エイリアンの根源を探るSFホラー映画、Prometheusをレビュー及び評価、感想、解説 、考察。
あらすじ
宇宙船プロメテウス号。
人類の創造主”エンジニア”を探す極秘ミッションに、17名の乗組員が一路、惑星LV-223を目指す。
しかし到着した星は、彼らの想像した楽園ではなかった。
埋め尽くす創造主の死体と、未知の兵器。
やがて恐るべきウィルス汚染と怪物の魔手はクルーたちにも迫り……。
ネタバレ概略
- 1.創造主人類の起源を探るショウとホロウェイは、とある古代の壁画にそのヒントを見出す。
遥か遠い星空を指したその絵にこそ、まだ見ぬ人類の創造主の所在が記されていたのだ。 - 2.プロメテウス号ウェイランド社は莫大な予算を投じ、両博士の研究をサポートすることになった。
選び抜かれた精鋭を揃えたプロメテウス号は、始祖”エンジニア”への謁見の旅に出た。 - 3.LV-223惑星LV-223に到達した一同。大気には酸素が含まれず、気候も厳しい土地である。
彼らは岩山の中をくり抜いて作られた通路を探索していく。 - 4.始祖驚くことにそこには、人型でありながら明らかに人間とは異なった生物が存在した。
ただしそのエンジニアは死亡しており、首は真っ二つに千切れ、見るも無残な状態だった。
推定、二千年前の死体らしい。 - 5.起動岩山と思いながら進んでいた通路は、実は巨大な建造物だった。
同行していたウェイランド社のアンドロイドであるデヴィッドは操作パネルを見つけ出すと、閉ざされていたドアを開くことに成功した。 - 6.壺一同が目にしたのは、無数の壺のような物体だ。保管状態を懸念したショウ博士は手を触れないように念を押す。
だがそこから滲み出した黒い液体に、小さな芋虫が浸かってしまったことには誰も気付かない。 - 7.嵐大規模な嵐が到来すると発報するプロメテウス号。一同はひとまず調査を中断し、船に戻ることにした。
しかし、エンジニアを不気味に感じて早々に母船へ帰還したはずのミルヴァーンとファイフィールドは道に迷い、嵐の前に戻ることが出来なかった。 - 8.密輸撤収前に、怪しげな壺をひとつ持ち帰っていたデヴィッド。
ショウ博士らの思惑とかけ離れた行動を取る彼だったが、誰もそれには気付かなかった。 - 9.一致遺跡から持ち帰ったエンジニアの頭部を分析する一同。それは確かに、人間と同じDNA組成を持つ生物だった。
しかし電流負荷テストで操作を誤ったため、創造主の頭部は粉々に吹き飛んでしまう。 - 10.混入壺の中身を取り出したデヴィッド。粒状の半液体を抜き取ると、それをホロウェイの酒に混ぜて飲ませた。
- 11.遭難遺跡内で嵐が過ぎ去るのを待つミルヴァーンたちだったが、大量のエンジニアの死体を発見する。ここで何か、良からぬことが起きたらしい。
彼らは壺の間に足を踏み入れてしまう。 - 12.変異壺から滲んだ黒い液体に触れた芋虫は、蛇ほどのサイズまで成長していた。
ミルヴァーンはその怪物に腕をへし折られ、慌てたファイフィールドは巻き付いた身体をナイフで斬るも、噴出した酸性の体液で焼かれ、自身も黒い液体に飛び込んでしまう。
怪物はやがてミルヴァーンの防護服の隙間から侵入し、口内へ飛び込んで彼を殺した。 - 13.再調査嵐の収まったタイミングで再調査へ乗り出す一同。そこで死亡したミルヴァーンを発見する。
一方でデヴィッドは単独行動を取り、建造物が宇宙船であることを突き止め、更には長期睡眠中で未だ生存しているエンジニアを発見する。 - 14.不調酒に壺の中身を飲まされたホロウェイは、見るからに不調になっていく。
未知の病原菌の拡大を恐れたヴィッカーズは、彼の母船への帰還を拒否し、火炎放射器で焼き殺した。 - 15.妊娠恋人が焼死したことでショックを受けたショウ博士は、検査を受けることに。そこでデヴィッドから妊娠初期状態であると告げられる。
不妊症であるはずの自分が妊娠している事実に驚愕するも、それが人外の化け物であることを知らされた。
彼女は未知のウィルスに感染したホロウェイと性交したため、その僅か数時間後に胎児が形成されたということだった。 - 16.処置地球までコールドスリープしていれば成長は止められるため、デヴィッドは彼女に長期睡眠を勧める。
しかし不気味な異物を恐れた彼女は、自動外科手術用のマシンでそれを摘出した。 - 17.胎児腹から飛び出したのは、およそ人間の欠片も感じないような化け物だった。
彼女は密閉したマシンにそれを閉じ込め、その場を飛び出す。 - 18.同乗そこでショウ博士が見たのは、寿命で亡くなったと聞いていたウェイランド社長の姿だった。
ウェイランドは尽きかけた己の寿命を永遠のものとするため、創造主に命を乞いにLV-223へ来たのだった。 - 19.帰還嵐を境に行方の不明になっていたファイフィールドが帰還する。
しかし彼は黒い液体の影響で既に人間ではなくなっており、奇怪な動きで乗組員たちを次々に殺害していく。
先の火炎放射器で焼き殺して難を逃れるも、ここが人類の楽園でないことはもう誰もが知っていた。 - 20.謁見遂にエンジニアへ、人類は謁見を果たす。
長期睡眠を解いたデヴィッドはウェイランドの言葉を訳し、創造主の瞳を見つめた。
しかしエンジニアはアンドロイドの首を引きちぎると、その場にいた人類を皆殺しにした。 - 21.天誅エンジニアは宇宙船を起動すると、地球への航路を準備し始める。
彼らが侵略を目論んでいたことに気付いたデヴィッドは、首だけになりながらもそれを乗組員に伝える。 - 22.体当たり船長のヤネックは玉砕特攻でエンジニアの船を叩き落とすことを決意。
衝突寸前に、ヴィッカーズだけが脱出した。 - 23.横転LV-223の大地に生き残ったショウ博士とヴィッカーズに、墜落したエンジニアの船が倒れ掛かる。
逃げ切れず、ヴィッカーズは押し潰されて死亡した。 - 24.我が子怒りに震えるエンジニアは、最後に生き残ったショウ博士を自らの手で殺害しようと追い詰める。
そこで閉じ込めていた例の胎児が、とてつもない巨躯の化け物へと成長していたことに気が付くショウ博士。
手術室の前に誘導したエンジニアを、怪物の我が子に襲わせた。 - 25.母星へ首の千切れたアンドロイドを回収するショウ博士。
彼女は地球には戻らず、エンジニアの母星へと渡り、なぜ子である人類の地球を滅ぼそうとするのかを問いただすことを決意。
無事だったエンジニアの船を奪い取り、デヴィッドと共に未知の惑星へと向かった。 - 26.誕生ショウ博士の胎内から生まれた生物に寄生されたエンジニア。
彼の死体の腹を食い破り、原初のエイリアンがそこに誕生したのだった。
前提としてシリーズは必見

プロメテウス単体としての出来映えは、SFホラーというジャンルの中ではそこそこのレベルにとどまる。
この作品を最大限に楽しむ前提としては、エイリアンシリーズを最低でも一作は見ておかねばならないのだ。
特に作中で奇形生物に対する解説は一切為されず、その特性を前知識として持っていない者には多少不満の残る展開になるだろう。
裏を返せばシリーズファンにとっては、エイリアンの出自を辿る旅として、これでもかというほど琴線に触れる部分を詰め込んでいる。
画像の白い蛇のような生物は、壺のような物体から染み出した黒い液体に変異させられたワームの怪物だ。
この壺はのちのエイリアン・エッグの元になったと考えられる。
作中の設定では、ブラックタールという細菌兵器として名付けられている。
白い生物は口腔から侵入を試み、体液には強い酸性を含む。
この特性も、のちのフェイス・ハガーと酷似していることが見てとれるだろう。
ハンマースピードという名前を設定上で与えられている。
このようにエイリアンシリーズを視聴済みの者でないと、過去の作品から共通点を見出すことは出来ない。
最高のパフォーマンスで視聴するには、全シリーズの視聴が求められるだろう。
アンドロイド

かなり意外なことに、プロメテウスではアンドロイドのデヴィッドがキーマンとなる。
およそエイリアンの出自に、人間の作り出したロボットが関与するとは誰もが思わなかっただろう。
リドリー・スコットは彼の中に芽生える様々な感情を描いた。
- 神と人間
- 親と子
- 創造主と被創造物
この心模様を読み解くことこそが、エイリアン誕生の秘密を探る最大のヒントだ。
エイリアンシリーズがパニックホラーとしての要素が強かったのに反して、デヴィッドの登場はそれを覆した。
恐怖や緊迫よりも、謎やその解明に強くスポットライトを当てたのだ。
その中では、人類誕生の秘話やその創造主らの誕生自体にもメスを入れようとしている。
ダーウィン論者や宗教関係者に大反発を受けそうな内容だが、前進的な思考を持つSFやオカルトファンにはたまらない仕様だ。
デヴィッドの裏切りと、その思惑。
次作まで全貌は明らかにならないが、今作中にもその断片は散りばめられている。
神と会ったらば

神との謁見は人類の悲願だ。
宗教的な意味でも科学的な意味でも、多くの人類がこれを求めて祈りや研究を捧げる。
作中では実際に神と人間の邂逅が果たされる。
創造主エンジニアに対して、老いた資産家ウェイランドは永遠の命を乞うた。
肯定的な存在として崇められる神に対し、一方で悲観的な意見を持つ者も世界中に居る。
- 彼は我々を愛していない
- 苦難と絶望を与え、苦しむ姿を見て喜んでいる
- 人間は憎まれている
- この世は地獄以外の何物でもない
神を信じて己を捧げた者にこそ、こうした心変わりは多い。
無条件の愛など存在しないのだ、と。
作中で、創造主や親といった上位の存在は概ねこうした姿で描かれる。
例外としてショウ博士の父だけが優しい男であったように見えるものの、それすらも切り取った記憶の断片でしかない。
ウェイランド、ショウ、エンジニア。
彼らはみな、自分が生んだ創造物を愛さない。
憎しみ、軽んじ、侮る。
蔑視された被創造物が、黙って膝を折る日々がいつまでも続くと思っている。
親と子の殺し合い。
それこそが本作のテーマだ。
評価
過去のエイリアンを視聴済みという前提なら、必見といっていい一作になる。
次作エイリアン:コヴェナントはコチラ。
以下、考察及びネタバレ注意。
エンジニアの謎
次作、エイリアン:コヴェナントの内容を含まない段階でエンジニアの謎を紐解こう。
冒頭で何をしていた?

奇妙な入れ物の黒い水を飲み、激流の中へ崩れ去ったエンジニア。
結論から言うとこのシーンでは、生命の起源を明確に示している。
エンジニアの身体は崩れ去り、水の中に新たな生命の基が放出された。
つまり彼は大いなる神として、その後溢れる生命のための礎、生贄になった。
去りゆく宇宙船からも、彼が命を散らすことを予見していたのが見てとれるだろう。
どの星の出来事か?
この水の豊かな惑星がどの星であったかは明確に示されない。
ただし作中の舞台である、LV-223でないことは確かだ。上空の宇宙船は円盤型である。
この円盤型というのがポイントで、我々が現実でも目撃しているとされるUFOの形を模している。
しかし作中で明らかになるエンジニアの宇宙船は、もっと奇妙な欠けたドーナツ型だ。
これを単純な型式の違いと捉えれば話は終わりだ。冒頭の場面がどの星であったかは判明しない。
しかし角度を変えれば、円盤型の宇宙船が旧式、つまりは大幅な過去の出来事でないかと推測出来る。
なのでこの段の結論としては、
この説が強い。
エンジニアが我々の基となるDNAを作り出したのは、謎の液体で自らを犠牲にした技術によってだった、という推論になるだろう。
なぜウェイランドたちを皆殺しにした?

長期睡眠から目覚めた最後のエンジニアは、その場の全員を殺そうとした。
この場面で会話が成立したかどうかは不明だった。
しかし英語はまだしも、デヴィッドの2年間に及ぶ学習で、恐らく彼の言葉をエンジニアは理解したと思われる。
ではなぜ、殺害を選んだのか?
本作の大きな闇として、親殺し子殺しの一面が挙がる。
エンジニアが被創造物に対して”処分”を選ぶことに、何の躊躇いも無かった。
この場面で全く脅威でない人類を殺傷した背景にはこうした考えがあると思われる。
だが人類側もこの仕打ちを非難など出来ない。
なぜなら同じことを、既にデヴィッドに課しているからだ。
彼は無償の奉仕を強いられる一方で、気に入らないそぶりを見せればいつでも処分すると恫喝され続けた。
このように傲慢な親=神と、それに反骨する子=被創造物の図式は随所に見られる。
そのツールとして用いられるのが、エイリアンやそれにまつわる兵器ということだ。
なぜ地球を滅ぼすのか?

プロメテウスの時点でこれは示されない。
しかし推察するに、人間が彼らの”望むような進化”を遂げなかったという可能性は高い。
実際に人間は宇宙航行によって神=エンジニアに届き得る力を手に入れており、ともすれば彼らの存在を脅かすことも考えられる。
ならば作り出した者として、滅ぼす権利も同時に有する。
恐らくエンジニアは、宇宙を飛び回っては良好な環境下に自身を供物として捧げている。
広い宇宙のどこかでは、彼らの望むような進化をした人類に似た生物が居るのだろう。
地球の人間は、失敗作だった。
だから殺す。
デヴィッドの謎
ウェイランドが作り出したアンドロイド、デヴィッドの造反。
このキーマンを解説しよう。
隠れて通信していた場面は?

これは睡眠中のウェイランドとの会話である。
この中で、
という言葉は、ブラックタールから染み出した有機物を指す。
主に完熟堆肥、中熟堆肥、未熟堆肥と分類される有機物の特性を用いた発言から、この液体が生物に作用する肥やしのような役割をすることが判明する。
これにより作中のブラックタールが、完熟或いは中熟すると効能が薄まることが示唆される。
またウェイランドとデヴィッドはLV-223に到着する前からこの事実を知っていたことになる。
つまりこれが、後述する秘密のミッションに関することと考えられるだろう。
なぜホロウェイに細菌を飲ませた?

危険な液体を酒に飲ませ、細菌に感染させたデヴィッド。
この段階である程度ブラックタールの特性を掴んでいたとはいえ、未だ効能は未知数だった。
そこで人体に直接取り入れることでどのような作用を及ぼすか、実験を行ったと考えるのが妥当だろう。
またこの段階で、デヴィッドはウェイランドに絶対服従の立場である。
この言葉と、「社長が死ねば自由になれる」という前言から明らかだ。
つまりホロウェイにブラックタールの中身を飲ませるよう指示したのは、ウェイランド自身にほかならない。
ではなぜ、そのような人体実験を行ったのか?
これも秘密のミッションに関わる。
秘密のミッションとは?

ミッションの最終目標は無論、ウェイランドが”不死”を得ることだ。
そのために一兆ドルもの大金をつぎ込み、8億キロ離れた星までやって来た。
では具体的にどのように、不死を買おうと思ったのか。
以下のタイムラインでウェイランドの思惑を示す。
- 1.LV-223何かしらの方法を用い、LV-223にブラックタールが存在することを発見する。
その活用次第で、死期を遠ざける可能性を見出した。 - 2.謁見自身の死を逃れる術を求め、LV-223へ旅立つ。
賭けの部分は大きいものの、長期睡眠へ入らざるを得ない状況には変わりない。
全てをエンジニアという絶対神へ託したことになる。 - 3.発見ブラックタールをデヴィッドが発見。
取り扱い方法や効果を確かめるため、ホロウェイに飲ませることにした。 - 4.失敗ホロウェイは細菌に侵され死亡する。これにより、経口摂取が危険であると発覚。
だがエンジニアの生き残りをデヴィッドが確かめたことで状況は一転する。 - 5.懇願エンジニアに謁見する。
ブラックタールの取り扱いや不死について尋ねたと思われるが、怒りを買ったために制裁を受けた。
以上がウェイランドの練った計画と思われる。
終わりに
まだまだこの時点で謎は多い。
次作、エイリアン:コヴェナントでいくつかの疑問は氷解するだろう。
次作エイリアン:コヴェナントはコチラ。
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