実在する呪い人形ロバートをモデルにしたホラー映画、ROBERTをレビュー及び評価、感想、解説。
あらすじ
使用人アガサは、年齢性の痴呆を理由に解雇されることとなった。
彼女は去り際に不気味な人形をその家の子供に託す。そして元雇用主へ向けて、こう言ったのだ。
「思い知るがいい」
やがて家の中で次々に不幸な出来事が頻発する。
母親のジェンはやがて、このロバートと名付けられた人形にその原因があると気付き……。
ネタバレ概略
- 1.退職ジェン一家の家で家政婦を生業とするアガサは、年齢による物忘れが激しくなりつつあった。
そこで一家は彼女に暇を出すのだが、それを逆恨みした捨て台詞と、不気味な人形を残してアガサは去っていく。 - 2.異変一家の息子、ジーンは、たびたびこの不気味なロバートと名付けられた人形と会話するようになった。年齢的なイマジナリーフレンドと思っていた両親だが、時を同じく家中で奇妙な出来事が起こり始める。
- 3.最初の被害者生業の絵や、夜間のキッチンでの悪戯。全てを息子の仕業と決めつけたジェンは次第に精神摩耗していく。
そこで新たに雇った若い家政婦のマーサに家事を任せることにした。
だが初日にして彼女は、誰も居ない家の中で階段から転落して大怪我を負うことになる。 - 4.マーシー殺害気分を変えるため、夫妻はディナーに出かけることにした。留守中の子守を近所の若者マーシーに任せた彼らだったが、帰宅すると彼女の姿は無い。
頼みを放棄されたことに腹を立てて彼女の家に電話を入れると、なんとマーシーは自宅で刺傷により殺害されていたのだった。 - 5.尋問一連の騒動を起こしたのはロバート人形だという事実を語るジーン。既に疑う余地もなかったジェンは、人形を詰問した。しかしその姿を見た夫は、病気の再発を疑い始める。
ジェンは庭の小屋に人形を閉じ込め、真相を知るはずのアガサを訪ねることとした。 - 6.死去アガサ宅は留守のようで、ジェンは手段も構わず家宅侵入を試みる。しかし隣人に見咎められ事情を話したところ、なんとアガサは数日前に死んでいたのだった。
ジェンは彼女の家を捜索し、以前に家政婦として仕えていた家の情報を掴む。 - 7.魔術アガサの勤めていた家の夫妻は、人形に憑りついた悪魔の存在をジェンに話した。アガサは黒魔術に傾倒していたため、呪術の行使としてその人形を譲り受けていたのだった。
ロバートを破壊しない限り、悪夢が終わらないと警告を受け取るジェン。 - 8.決着急ぎ自宅に戻るジェン。すると小屋の鍵は破られており、頭を殴打された夫の昏睡する姿があった。
息子を守るためにジェンはロバートに立ち向かう。そして目覚めた夫と共に、ジェンは見事に人形を撃破した。 - 9.憑依全てが終わったかに見えたその日。ジーンは刃物にて両親を惨殺する。
既に人形からの憑依は終わっており、ジーンの中には悪魔が宿っていたのだった。
ロバート人形

白濁した眼や、不釣り合いに艶のある髪質。にまりと笑んだ唇もあいまって、なかなかに不気味な印象を与える。
アナベルを筆頭に呪い人形を用いたホラーではここが最も重要なポイントになる。
いかに多彩な演出であろうとも、人形自体が恐ろしさを容姿にたたえていなければそれらは半減するのだから。
本作ロバートは、その点で合格と思える。
不気味な顔立ちと、妙に長い首、なで肩。
寝食を共にするには、やや厳しいビジュアルを醸し出している。
演出面

※蛇足の項。
ロバートの攻撃方法は全て物理特化であり、その脳筋ぶりを見せつける。
階段突き落とし、ナイフ、バット。
ありとあらゆる物理攻撃で対象者をぶっ叩くのだ。
しかしよくよく考えてみると、これはおかしい。
自然界の法則では、
この図式は覆らない。
虎はなにゆえ強いと思う?とは言い得て妙。
凶器を持ったとはいえこの大きさのドールに、大人の人間が負ける道理が無いのだ。
作中では不自然なほど、誰もが無防備に泣き叫び、ロバートに命を奪われる。
だがそこに霊的パワーの介入が示唆されることはない。
つまり彼らは純粋な肉体同士のぶつかり合いでもって、遥かに小さな存在に敗北を喫したことになる。
唯一、体格差を覆しうるのは武道の心得だろう。
ナイフなどの凶器を用いた武術は主に、クラヴ・マガやシラット、システマなどの軍隊格闘技に含まれる。
すなわちロバートは、何らかの軍隊格闘技経験者であった可能性が高い。
ここでの結論として、
もうチャッキーの時代は終わっている。
スピード感の欠如

ホラー映画での展開のテンプレとして、
↓
↓
↓
このような構成となることが多い。
本作もご多聞にもれずこのテンプレを採用している。そこについては言及しないが、問題はそのスピードである。
視聴者としては霊現象が起きることも、その原因もおおよそ視聴前に既知である。
それはパッケージや前情報で予め知らされる。
そうした前提を持って視聴し始める我々にとって、このプロセスは基本的に余分な手順と呼ぶほかない。
見たいのは恐ろしいホラーパートであって、冗長な家庭ドラマや疑心暗鬼の人間関係ではないのだ。
だが単純に恐怖映像を垂れ流せば、「恐怖映像○○連発!」のフェイクビデオと相違無くなる。
よってある程度のストーリーという味付けを許容する度量が求められることも必然ではある。
だがスピードは必要だ。
登場人物がのろのろと後半まで霊障を認知せず、疲れやストレスといった精神的な病に関連付ける行為を見せられるのは苦痛でしかない。
鈍重なストーリー運びと、遅々として進まない悪霊への認知。
客観的に作品を見直して、苛立ちや不満を感じなかったとしたら大したものだ。
ヒステリック・マム

- 霊現象は全て息子のイタズラ
- 事あるごとに大声とヒス
- 言葉が単純に汚い
ジェンを観続けるのがツラい。
(早くロバートがどうにかしてくれないかな……)
心の声を押し殺しつつ、獰猛なアングリー・マムの七転八倒を見守る。
特に気になるのが言葉の汚さで、冒頭からラストまでこれは改まることがない。
- Fxxk
- Fxxkin’ ~~
- Sxxt!
十代の若者であるまいし、いい年の大人がFワードを連発するのは痛々しい以外の感想が無い。
この他にも妙に若ぶった場面が多々見られ、少々気味が悪い。
スージー・フランシスという女優には悪いが、これは彼女の地が出ているように思えてならない。
年齢相応の演技というのは大事だ。
ラストシーンだけグッド

この生気を失った眼、揺れない体幹、その視線の強弱。
驚くことに、ラストシーンにあたって最大の恐怖を演出したのはジーンだった。
彼は作中においてほとんど蔑ろの存在である。しきりにロバートの人格を示唆しては、その度にイマジナリーフレンドを作り出した憐れな子供として扱われる。
本作が最後に演出したこの場面によって、彼の真価が見えた。
つまりもっとジーンを主軸に据えることで、深みと味のある、劣化アナベルと呼ばれないだけのホラーを展開し得る可能性があったのだ。
こんなに惜しい逸材を逃したことに、制作は気付いているだろうか。
いや恐らく、少しも気付いていないだろう。
実在呪い人形:ロバート

さて映画の方はさんざんだったが、実際のロバートは話だけ聞くとメチャクチャ怖い。
ここでは彼の逸話をいくつか紹介していこう。
出自
Steiff社のRichard Steiffという人形師によって、最初のテディベア作品として勢作された。
(腕に抱いているクマとセットであったと思われる)
Steiff社は当初から、ロバート人形を売り物の製品としては想定していなかった。
単にショーウィンドゥに飾る、マネキンとして作り出したのである。
ここで謎として、飾り物であったはずのこのドールは、何故か売却された。
この部分は未だ不明である。
一説では一家のメイドがヴードゥーの呪いに人形を扱うために購入し、魔術の触媒に選ばれたのがその家の少年であったという。
或いは現実的な説として、一家の祖父が孫のために買い与えたという。
ともかくロバート人形は今から100年ほど前に、ある少年の手に渡ったことは確かである。
そして少年はたいそうこの人形を気に入り、どこへ行くにも手放さなかったという。
怪現象
報告されている現象は以下になる。
- 自力で動き回る
- 眼が動き、対象を追いかける
- 消失と出現
- クスクスと笑う
- 侮辱した者に報復を加える
また彼を最も有名にした出来事が、「写真の許可事件」だろう。
彼の写真を撮る時は、同意を得なければならない。
写真を撮ることを許可された場合、こくりと頷くのだ。
仮に無許可で写真を撮った場合、彼の怒りによって不幸が降りかかる。
ショーケースに飾られた手紙の数々は、全て無許可で撮影した者が赦しを乞う内容だ。
画像の手紙の意味がご理解頂けるだろう。
また歴代の持ち主で、彼にぞんざいな扱いをした者はことごとく死亡しているとも噂されている。
このように、実害を伴う恐ろしさが垣間見える。
現在
フロリダ州モンタナ郡、キーウェストにあるイースト・マーテロー博物館に寄贈されている。
本物が怖すぎる
映画よりもこうした逸話を聞く方が何倍も怖い。
題材は最高だったが、技術不足で潰したことになるだろう。
評価
ホラー映画としての質は期待しないでおこう。
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