【映画】プレッシャー/欝々でジメジメな海底監禁【ネタバレ:レビュー】

サスペンス

深海200mに閉じ込められた男たちを描くサスペンス映画、Pressureをレビュー及び評価、感想、解説。

スポンサーリンク

あらすじ

潜水艇により、深海のパイプライン溶接の仕事に向かった四人。
だが作業の途中、急激な揺れが潜水艇を襲った。ケーブルの基である、母船が激しく揺れているのだ。
曰くそれは、唐突な嵐だそうだ。

不穏な気配に無線連絡と取る彼らだが、しばしのやり取りのあと、ぷつりと無線は途絶えた。
拭えない不安の中で救助を待つ四人だったが、海上で待つ母船の残骸とクルーたちの死体が沈んできたことで状況は最悪の方向へと向かい……。

ネタバレ概略

ネタバレストーリー
  • 1.
    出航
    海賊で悪名高い、ソマリアの海底200mにあるパイプラインを溶接するため、四人の男達が潜水艇に乗り込む。
  • 2.
    作業開始
    新人を残した3人が溶接作業を行う。
  • 3.
    異変
    突如襲い来る、大規模な揺れ。ウィンチで接続された母船が揺られているために、潜水艇も同じく揺れているようだ。
    原因は、到来した嵐に違いない。
  • 4.
    浮上停止
    母船のカーセンに連絡を取り続ける一同。急ぎ急浮上する潜水艇だったが、150m地点で上昇が止まる。
    やがて急速に潜水艇は海中を引き回され、最後には急落下した。
  • 5.
    落下
    海底に叩きつけられた潜水艇。損害を調べるために外周を確認していたエンゲルは、海底で信じられないものを見ることになった。
  • 6.
    母船
    カーセン含む、乗組員の死体と船の残骸。そう、母船は沈没していたのだ。
  • 7.
    選択
    救助を待つか、ハッチを閉めて浮上に賭けるか。
    ソマリア海域ということから、救助のセンが薄いと言うエンゲル。
    一方、急浮上では身体がもたずに死ぬと主張するミッチ。
  • 8.
    誤算
    突如、艇内の酸素が薄くなる。
    原因は落下の衝撃で痛んだ外部取り付けの酸素ボンベであり、急激な二酸化炭素の飽和によって全員の体調が一変する。
    供給装置の再起動によって難は逃れたが、酸素残量に大幅な目測の狂いが生じた。
    残り生存時間、18時間から2時間へ。
  • 9.
    無線
    その時艇内に、訛りのある英語が聞こえた。
    発信者はジウシン号。同海域で漁業を営む中国船らしい。信号が途絶える寸前に潜水艇の座標を伝えたものの、救助が来るかは不明なままだ。
  • 10.
    確認
    潜水艇にこれ以上の損傷がないかを、ミッチとハーストが調べることに。
    上部に落ちてきたクレーンの一部をハーストが調べる途中、大型の部品が落下。ミッチの頭を打つことになった。
    昏倒するミッチ。
  • 11.
    震え
    急ぎミッチを運ぶように叫ぶエンゲルだったが、送気ホースがクレーンに挟まれたため動かせなかった。
    ならばホースを外すよう伝えるが、ハーストはひどい手の震えにより、細かな指先の作業が出来ない。
    危険な状態の寸前で、飛び込んだエンゲルにより救われるミッチ。
  • 12.
    単身
    三人が目を離した隙に、ハーストの姿が消える。彼は先の贖罪のつもりか、単身母船に積まれた酸素ボンベを捜索しに出ていったのだ。
    無謀な行動の果てに、彼は低体温症で海底に倒れる。
  • 13.
    遮断
    死にゆくハーストが使う酸素を止めるよう、エンゲルはミッチに言う。だが希望を捨てきれないミッチはそれを拒み、手を下せなかった。
    だが対立するふたりを背に、新人のジョーンズがそっと送気バルブを閉じる。
  • 14.
    冷気
    発熱体が故障する。これにより船内は海底の冷気に晒され、潜水時の温水を送ることも出来なくなる。
    ジョーンズは機転を利かせ、水タンクの外側を溶接バーナーで炙る。
  • 15.
    英海軍
    中国漁船が英海軍に連絡を入れてくれたことで、潜水艇に無線連絡が入る。
    おおよその座標を伝えたものの、捜索には数時間かかる見込みだという。
    酸素残量は間に合わない計算だ。
  • 16.
    希望
    エンゲルはパイプラインに併設された溶接室に、予備の酸素ボンベがあるという。
    しかし溶接を行った位置から潜水艇は大きく流されており、辿り着けるかも不明だ。
    エンゲルは失敗の許されない挑戦に挑む。
  • 17.
    途絶
    温水を送る溶接機のガスも切れ、低体温の中で見事にエンゲルは酸素ボンベを発見した。
    しかし送気ホースが僅かに届かないため、やむを得ずホースを外すことに。
    無線の途絶えたことでミッチは危険を察し、自らも潜水し、エンゲルの元へ向かう。
  • 18.
    仮死
    エンゲルと酸素ボンベが横たわるのを発見したミッチ。急ぎ艇に戻り蘇生を試みる。
    もう戻らないと思ったその時、奇跡的にエンゲルは生き返った。
  • 19.
    発信
    当座の酸素は稼げたが、未だ海軍の捜索は難航している。
    そこで位置送信用のビーコンを海上に向けて浮上させることで、捜索の範囲を絞る作戦を思い付く一同。
    この危険な任務にはミッチが挑む。
  • 20.
    クラゲ
    送気ホースの限界まで浮上し、ビーコンのスイッチを入れようとするミッチ。だが低体温のため、上手くスイッチが握れない。
    操作性のためにグローブを外したところ、周囲を大量のクラゲに囲まれていることに気付いた。
  • 21.
    帰らない
    手を刺されたことでパニックになったミッチは、ビーコンを手放してしまった。
    ホース可動域から離れていくビーコンを追い、ホースを外すミッチ。
    執念でスイッチを入れ、彼はそのまま二度と戻らなかった。
  • 22.
    浮上再開
    エンゲルは浮上しか生きる道が無いことをジョーンズに伝える。
    だが浮上からしばらく経ったところで、潜水艇は急速に停止した。
    原因は、母船と繋がれたままのワイヤーだった。
  • 23.
    ひとつ
    残された手段は潜水し、送気ホースから先を自力で泳ぐことだ。
    しかし残された潜水用具は残りひとつ。
    エンゲルは、ジョーンズにそれを譲った。
  • 24.
    救助
    死に物狂いで泳ぐジョーンズと、それを励まし続けるエンゲル。
    やがて彼は海面に辿り着き、海軍に保護される。
    ひとり残った老いたダイバーは、そっと深い海の中を泳いだ。

海っておっかない

深海で溶接作業を行う男たち

純粋に海が怖くなる映画。
主に酸素との闘いがメインで描かれるが、それ以外にも彼らを追い詰めるものは多岐に渡る。

クラゲ、低温、圧力変化。
深海ではいかに人間が無力で、生きるに少しも適していないかがよく分かる。

その中でも、やはり酸素のくだりだ。見ているこっちまで息苦しくなるようで、ちょっとした眩暈すらもおぼえる。
当初18時間もつ予定だった酸素が、急激に放出されたあの瞬間。
ボンベ残量を示すメーターはイコールで命の猶予時間でもあり、死期の可視化とはかくも残酷なものなのか。
とにかく全編、苦しみに溢れた映像体験だ。共感性の強い人は、溺死注意。

海の男に感謝

海の男とひと口に言っても、漁師や軍人、技術者など様々だ。
彼らは必要だからこそ海に出て、危険な役割を果たしている。誰も好き好んで自分の命を危機に晒したくはないだろう(一部例外はあるが)

海底パイプラインの溶接など、失礼ながら本作を鑑賞するまで想像もしない職業だった。
現実でこうした危険な職業に従事されている方々が、陰ながら我々のライフラインを支えてくれているという事実。
感謝の極みだ。

内面との対峙

笑顔を見せる女性の過去
  • 地下室
  • 洞穴
  • 宇宙



この手の隔絶空間で、人は自分の過去や未来と対峙する。

多くのサスペンスで用いられる技法を本作でも同じく踏襲している。
四人は各々なんらかの背景を抱えており、深海でそれらと対峙を迫られる。

アルコール依存症、亡き恋人の面影、父子の関係。

これらは恣意的でなく、きっちり練り込まれた人物形成を窺わせている。
単純なスリラー作品に落とし込まないためのギミックに、しっかりと応えた形になるだろう。

読ませてハズす

ナイフを持つジョーンズ

冒頭の事故場面から、密室系作品に慣れ親しんだ方にはある結末が予想されたのではないだろうか?
それはすなわち、「人間同士の争い」だ。

吹雪の山荘や迷いの洞穴、汚染を防ぐシェルターに宇宙ステーション。
あらゆる隔絶空間の非常時において、いままでありふれていたリソースが急激に価値を変えるのは密室系の真骨頂。
本作でいうところのそれは、酸素になる。

多人数で分け合うリソースも、ひとりになれば生存確率は大幅に上がる。
大半の密室系でクライマックスシーンには人間同士の諍いが描かれ、結局幸福な未来を掴む者はごく僅かになる。

作中では明らかに出立前からそうした空気感を匂わせており、最終局面はそれを一気に顕現させるかと思われた。


だが本作の素晴らしい面として、敢えてその道を絶ったことが挙がる。
我々完全に予期していた未来は否定され、自己犠牲によって惨劇は回避された。
人命の尊さや慈愛というカテゴリに寄りかからず、これをあくまで一個人の個性で導いたラスト。
無駄に壮大さや感動を演出せず、淡々とこれを描いたのも強みになった。

カタルシスは皆無

冷たい海の底に倒れる男

延々真っ暗な海底で、恐怖や焦りに怯えながらひとりずつ死んでいく物語。
爽快感や興奮、喜びなどといった感情とは無縁だ。
結末を迎えてなおそれは変わらず、ただただ無情な冷たい海に畏怖を感じるだけの映画になる。

ストレス発散には役立たず、逆に息苦しさを感じるだろう。もっと言えば暗い気持ちになることは免れず、沈んだ感情に嫌気をおぼえるかもしれない。
だが不思議なもので、こうした「暗い気持ちになる作品」は一定の需要がある。
人生において全くプラスに作用しないと思われる当該作品でも、なぜだか好まれ、求められ、愛される。

視聴後に欝々とした気分になることが約束される本作。
しかし奇妙に、観て後悔するような映画でないこともまた確かだ。

送気バルブ

酸素送気バルブを閉じる瞬間

酸素ボンベの可視化と同様に、送気バルブもまた命を可視化した。
船外活動を行う船員が生還の難しい場合、このバルブを閉じなければならないのだ。

船内の空気を送り続けるこのバルブは、船外活動の生命線であると同時に船内を危機に陥れる諸刃の剣でもある。
よって適切な判断でこれは閉められるべきで、また閉じなければ全員が死ぬことになる。

だがこれが閉じられた瞬間、その先に居る者を間接的に殺すことも意味する。
まだ希望があるかもしれない命を、殺さなくてはならないその瞬間。

この無機質なバルブひとつに、数十年という未来を消す力があるという生命の可視化演出。
かなり胃に重たいワンショットだ。

評価

感受性が強過ぎると危ないぐらい、欝々とした海底ムービー



時に幻想的で、時に辛辣な海の物語。かなりオススメの一作と呼べる。

★★★★☆
四つ星の優良作。
Pressure / プレッシャー(字幕版)
Pressure / プレッシャー(字幕版)

コメント