣間見せる。

彼の常軌を逸した苛烈ないじめは、たまたま怪物が受け止めることとなった。
だがリンが恐れたように、仮に怪物が居なければ、リンが同じ姿になっていたことは想像に難くない。

リンは怪物か?

全校生徒を燃やし尽くしたリン

リンは怪物だ。

彼の最も大きい罪は、

善人でありたいと望む自分が存在するかのように、自他を欺いた



全ての場面で彼は、「弱者の気持ちを理解する者」という立ち位置を固持した。

ひと言で表すならば、リンは究極の偽善者だ。
悪意をもって怪物をいたぶることも出来なければ、身を切るつもりで逃がすことも出来ない。
しかし自分の中にある善意を信じ、悪人であることを否定し続けた。

やがてその事実を受け入れざるを得なくなった時、彼は最大級の混沌を振り撒いた。
作中で最も悪しき破滅主義者、それはリンである。

怪物しか居ない

このように、作中には怪物ばかりが登場する。
およそ善人らしき善人は見当たらない。無害な者は知恵が足りないか、或いは虐げる下層を持たない最底辺に限られる。

ラストで見逃されたいじめられっ子とて、善であると示す証拠は一切無い。
ただ単に、悪を見せられる立場になかっただけだ。

テーマは人間

いじめを受けるリン

まずスクールカーストに始まり、次に痴呆の老人たちをターゲットにする。それらはやがて怪物に集約した。
これは人類の業を全て浴びせる行為と呼べるだろう。


人間の本能として、「他者を見下したい」という思いがある。
この昏い情念は生物として至極当然の欲求になる。

  • いじめ
  • ネット炎上
  • 知識マウント



一見して現代の人間であるからこそ発生するようなこれらは、実は極めて野性的で動物感に溢れるシステムに基づく。

例:チンパンジー
いじめを行う生物:チンパンジー

人間に近いと言われるこの猿は、非常に獰猛なことで有名だ。
彼らは群れのボスにより、絶えず能力値や忠誠心の精査を定期的に行われる。

仮に反骨や劣等が見られる場合、その個体はボス、或いは群れの集団により惨殺される。
時には断首や内臓の散布を用いられ、見せしめとして過剰に残酷な殺害をされることになる。

また時には、屍肉を群れで食べることもある。これは食料的な危機によるものでなく、侮辱のため、また罪状の共有のためと言われている。


この他にも群れで生活する種は、能力値が劣るものを間引く行為が多々見られる。
これは人間に近しい、犬ですら見られる習性だ。
群れの平均能力値を引き下げる要因は、徹底的に叩かれ、時に殺される。

人間らしさの定義

首をくくられるリン
人間らしさ=ケダモノからの脱却

人間らしさの定義については様々あるものの、通説では「動物性の否定」になる。

つまり逆説的に言うといじめや階級による差別を行う者とは、動物そのものである、とも言える。
野ブタやチンパンジーと大差ない、喋れるだけの獣。

動物的本能に抗えない者ほど、弱みを見せた弱者や過ちを犯した罪人に石を投げたがる。
聖書で石を投げ続けたのはキリストだけだったが、現実では異なるようだ。


作中では動物的本能に抗えない者だけが現れ、その数も凄まじい。
社会風刺として用いているのは要所で見えるだろう。
彼らの大半はリンのように、「自分がターゲットになりたくない」という思いでこれを行う。

この部分は現実と少し乖離があり、実際にこの心理に陥るのはスクールカーストがメインになる。
SNS等のネットで暴れる自警団は、そもそも彼ら自身、なにが自分を奮い立たせているのかすら気付いていない。

この解として、「動物的本能に抗えない」というものが示される。
人類という種全体への自己淘汰を自負した、一種の神託を受けたという錯覚に基づく。


この無意識な動物たちを憐れむことこそ、”人間らしい人間”に求められる度量になる。
我々は手に負えないような飼い犬にも、躾を教えこむ義務があるのだから。

評価

ホラー要素は薄いも、メッセージ感バリバリ


予想以上の面白さ。万人にオススメの一作だ。

★★★★☆
四つ星の優良作。
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いじめられっ子のリン・シューウェイは、いじめっ子3人とともに、教師から独居老人の手伝いをする奉仕活動を命じられ、そこで2匹のモンスターに遭遇する。彼らは小さい方のモンスターを捕まえて、独自の「調査」と「実験」を始めるが、やがてモンスターは彼らの手に負えなくなっていく。そして、それは恐怖の始まりだった・・・・。本当に恐ろ...

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