【映画】オン・ザ・ハイウェイ その夜、86分/衝撃事実が判明【考察あり:ネタバレ注意】

ヒューマン

全ての出来事が車内で起こるヒューマン映画、LOCKEをレビュー及び評価、感想、解説 、考察。

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あらすじ

ビル建設の仕事を終えたロック。帰宅してサッカーの生中継を家族と観る約束をしていたものの、今夜、彼はある決心を胸に抱いていた。

出張で一夜限りの関係を持った女性がその日、出産をするというのだ。
セント・メアリー病院で産婦人科に入った彼女を付き添うため、ロックは一路、ロンドンへと向かう。

翌日の大仕事。家族。出産立ち合い。

三兎を追うロックだが、果たしてその先に待ち受けるものとはいったい。

退屈な人には退屈

高速を走るロック

全編車内映像のため、爽快感を求める方には圧倒的に向かない。
普段運転している風景を見ているのとなんら変わりないので、視覚的にはこれほどつまらないものはないだろう。

だが想像力というエッセンスを用いると、大きく話は変わる。

通話相手の人柄、ロックとの関係、抱いている感情。
またロック自身の過去や、抱いている思惑など。

こうした目に見えない事柄へのフォーカスこそ、本作の真骨頂だ。
つまり土台の提供は行えど、実際にキャンバスへ筆を走らせるのはあくまで我々ということになる。

このような趣は、小説に近いものがある。
普段から活字に慣れ親しんだ者ほど、この映画は楽しめる。
往々にそうした人は、脳内に色とりどりの筆を持っている。さまざまなタッチで自分だけの映像を描ける者だけが、こうした作品を心から楽しむことが可能になるのだ。


しかし依然として、そうでない者への救済が無いのも事実。
作中で事件らしい事件は起きず、視覚派にとっては苦痛の時間が続くことは想像に難くない。

大きな評価の分かれ目は、まさにここなのだろう。

会話がリアルで辛い

物憂げに前を見つめるロック

仕事の電話、出産を控える妊婦、不安を感じ出す子供たち、そして絶望する妻。

電話口から溢れだす感情が、あまりにもリアルではないか。
特に覚悟していたとはいえ、ロックが崩壊させた家族の声だ。
彼らの悲痛な叫びを耳にすると、フィクションながらも胸が痛い気分になる。

驚くべきは、やはりイマジネーションに訴えかける描写。
現場を見てもいないのに、わずかな会話から彼らの現況がありありと浮かぶようだ。
地味で目立たないものの、演技力や台詞選びなど、割と困難な試練に挑んでいると思われる。

亡き父への反発

後部座席の父の亡霊に怒鳴るロック

ロックの父親はろくでなしだ。
とっくにあの世に行った今でもなお、彼は父親の亡霊に毒づく。
詳細は語られないが、死後ですら敬われないとなればその人柄は自然と見えるものだ。


彼自身は気が付いていないようだが、全ての行動原理は父への反発から生まれている。

  • 仕事
  • 家族
  • 不義の責任



亡き父の果たさなかった責。同じ轍を踏まぬように彼が奔走するのは至極当然でもある。
父のあらゆる怠慢をその目で見た彼だからこそ、似た背になりたくない想いは強い。


このような感情の持ち方は、現実でも多くある。
特に顕著なのが、虐待や育児放棄に見られる。

自らが辛い幼年期を送った者ほど、自分の子供に同じ思いをさせたくない、と願うことになる。
そうした親は自ら苦境を味わっているため、より親身で温かい育児を心掛けるという。


だが皮肉なことに、これらはある符合を示しているとも言える。

そもそも同じ問題に直面している時点で、同じ轍を踏んでいる



幼少期に虐待を受けた子供は、自身の子にもまた同じ苦しみを与えてしまう場合も多いという。

すべてうまくいく?

笑顔で車内電話をするロック

本作を観て、貴方はどう感じるだろう?

  • 苦境に立ち向かう、ハートフルストーリー
  • 家族の絆の強さを確かめる愛の物語
  • 亡き父の亡霊を打ち砕く、タフムービー



受け取り手によって作品のイメージが大きく変わることは珍しくないものの、本作ではそれが特に顕著になる。
小説ライクな構築によって各々が描く物語はそれぞれ異なり、生じる感情や結末の受け取り方も変動する。

だが概ねグッドな印象を持った方は多いだろう。ハッピーとまではいかぬものの、ある程度の及第点はクリアした、と。


しかしスティーヴン・ナイトは残酷だ。

作中に散らばった伏線とも呼べない伏線を拾い集めた時、筆者の中に、ある”最低のバッドエンド”が浮上した。
監督はこれを意図したか否かは定かでない。が、少なくともハッピーでない結末へ向かうためのエビデンスが、そこかしこにちらほらと配備されているのを発見してしまったのだ。

やや破滅主義的であるものの、この説はそこそこ強い。
詳しくは後段の考察部で紹介することとする。

評価

想像力勝負。豊かなら面白く、そうでないなら退屈。



個人的にはたいへん面白かったが、人を選ぶことは前もって記しておく。

★★★★☆
四つ星の優良作。
Amazon.co.jp: オン・ザ・ハイウェイ その夜、86分(字幕版)を観る | Prime Video
夜のハイウェイ。アイヴァン・ロックはある場所へと車を走らせていた。妻カトリーナとの間に二人の子供に恵まれ、建築現場監督としてのキャリアも評価され、順風満帆な生活を送っている。大規模なプロジェクトの着工を明日に控え、その夜は家族と一緒にサッカーを観戦する予定だった。しかし、一本の電話が人生のすべてを賭ける決断を迫る。愛す...




以下、考察及びネタバレ注意。






伏線

まず、あらゆる伏線を拾っていく。

上着

シートベルト越しに見える作業着

ロックは冒頭で車内に乗り込んだ際、

作業着の上からシートベルトを締めた



この一見何でもないシーン。
だがここを、敢えて描写しているというのがポイントになる。

シートベルトを締めると、上着は脱げない。
だがその後のシーンで、彼は作業着を脱いでセーター姿になっているのが分かる。

普通に考えれば、「画面外のどこかで脱いだのだろう」となる。

だがこれが、ひとつの伏線だとしたら?

父親への罵倒

口を動かさずにしゃべるロック

奇妙なことに、一部のシーンでは父親を罵る時に、口が動いていないのがお分かりだろう。
主にサイドガラスから映される場面でこれは起こる。

ではこの現象はいったいなにを表すのか?それは、

幻聴、妄想の示唆



つまり実際にロックは声にして父親を罵っておらず、単に心の中に浮かべたワードである場面がいくらか見受けられるということだ。

この幻聴や妄想の可能性を忘れないでおこう。

風邪気味

鼻汁を拭くロック

ロックはしきりに鼻をすすり、咳や発熱を気にしている。単純に考えて風邪気味なのだろう。

これは単なる余分設定なのだろうか。彼に鼻汁を出させることで、病弱なキャラクターを獲得したかったとか?


フィクション映画において、無意味な演出は無い。すなわちこの場面は何らかの意味を含ませている、伏線であると考えなければならないだろう。

風邪をひいたロック。これの意味するものとは?

エディの言葉

子供と通話するロック
  • コールドウェルが苦手なドリブルで敵を躱し、ゴールを決めた
  • 結果を知らないフリをして 最初から観るんだ



単なる子供の留守電と思いがちだ。
しかしこの場面でロックが涙しているのは、単に息子の声に家庭を思い出したからだけではない。

自分の現況に、ぴたりとはまる言葉だったからだ。

ラストシーン

ウィンカーと逆に曲がる車

四角で囲ったのが、ロックのBMWになる。

この場面、玉ボケで見辛くなるものの、右にウィンカーを出しているのは見える。

だが驚くことに、このあとロックはウィンカーとは逆に左折する。


冒頭の場面を思い出さないだろうか?
ウィンカーを土壇場で変え、ロンドンへ向かったロック。
それと真逆のことが今、起きているのだ。

時系列ミスリード

提唱したいのは、時系列ミスリード説になる。

つまり作中の大半の部分はロンドンへ向かった日の後日談であり、全ての通話はロックの回想に過ぎない。


出産、仕事の引継ぎ、家庭の不和。
全てはとうの昔に終わったことで、この映画はそれをのちに思い出すロックを描いているのだ。


ではここで全ての伏線を回収し、解説しよう。

上着の謎

冒頭の工事現場から車内へ乗り込み、ウィンカーを逆に出すまでは過去、つまりは出産当日で間違い無い。

その後セーター姿になった部分からは、後日談である。

上着の上からシートベルトを締める姿と、その後着替えた姿。
この謎は別日という解で示せる。

父への罵倒の謎

通話が回想であると示すため、部分的に口を閉じたロックを描いたことになる。
また後部座席に居る父の亡霊に話すことは、それ自体が妄想の示唆でもある。

よって車内でのあらゆる発言が妄想であるとまでは言わぬものの、聞こえる言葉は全て幻聴になる。

風邪気味の謎

ロックがガレスに語った言葉を思い出そう。

だが今はすべて失い あるのはこの身体と車だけ



これは最も正しく”現在のロック”を表している。


妻から離縁を迫られ、帰宅を拒否されたロック。仕事はクビになり、行く当てもないだろう。
そうなった時、彼の取れる手段はおのずと見えてくるだろう。

クルマを寝床にしたホームレス



車中泊をやったことがある方なら分かると思うが、冬の車内は想像以上に寒い。
まして舞台はイギリス。寒冷地としてはそこそこのレベルで寒波が襲う。

ならば当然、ロックが風邪気味なのも理解可能だ。
よって彼が風邪をひいているのは、家を失ったホームレスと化したから、だ。

エディの言葉の謎

コールドウェル=ロック自身



サッカー選手はうまくゴールを決めたが、ロックにはそれが出来なかったことを示唆する。

ドリブル=仕事、家庭、出産立ち合いのみっつ
ゴール=全ての成功



結果を知らないフリをして 最初から観るんだ



まさにこの映画の彼自身を指した言葉になる。
全てを失った過去を、延々となぞり続けるロック。

ラストシーンの謎

セント・メアリー病院のグーグルマップ

これはセント・メアリー病院のGoogle mapだ。
ロンドンの真ん中にそびえ、大きく開発された賑やかな通りであることが分かるだろう。


エンディングでは、明らかにこの栄えた街を背にロックが去っているのが分かる。
これは彼が過去に、セント・メアリー病院へ立ち寄らなかった、という示唆になる。

また単なる高速出口からの迂回、という条件を差し引いたとしても、ウィンカーと逆に曲がる部分の説明にはならない。


よって彼は、出産当日に選ぶべき道を自ら否定し、後日談となる今もその過ちを繰り返していることになるだろう。

おまけ・ロックの走ったルート推測

地図上からロックの走ったルートを推測

上記が”恐らくロックの走った道程”になる。


実は最初に立てた説で、

同じコースを周回しているのでは?



こう考えたため、映像中の標識を全て記録した。

しかしこの過程では間違いなくロックはロンドンへ向かっており、また最終的に引き返すポイントまでおおよそ絞ることが可能になった。


以下がそれだ。

ロックが引き返したと思われるポイント



上記三点のいずれかと思われる。

この辺りは、地元ロンドン民でないとピンと来ないのだろう。
なので筆者には分かりかねる。


にしても、もうほとんど目と鼻の先だ。
恐らくこの地点で、彼は真の意味で全てを失ったのだ

タイムライン

実際に起きた”過去”をタイムラインにしてみよう。

真の出産日
  • 1.
    出立
    悩んだ末、ロックは土壇場でロンドンへ向かう。
  • 2.
    三兎
    仕事、家庭、出産。全てのドリブルを開始する。
  • 3.
    直前
    無事に子供が生まれた一報を聞き、自分の行動を省みる瞬間を得てしまう。
    寸前でセント・メアリー病院に向かうことをやめ、自宅へ戻る。
  • 4.
    拒絶
    自宅に帰ったロック。しかしカトリーナはそれを許さず、立ち入りを禁じられた。
  • 5.
    失職
    仕事を失ったことを後悔し、ガレスに温情を頼む。
    だがシカゴ社の怒りは強く、彼が復帰することはなかった。
  • 6.
    浮浪
    ホームレスの日々が始まる。
  • 7.
    忘失
    結果を知らないフリをして、全てを失った当日を繰り返す日々を送る。
    だが何度繰り返しても、失ったものは還らない。



終わりに

最大の皮肉が、

憎んだ父と、全て同じ結果になった



この最悪のバッドエンドを信じるか否かは、貴方次第だ。

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夜のハイウェイ。アイヴァン・ロックはある場所へと車を走らせていた。妻カトリーナとの間に二人の子供に恵まれ、建築現場監督としてのキャリアも評価され、順風満帆な生活を送っている。大規模なプロジェクトの着工を明日に控え、その夜は家族と一緒にサッカーを観戦する予定だった。しかし、一本の電話が人生のすべてを賭ける決断を迫る。愛す...

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