地底パニックホラー作品、The Descentをレビュー及び評価、感想、解説。
あらすじ
サラ、ベス、レベッカ、ジュノ、サム、ホリーの六人は洞窟でケービングを楽しみに来ている。
楽しい休日は一変、落盤により退路を断たれたことでサバイバルへと化した。
ジュノの案内で入った国立公園内のこの洞穴だったが、実は名前の付いた洞窟でなく、前人未到の地であることが後に判明。事前に万一の為に登録した入穴申請は別の洞窟であり、レスキューの見込みは無い。自力脱出が求められる。
風や光を頼りに彼女らは進む。先の見えぬ暗闇を照らし、足場無き絶壁をロープで渡る。
だが洞窟の奥へ進めば進むほど、何某かの不穏な気配を感じ始めた。
大量に散らばる動物の骨、何処からか聞こえる謎の鳴き声。
異形の存在を感じた一行の、絶望のカウントダウンは始まっている。
ネタバレ概略
- 1.事故サラは休日にスケーリングを楽しんだ帰り道、夫と娘を事故で亡くした。
- 2.友達サラを気晴らしに誘うため、アウトドアで洞窟探検を計画した友人たち。
ジュノはボアム洞窟という有名スポットへ皆を連れていくと言った。 - 3.崩落洞窟を進む一同だったが、その時狭い横穴の一部が崩落した。
帰り道を失う一同。
入山申請から遭難届けが自動的に出るはず、と思ったのも束の間、なんと今居る洞窟はボアムではなく、ジュノが発見したての名も無き洞穴であることが発覚。 - 4.探索いくら待ってもボアム洞窟にしか捜索隊が入らないことを察した一同は、否応なしに先へ進むしかない。
抜け道を辿って自ら脱出しない限りは、永遠に救助は来ないのだ。 - 5.滑落道なき道を往く一同。陽の光につられたホリーは無謀にも走り出し、高所から激しく落下した。
落下地点に一同が辿り着いた時、ホリーの脚は開放骨折していた。 - 6.気配サラは洞窟の中で、人影のようなものを見る。一同は見間違えだと諭したが、やがてその奇怪な生き物は彼女らを追い立てるように付き纏い始める。
- 7.襲撃ホリーは化け物に追いつかれ、首筋を食い千切られる。そのまま彼女を連れ去ろうとする怪物に、ジュノはピッケルで応戦した。
- 8.誤算ホリーは連れ去られてしまったものの、ジュノは怪物の一匹を殺すことに成功する。
その時不用意に背後に立ったベスを、弾みで突き刺してしまうジュノ。 - 9.台所サラが息を潜める中、目の前でホリーが食べられる。怪物は群れで彼女に群がると、一斉にその新鮮な肉を頬張った。
怪物は視力が退化しているようで、音を立てないことで彼女はその場をやり過ごせた。 - 10.遺言致命傷を負ったベスを発見するサラ。彼女は死を悟りながらも、自身がジュノにやられたことを伝える。
またサラの夫がジュノに贈ったペンダントを受け取ったことで、サラの中の疑念は確信へと至る。
亡き夫は、ジュノと不倫していたのだ。 - 11.宙吊サムはパニックになり大きなクレバス空間を天井伝いに渡ろうと試みるも、怪物に追いつかれて喉を引き裂かれた。
彼女は勇敢にも化け物と刺し違え、最後には宙吊りになったまま死んでいった。 - 12.腸レベッカは怪物に引き倒され、生きたまま腸を食い尽くされる。
ジュノは湖面に飛び込んで難を逃れると、クライミングで崖を登る。そこで彼女は、風貌の変わり果てたサラと再会したのだった。 - 13.死闘サラとジュノは襲い来る化け物の群れと闘い、遂に打ち勝つことに成功。
だがサラはジュノにベスの件や夫とのことを問うようにアクセサリを見せつけると、彼女の脚にピッケルを振りかざした。
更に襲い来る化け物に取り囲まれ、絶叫を上げるジュノ。 - 14.出口陽の光を目指して崖を登るサラ。果たして日常という出口に、彼女は辿り着けたのだろうか。
モンスター
洞窟内で一行に襲い来る化け物たち。
視覚は退化しているようだが、聴覚は極めて鋭敏だ。
かなりの数の個体数をほこり、集団での狩りも得意なようだ。
獰猛にして執拗、俊敏にして強靭。まるで熊のように捕らえた獲物への執着心を見せ、食事場へ連れ込んだ「肉」を同種族同士で分け合って貪る習性のようだ。
人型の体躯だが、表面はぬめりのようなもので覆われており、およそ人間とはかけ離れた異形である。
気色の悪い特殊メイクや、奇怪で鋭敏な仕草も非常に上手く表現されている。
四つ足で走り寄る嫌悪感溢れるクリーチャーには、たいへんに称賛されるべき演技力だと膝を打った。
演出
洞窟内ということで暗さはあるが、光量を絞り過ぎて失敗した過去の恐怖映画からの教訓はきちんと得ている。
要所で用いられるフレアトーチ、暗視カメラ、松明などで状況把握は容易だ。
化け物に追われ散り散りになるさまや、恐怖で我を見失い愚かな行動に走る様子は、絶望的状況でのパニック感を我々にひしひしと伝えるだろう。
またクライミングシーンではわりかし知識を感じさせる表現を用いており、アドバイザーによる助言の賜物であろう。

ゴアシーンはそれほど直写では映らないが、生きたまま食われる仲間をただ見ているしか出来ない無力感や、薄気味の悪い血の池などの印象的なシーンは映える。
上品なじわじわとした恐怖ではなく、全体的に悪趣味でショッキング、グロテスクな仕上がりに寄っていると言えるだろう。
冗長な背景
序盤の20分辺りまで延々とバックグラウンドを語るシーンに費やしたのは大失敗だった。
ホラー映画でやりがちな過ちの代表例であるこの、「登場人物のバックボーン紹介」に辟易とした視聴者は多そうだ。
実際に洞窟に入るシーンは20分過ぎから、怪物の登場するシーンに至っては50分も経っている。
これは控えめに言ってもやり過ぎであり、愚かしい調整と言わざるを得ない。
では今作のキャラクターの背景がパニックシーンに対して何かしらの寄与を果たしているかといえば、何一つ無い。それも当たり前だ。
追う側の怪物たちには獲物の過去や人生への標など少しの関係も無い。奴らはただ生きる為に洞窟に足を踏み入れた肉を淡々と狩っているだけだ。
追われる側が一方的に回想に耽ってもそれはあくまで一方通行の思念でしかなく、受け取り手の無い自己完結だからだ。
これがパニックホラーでなく、追う側が知性を持ち、一本筋の信条や概念をぶつけてくる対等な人間同士であらば事情は違う。そういったケースで互いの背景というものは生きてくる。
といった具合で、無駄な尺調整に何十分も付き合わされるのが退屈と感じるなら、最低でも20分は飛ばして観るのを勧める。そこからでも充分ストーリーは楽しめる。
評価
驚くほど退屈な50分過ぎからはたいへん良く楽しめるパニックホラー映画を観ることが出来るだろう。
ラストシーンもありがちではあるが、よく纏まっていたと感じる。
未知のクリーチャー好きにはお勧めの一作だ。

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