【映画】サイレントヒル/ラストシーンとクリーチャーを解明【考察あり:ネタバレ注意】

ホラー

人気ゲームを実写化したホラー映画、SILENT HILLをレビュー及び 評価、感想、解説、考察。

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あらすじ

ローズは娘シャロンの夢遊病に悩まされている。彼女は夜半に家を抜け出すと、うわ言を呟きながら断崖のへりを歩くのだ。もはや年頃の病の域を超えたそれに危険を感じたローズは、娘の言葉をヒントにある街を訪れることに決める。

その街は名を、サイレントヒルという。かつての賑わいは微塵も見えず、今はひと気の無いゴーストタウンと化した霧の街を訪れる母娘。

だが到着して早々にシャロンは姿を消してしまい、娘の足取りを求めてローズは奇怪な街を捜索し始めるのだが……。

サイレントヒル

サイレントヒルの看板

霧に包まれ、灰の降る街。外界とは遮断されており、施錠された鉄柵で囲まれている。
作中では明言されないが、真のサイレントヒルへと足を踏み入れるには、街から呼ばれた者でなれけば許されないという一面を持つ。

今回で言うと、シャロン、その母ローズ、そして彼女らに縁を持ったベネット巡査である。
彼女たちを追ってきた、父クリスとその付添いであるグッチ警部の描かれるパートではコントラストや霧の有無で異なることからも、同軸別次元の街であることが窺えるだろう。

この街は一度踏み込めば易々と出ていくことは許されず、各々の為すべきことを強要される。
無残に死ぬか、或いは永遠に囚われるか。概ねの人間は、この狂った街で無事ではいられない。

まるで生きているかのようなゴーストタウン。街が丸ごと狂気のアトラクションである原作の趣きを、見事に再現出来ていると言えるだろう。CGを駆使した表現力は抜群に長けていた。

裏世界

裏世界への突入

霧に包まれ、白を基調とした色合いで構成されるサイレントヒルだが、サイレンの音と共に訪れる血と錆の世界に注目しよう。
これは主に「裏世界」「裏返った」「裏返り」と呼ばれ、凶暴で活性化した化け物たちの跋扈する世界となる。

基本的に表世界でもいくらかのクリーチャーは存在しているのだが、裏世界でのそれは比べ物にならないほど獰猛で多勢になる。

恐怖演出

迫り来る怪物

目玉となる敵クリーチャーの造形は、どれも奇怪で嫌悪感を漂わせる。
非常に演技力やメイク技術に長けており、その不気味さを如何なく発揮するだろう。
CGで作られた化け物もそこそこの出来映えは見せており、それほど浮いた仕様にはなっていない。


一方でゲームのサイレンヒルでは圧倒的な暗さと先の見えない闇を用いて恐怖へのイマジネーションを作用させていた部分と比べ、本作ではそこまで闇へのフォーカスは見られない。

これは視認性との両立が困難であったためだろうと思う。
概ねの部分で灯光類により視界は効くことになり、根源的恐怖を煽る手法にはならなかった。


また恐怖シーン自体もクリーチャーの存在感に比べた時に、それほどのインパクトが見られない。どちらかと言えば原作の再現性やストーリーの謎解きへ重点を置いている部分が見え、ホラー映画単体として見た時の恐怖度で言えば下の方に位置するだろう。

独自性

聖堂に広がる裏世界

終盤以降の展開は、エンディングまで含めて本家とはかなり異なるものになる。
原作の完全再現を求めるユーザーには残念だろうが、しかしこれはこれで映画としてはよくまとまっており、尚且つ世界観を破壊するようなことにもなってはいない。
初期設定こそは似通っているものの、アナザーストーリーとして捉えるのがベターであろう。

ラストシーンでは圧巻となる、暴虐と殺意の絶唱が奏でられる。いっそ清々しいほどの凄惨さに、胸がすくような思いを抱いた。
救われる者も、結末もまるで異なるサイレントヒル。シリーズファンならば見逃す手はない。

評価

ホラー映画としては凡作。ゲーム再現作としては良質な部類。



雰囲気づくりや再現性には富んだ一作だった。
続編には、「サイレントヒル:リベレーション」がリリースされている。

★★★☆☆
三ツ星の良作。
サイレントヒル(字幕版)
サイレントヒル(字幕版)




以下、考察及びネタバレ注意。







ラストシーン

霧の世界で生きていく母娘

ローズとシャロンは、再びクリスに出会うことは出来なかった。
これは何故なのか。

同化

アレッサ(本体)とアレッサ(死神)による虐殺の最中、目を瞑って身を寄せ合うローズ母娘。ここでふいに近付いたアレッサ(死神)により、シャロンとアレッサたちの同化が行われたことは随所で示唆される。

目つきの変化
車内での指しゃぶり
ダリアへの冷たい目線



そもそも元を正せばシャロンはアレッサの魂を切り分けた分身であり、取り込まれたというよりは元の鞘へ戻ったという表現の方が正しい。
つまりローズは初めから存在しない娘を探し回っており、すなわちアレッサの復讐心のためだけにサイレントヒルへ呼び込まれたと考えられる。

三つの世界

作中では三つの世界が並行して存在する。

現実世界

 

人間の住む場所

霧の世界

 

サイレントヒル

裏世界

 

化け物の住む世界



同軸でも交わることのない平行世界を意味しており、自宅で同じ位置に居るクリスが母娘と出会えないのはこのためである。
基本的に人間は現実世界でしか生きられず、また化け物も大半は裏世界でしか居られない。その間を揺蕩う境界線のような役目を果たすのが、霧の街なのであろう。

しかしローズらは車でサイレントヒルを既に脱出している。何故遠く離れた自宅でも、異世界を彷徨うことになるのか。

これは、

”サイレントヒル”は固有の地名だけを指すものではない。



このような推測が立つ。

どの座標にも等しく霧の街や裏世界は存在し、そこから抜け出すことは容易でない。
長く霧の街や裏世界に滞在したローズは、現実世界との縁を薄くしてしまったのだろう。
サイレントヒルとは現実からひとつ隔てた世界を指す言葉であり、かつての地名としての働きは失われているということになる。


またもう一つの仮説としては、「脱出したのは幻覚であり、実際には未だサイレントヒルからローズは抜け出せていない」というものも考えられる。
しかしこのケースだと、クリスが母娘の気配を感じる箇所に齟齬が生まれる。

母を求める娘

復讐を果たし、分身のシャロンを吸収したアレッサ。だが彼女の本体は作中で描かれたように、裏世界でしか存在出来ない。その分身である死神もまた、霧の街と裏世界にのみ居場所があり、現実には足を踏み入れることが出来ていない。

ダリアに冷たい目を向けたアレッサ。このことから彼女は、自分を守れなかった実の母親を見切り、新たな母=神である、ローズを選んだ。

しかし現実では存在出来ないアレッサは、必然的に霧の街へとどまることになる。ローズもまた全てを知った上で、受け入れる他に道はないだろう。

エビ反りのクリーチャー

触れたものを穢れさせる能力

共用トイレ個室に縛り付けられていたクリーチャー。裏世界で活動を始め、その容姿と舌の動きが気味の悪い化け物だ。
彼も元は人間であり、学校の清掃員をしていたコリンという男だ。彼はアレッサの見せたフラッシュバックに一瞬登場し、どうやら彼女が魔女扱いされているのをいいことに、性的暴行を働いていたという推測がされる。

このクリーチャーの特徴として、手で触れた箇所が次々に穢れていくことだ。これはアレッサのイメージに強く起因しており、彼に触れられるたびに穢れたという過去を思い起こさせる演出となっている。
また清掃員であるにもかかわらず、触れたものを汚すという皮肉でもある。

三角

レッドピラミッドシング(三角)
レッドピラミッドシング・三角頭・三角様



さまざまな呼び名で親しまれているサイレントヒルのイメージキャラクターとも言えるクリーチャー。しかし本作ではゲームとは異なり、やや行動理念に欠けた。
原作だと彼の信念は”断罪”であり、罪を犯してそれを悔いない者を滅するために存在している。一方で本作ではそうした面は見られず、単純に裏世界の脅威としてしか描かれていないのだ。

続編では再度登場し、いくらかその目的を見せることになる。だが本作に限って言えば、この恐るべきクリーチャーの魅力を語り尽くせているとは言い難かった。

終わりに

霧の街で暮らし続けるというバッドエンドを辿った母娘。これにはローズがアレッサの望むままに教団員を虐殺させ、自らもそのひとりを刺殺したことに起因するのかもしれない。

何故ならば、サイレントヒルは罪人を呼ぶ街だから。

サイレントヒル(字幕版)
サイレントヒル(字幕版)

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