【映画】ウォーム・ボディーズ/ゾンビと人間でロミジュリ【ネタバレ:レビュー】

ヒューマン

恋愛ゾンビヒューマン映画、Warm Bodiesをレビュー及び評価。

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あらすじ

廃墟となった空港で一昼夜うろつき続けるゾンビのRは、ある日空腹のため仲間と共に食料を探し歩いていた。
とある医療施設で人間の気配を察した彼らは、本能のままに踏み込む。
銃声、絶叫、肉を貪る音。

だがそこで、ひとりの男の脳みそを喰らったRにおかしな異変が起こり……。

R

下を見るR

空港のゾンビ。ジェット機を居住区としており、レコードやアンティークなどを集めるのが趣味。
過去の記憶はほぼ無くなっており、死因や以前の生活はおろか、自身の名前も頭文字しか浮かばない。

ペリーの脳みそを食べたことで彼の記憶を取り込むに至る。彼の生前の恋人ジュリーに惹かれる心が、やがて自身のものと重なっていく。

ジュリー

銃を構えるジュリー

資材調達隊として派遣された、人類居住区最高責任者、グリジオ大佐の娘。恋人はペリー。

医薬品の調達中にゾンビたちに襲撃され、大半を失う。ペリーの脳を摂取したRにより窮地を逃れ、しばし空港生活を送ることに。

ガイコツ

こちらを睨む三体のガイコツ

ゾンビのなれの果て。自我を完全に失ったゾンビが自らの皮を剥ぐことで、この冷酷で無慈悲なハンターへと生まれ変わる。
ゾンビとは異なり人間性の欠片も見せることはなく、生者、死者問わず襲う。

ゾンビの特性

生前の清掃活動を続行するゾンビ

過去にも”ゾンビに残される人間性”を描いた作品はいくつかある。生前の習慣を繰り返す者、簡易な道具を使用する者。また感情を見せるような作品もある。

本作のゾンビはかなり人間寄りの習性を保っている。それが完全に失われるとガイコツへ変化してしまうのであり、ゾンビは未だ彼我を彷徨う中間点のような立ち位置である。


Rは親友と会話を交わし、ジェット機にコレクションを集め、人間を喰らう時ですら「気持ち悪いけど」と葛藤する。これはジュリーとの出会い以前からの習慣であり、変化の起こる前のことだ。本作のゾンビがいかに人間臭いかが窺えるだろう。

これはRだけが特別なのでなく、概ね全てのゾンビが内に抱える秘めたる想いである。彼らはそれを口にするだけのコミュニケーション能力が失われているだけで、内面には人間であった頃の感情が少しだけ残されている。


だが彼らが人間にとって脅威なことには変わりはない。肉を喰らう本能を持った、彷徨い歩く屍。
彼らの内面を未だ人間は、知らない。

ロミオとジュリエット

階下を見るジュリー

シェイクスピア戯曲、「ロミオとジュリエット」をオマージュしていることに、この構図でピンと来た方は多いかもしれない。
彼らの名前も「R」と「ジュリー」で、意識されていることが窺える。

本家ロミオとジュリエットでも、両家の和解を基軸に物語が進んでいく。結局彼らは平穏に結ばれることなく、互いの死を悲観して自ら命を絶つ、という救われない結末を迎えることは周知だろう。


本作のキャピュレット家とモンタギュー家は果たして、どのようなラストシーンを迎えるのか。
是非とも自身で確かめてほしい。

ガイコツの存在

迫り来るガイコツ軍団

”敵の敵は味方”

この理屈は通用しないことは、現実でも映画でもおおいに見られる。
例えばドラマウォーキングデッドではそうした甘っちょろい理念を一切排して、生き残りのためには人間だろうとゾンビだろうと蹴落とそうという信念に基づく登場人物が多い。

この手の構成が許されるのは子供向けの理解しやすいキャッチーなアニメーション程度までであり、成人したいい大人が軽々に共感を響かせることはない。


本作のガイコツは明らかにそれで、完全にかませ犬としてもポジションのためだけに登場させられている。制作陣もそれを理解しているので、モノローグとして「ガイコツも愛で救いたかった」という慰めのような文言が入るのだ。


恐らくやる気を出せば、ガイコツ不在でもこの映画は成り立つ。それはゾンビ同士の争いであったり、血を流し合う末の相互理解であったり、それは様々だ。
Rとジュリーの恋愛模様に尺を割かれ過ぎた関係で、この部分を深掘りするには至れなかった。

愛を描くというのはなにも、「好き好き、チュッチュ」を繰り返し見せつけることではない。
ソフト過ぎる路線を攻め続けない姿勢がもう少し見たかったのは事実である。

特効薬

心に火が灯るゾンビたち

八年前にウィルス蔓延によって荒廃した世界は、ゾンビ化した人間を元に戻す特効薬の精製を目指した。しかしそのどれもが失敗し、いまやそうした幻想を抱く者は居なくなったようだ。
だが作中でRをはじめとするゾンビらは次第に人間の心を取り戻し、本能のままに人肉を喰らう己を律するようになっていく。

誰もが序盤で気付くと思われるが、その特効薬は”愛”であった。かつて愛した人や場所の記憶を刺激され、虚ろな屍たちの胸に灯がともる描写がなされる。

現実主義的な見方で本作を眺めると薄っぺらくて都合が良すぎると思うだろうか。しかし筆者としては、こうした血生臭くなく、救いに満ちたゾンビ世界も悪いものではないと感じた。


この部分の暗喩としては、現代社会で冷え切った心と閉ざされた人間関係の人々が多い、という警鐘になっている。手を取り合って共に歩めば、温かい心と身体を手に出来るぞ、という意味合いだろう。

現代日本人には良い意味の皮肉になり得ると感じた。

評価

ゴリゴリのゾンビ映画ではない。スリルや恐怖を求めるなら他作品で。



ゴア表現や恐怖演出も見られないので、万人に向けられる一作だと感じた。

★★★★☆
四つ星の優良作。
ウォーム・ボディーズ (字幕版)
ウォーム・ボディーズ (字幕版)

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