カナダの博物館に寄贈された実在のドールをモチーフとしたホラー映画、MANDY THE HAUNTED DOLLをレビュー及び評価、感想、解説。
あらすじ
空き巣の連絡役として金持ち未亡人の家に潜入したジェシー。彼女はベビーシッターとして、マンディという少女の世話を任される。
だが少女は実在せず、ベッドの中には不気味な人形が寝かされているのみだった。
家主のオブライエンは、気を病んだ憐れな女性だったのだ。
やがて頃合いを見計らって仲間を宅内に呼び込んだジェシーだったが、悠々と盗みを働くその時、家の中で奇妙な出来事が起こり始め……。
マンディ人形

この前歯!瞳!キズ!
冒頭の事件を見た段階だと、ビジュアルはかなりポイントが高いように感じた。
しかしそれ以降、彼女の不気味な容姿は活かされない。
というのも、このアオり気味のカットが最も怖く、正面から見た時にそれほどのインパクトが無いのが難点なのだ。
お人形劇
特筆してひどいのが、ホラーパートにおけるマンディの動き自体だ。
フレーム外でいかにも、「下から人の手で動かしてまーす」感が見え見えになる。
引き合いに出すと、例えばアナベル人形。
彼女は映画内で、首以外を大きく動かすことはない。
それは映像化した際にチープになると、制作陣が理解していたからだ。
代わりに彼女に憑りつく悪魔を実体化させ、それを主軸にホラーパートを動かしている。
またデッド・サイレンスのジミー人形。彼は元々腹話術人形であるため、瞳や口の動きにフォーカスすることで恐怖をうまく演出した。
上記二作品が本作と一線を画しているのは、圧倒的に手間暇を惜しまない姿勢にほかならない。
逆に言うとこの作品では、随所に手抜きが見られるという意味だ。
この点で低予算を言い訳にすることは出来ない。
カネをかけなくとも、シーンにおける熱量は生み出すことが可能だからだ。
ラクしたい、が丸見え

- 肝心のマンディがお人形遊び
- 殺害シーンは画面外
- 夜中のシーンなのに、窓の隙間から陽射しが見える
- 「ストーリー?面倒クセェから殺人劇でいいっしょ」
- 最終的にラスボスは狂気の老婦人
これらは全て、”手抜きしたい”の表れだ。
「やる気はあったが空回り」でなく、「とにかくラクしてホラー映画撮りてぇな」という印象しか持ちようがない。
ホラー映画は宝くじではない。
動機がおかしい

マンディがジェシーたちを襲うのは分からなくもない。
彼女には倫理観が欠如しており、殺しも遊びの一種と捉えてしまう悪癖があるのだろう。
またジェシーらは泥棒なので、正当防衛的な意味でも不思議でない。
ただどうしても解せないのが、オブライエン婦人。
自分からベビーシッターを頼んでおいて、
ベビーモニターからは不気味な笑い声が絶えず、家中を闊歩する不思議ドールの秘密をどうやって守るというのか。
しかもハンマーを振り回す姿が、地味に怖い。終盤の数秒でマンディを超えちゃった。
メインヒロインを超える恐怖を最終的にかっさらったオブライエン。
彼女単体でサイコキラーとして撮った方が、結果的に良かったんじゃないかとさえ思う。
実在ドール、マンディ

作中ではさんざんな扱いだったが、ここでは実存のマンディ人形について紹介しよう。
上記は本物のマンディ人形。
元々はイングランド、もしくはドイツで1910-1920年に生産された人形であるとされている。
1991年、カナダのブリティッシュコロンビア州、クイネルの博物館に寄贈された。
出自
とある農場の納屋前を通りかかった男。
The Paranormal Guide
ふと、中からすすり泣く声が。
気になった男はドアをノックしてみるが、応答は無い。
彼が勇気を振り絞って中を探索すると、やがて少女の遺体が見つかった。
その死因については謎であり、事故か犯罪に巻き込まれたのかすら判明しなかった。
ただひとつ確かなことは、亡くなった少女の腕の中にはマンディ人形が抱きかかえられていたのだ。
このあと本映画のように、老婦人が所有することになったというのが通説だ。
その婦人も怪現象の多さに、手放さざるを得なかったという。
現象
- 赤子の泣き声
- すすり泣き
- 同室の物体が動く、或いは消える
- 撮影するカメラの電源が消える、バッテリーが尽きる、故障する
- 部屋の窓を開け放つ
- 同室の人形をことごとく破壊する
- 人形の目が瞬く、動く
確認されているのは上記現象になる。
現在のようにショーケースに収められてからは、ある程度怪奇現象も落ち着いたようだ。
呪いの危険度
類似した呪い人形のアナベル、ジョリエット、ロバートなどは呪いによる死傷者や不幸が多数報告されている。
一方、マンディに関しては世界的に有名な他のドールと違い、明確な被害者の報告はされていない。
自分の存在を誇示はせど、凶悪な意思を振り撒くタイプの人形ではないようだ。
評価
映画としては劣化アナベルとしか呼びようがない。
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