【映画】神の手 血塗られた儀式/忍耐と精神力を試される視聴者【ネタバレ:レビュー】

サスペンス

カルト集団の暗躍とそれを阻止すべく立ち向かう警察を描いた北欧サスペンス映画、VILSENをレビュー及び 評価、感想、解説。

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あらすじ

ヨーテボリの街で、背中を切り刻まれた死体が発見される。この奇妙な紋様を刻み付けられた遺体は直近でも同様の事件で見つかっており、警察は同一犯の犯行と特定。速やかな解決に乗り出す。

時を同じくして、謎の女性牧師ガブリエラからの有力情報が寄せられる。彼女はこの一連の事件を「神の子」と自称するカルト集団の仕業だと言い、警察への協力を願い出た。

やがて神の子が狙うのは六人の犠牲者であることが判明し、刑事ヨーランら捜査本部は、この集団を止めるべく闘いを挑むのだった。

音響

倒れながら発砲するシーン

スカスカのSEと、シーンの薄っぺらさを誤魔化すBGMが特徴的。

特に銃声が壊滅的で、マズルフラッシュが無ければBB弾を撃っているのかと思うほどだ。
またコンバットシーンでも同様のチープなSEが使われており、目を瞑れば肩叩きがイメージされる。

最低の手法である、「それっぽいBGMで雰囲気だけ作る」というテクニックを盲信しているのも見逃せない。あらゆる場面でそれらしき曲を大きめの音量で流し、空気感だけ演出している。

ヘッドホンを外して観る方が案外楽しめるかもしれない。

警察ごっこ

銃を構える刑事の背後に降り立つ影

神の子は恐らく、あまりにも順調に進行し過ぎる計画に、驚きを隠せなかっただろう。その順風満帆さに、おとり捜査や計画の漏洩を疑わなかったはずがない。

犯人の潜む部屋のクリアリングを後回し
息子の担任教師と寝ていたら、部屋を襲撃される
別々の重要証人を同部屋で匿う
肉弾戦が、すこぶる弱い


この他にも枚挙にいとまがない。

犯人の足どりは一切掴めず、ようやくそれに迫ればひ弱なために取り逃し、何かとしょっちゅう自宅で休んでいる。


圧倒的人材不足の荒波はこの警察署内にも及んでいた。さぞかし神の子らは、仕事がしやすかっただろう。

皆既日食

テレビニュースで報じられる皆既日食

作中では近日中に皆既日食を迎える設定になっている。このダークリング出現に合わせて、神の子らは計画を押し進めるのだが、その過程で大規模停電が起こることになる。

これはカルト集団の工作によるものか、はたまた儀式の進行に伴う超常的パワーなのかは定かでないのだが、これによって民衆はパニックを引き起こす。

略奪や暴動が頻発し、車を力ずくで転がしたり、ある者たちはなんとビルを爆破したりもする。

ビルを爆破するほどの元気があるのなら、他の都市へ避難するか、若しくは皆で自転車でも漕いで発電をすれば良かったのではないだろうか。

よほど普段から抑圧された圧政の下でなくては、このような事態は起きない。しかし周知のように、スウェーデンの幸福度ランキングはいつも上位だ。
いったい本作中の北欧では、どのような世界観が用いられているのか。

ホラー化

口から不気味な物体を吐く悪霊

終盤で物語は、これまで危ういながらも築いていたサスペンスをぶち壊して、突如ホラーパートへと移行する。
狂気の力に支配された女帝は、もはや行動理念すらも不確かなままに暴れ狂う。枷の外れたモンスターだ。
視聴者を置き去りに、次々と屍を築く怪物。よく分からないエナジー的なものを吸ったり吐いたりするたびに、バタバタと生者たちは黄泉の国への階段を駆け上がる。

またこのシーンでは画面を激しく明滅させる、非常に目や脳によろしくない手法が取られており、しかもそれが五分間続く。
場合によってはダメージ負ったり、発作を起こす危険性も考えられるだろう。ポケモンフラッシュという言葉は、日本人なら馴染みが有る。


このシーンの隠れた意味合いとして、もはや制作陣はこのクライマックスシーンを直視して欲しくないという意思が見えた。
彼らはちゃぶ台を放り投げる瞬間の羞恥に満ちた桃色の頬や、苦悶を浮かべる汗まみれの額を光と闇の中へ隠したのだ。


命からがらクライマックスを見終えた筆者は、自分への称賛と労いを同時に送る。長く苦しい五分間の旅を終えたその後には、不思議と晴れやかな気分が待っていたのだ。
それはマラソンや水泳のゴールを迎えた時のような、孤独な苦難を乗り越えたスポーツマンの、努力が報われた瞬間に近い。

それらは無論、ストーリーとは関与の無い部分でだが。

浅すぎる意図

昏睡状態の父

家族の絆、宗教観、大事な者との別離。

こういったテーマを盛り込んだ作品は多く、それはたくさんの視聴者に共感されやすいワードだからだ。

こういった「売れるテーマ」をうまくメインストーリーへミックスさせると、案外手を抜いたつくりでも、「なんとなくそれっぽい」ということで話題性に富み、ひいては大勢が称賛することに繋がる。

例えるならそういった作品は、海鮮丼になる。白米というメインへ、イクラやマグロを添えて醤油を垂らしたら、個々の鮮度が多少悪くてもそこそこおいしい。


本作でも多聞に漏れず海鮮丼をこしらえる試みは見られるのだが、いかんせんネタの質が薄っぺらで、噛んでもどうやら味がしない。
そもそも本当に白米やマグロかさえ怪しく、そこで気付くのはこれが海鮮丼でなく、単なる闇鍋なのではないかということだ。

腹を下さないように気を付けよう。

評価

ありとあらゆる「やってはいけない」を盛り込んだ本作。逆に映像作品を志す者には、反面教師として大いに役立つのではないかと感じる。

もういっそ清々しいほどの破滅的Z級映画として、逆に勧めたくなるのは何故だろう。

★☆☆☆☆
一つ星。
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北欧・スウェーデンが生んだ極上のミステリー!平和な港町ヨーテボリで、遺体の背中に奇妙な印が切り刻まれるという連続殺人事件が発生。事件を担当することになった刑事は、元牧師の女性と捜査を進める内に、事件の裏に、この世のものを超えた力が関わっていることに気付き始める。

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