【映画】10×10 テン・バイ・テン/証拠ナシ?ルイスとキャシーの今後【考察あり:ネタバレ注意】

スリラー

一軒家での監禁事件を描いたスリラー映画、10×10をレビュー及び評価、感想、解説 、考察。

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あらすじ

フィットネスクラブの帰りに拉致されたキャシー。
誘拐犯=ルイスは、防音室に彼女を監禁する。

だが単なる金目当ての犯行と異なり、ルイスにはある明確な目標があった。
やがて彼らの立ち位置は、単純な加害者と被害者のそれから逸脱し始め……。

ネタバレ概略

ネタバレストーリー
  • 1.
    誘拐
    フィットネスクラブ帰りのキャシー。彼女は駐車場でルイスという男に誘拐される。
    目撃者は無く、助かる見込みは薄い。
  • 2.
    自宅
    自宅の防音室へキャシーを放り込んだルイス。
    彼女に対し、「名前を言え」と迫った。
  • 3.
    拳銃
    キャシーはなんとか自力で逃げ出そうともがくものの、ルイスは銃でそれを制した。
  • 4.
    食事
    ルイスは食卓にキャシーを招く。しかし同じ質問に同じ回答を返したところ、彼は激昂。揉みあいの末に、キャシーは再び監禁されてしまう。
    だがその時に、こっそりと自分の携帯電話を取り戻していた。
  • 5.
    通話
    弱い電波ながらも、キャシーは警察に断片的な情報を伝えることに成功した。
  • 6.
    真相
    ルイスは業を煮やし、彼女に真相を吐露する。
    彼女が姉妹の名を騙った偽物であり、過去に医療に従事していた際に数件の殺人を犯した事実を隠していることを。
  • 7.
    殺された被害者のひとりが自分の妻であったことを示すルイス。
    そして自宅での証言は全て録音されており、言い逃れが出来ない、とも言う。
  • 8.
    誤算
    再び揉みあいになる雌雄。
    しかしその時、外泊で戻らないはずの娘と家政婦が自宅に戻って来てしまう。
  • 9.
    人質
    奪った銃で家政婦を撃ったキャシー。更には幼い一人娘をも人質とした。
  • 10.
    到着
    激しい格闘戦の末、キャシーは車庫で倒れた。
    やがてキャシーの一報により、到着したパトカー。

シナリオのあれこれ

キャシーを監禁するルイス

脱出系のシナリオでなく、あくまでルイスとキャシーの過去を洗い出すのがテーマ。
よって絶望的な状況からの脱却を目論む、プリズン・ブレイクのような頭脳戦は行われない。

また長期監禁を可能とするシステムはそもそも配備されておらず、短時間でケリをつけるための最低限の装置しか取り付けられていない。
このことから、摩耗していく捕虜の姿を描くタイプの映画でないことも窺えるだろう。


最大にして唯一のギミックは、無辜な市民と思われていたキャシーの全貌が明らかになりつつある瞬間。
ルイスの動機と彼女の過去が同時に判明するクライマックスシーンと言っていいだろう。


ここでやや不満なのが、もう少し時間を使った展開を希望したかったことだ。
あっという間に洗いざらいキャシーが独白する部分は、いささか違和感が拭えない。
せめて日を跨ぐ程度の描写が見たかった。
これほどの短期決戦でストーリーを締めるのは、練った設定に対してかなり勿体ないように感じる。


が、こうしたシナリオにも勿論理由がある。

  • 娘との同居設定
  • ルイスを振り切った悪人に描けなかった



主にこれらだろう。

最終場面にて娘を登場させるのがマストとはいえ、ここはヒネりようがいくらでもあった。
遠方の祖父母の家に宿泊していた、とでもすれば問題無かっただろう。


一方で悩ましい問題だが、ルイスを完全な悪人に仕立てられなかった部分。
作中のトリックのキモである、

ルイスとキャシーに対する印象の逆転



これを際立たせるために、ルイスを振り切った悪党として描けなかった。
よって長期間の監禁という人道に背く行為を嫌った節になる。

この善悪のミスリードを助長するのが、終盤のキャシーによる逆襲。
窮地に陥る父娘を描くことで、キャシーに対する序盤のイメージを一変させようと画策した。


が、冷静に考えるとこれは納得がいかない。

ルイスを善の立場にするということは、誘拐監禁諸々の事実を正義の代行として許容しろ、と言外に示すようなものだ。
どう考えても彼らはふたりとも犯罪者であり、ならば対立する善悪構造はそもそも誤りだ。
これが「悪×悪」ならば不思議はないが、どう見ても終盤のルイスは美化され過ぎている。

ルイスを復讐に飢えた獣に出来なかったこと。それが違和感の原因だ。

キャシーが強すぎる

ルイスを羽交い締めにするキャシー

ストーリーに起伏をもたらすためとはいえ、

ちょっとキャシー、強くないですか?



看護師から花屋という経歴を感じさせないほど、キャシーは肉弾戦が強い。
あらゆる身の回りの武器を用いて、体格で勝るはずのルイスをボコボコに負かすのだ。
恐らく銃が無ければ、ルイスは一度も彼女を制圧出来ていないだろう。

またペルソナによる成りすましも完璧。質問の返答には粗がなく、完全に別人に成りきっていたと言える。
ルイスは単純に下調べで素性を知っていただけで、純粋な尋問で引き出せた情報はゼロに近い。


これらから筆者は視聴中に、彼女の正体はスパイ以外有り得ないと思った。
MI5、ないしはCIAのオフィサーで、なんらかの案件に取り組み中だろうと。

そこへ来てからの、素人殺人鬼説。
良い意味でも悪い意味でも驚いた。


体術や成りすましに関しての技術習得過程は一切描かれない。
ナチュラルでこれならば、大した天然諜報員だ。

キャシーはサイコパスか?

  • 捜査の手を掻い潜る完全犯罪
  • 神の代行者を騙る自己意識
  • 垣間見える嗜虐性



こういった要素を並べると、いかにもサイコキラーとしての素質があるようには見える。

しかし動機こそ少々特殊なものの、精神的な面に関して異常性は見られない。
非常に合理的な行動理念に基づいた、刹那的でない犯行。
抗えない衝動に突き動かされて犯行を重ねる歴代のサイコパスと比べると、彼女はやや健全にすぎる。


また罪の吐露と断罪を代行した神の僕である、と自称した部分。
これに関しては案外珍しいものではなく、多くのサイコキラーが同じようなことを語ることは多い。

彼らは既存、或いは自己内に生み出したオリジナルの神から啓示を受け(受けたと錯覚し)、その望むままに殺人を犯す。
精神鑑定ではこの”神の声”にフォーカスされることが多い。実際にそれが、本当に作用したか否か、というのは厳しく見守られる要素になる。


だがいかんせん、キャシーの内面については語られる部分が圧倒的に少ない。
元々そういう作品でないことは重々承知だが、これで軽々にサイコキラー判定を下せば、世の中の殺人犯は大概病院で終生を過ごせることになってしまう。


よって体面的には特徴を併せ持つものの、彼女をサイコパスと呼ぶには至らない、と判断する。

感情の男、ルイス

警察に呼び止められるルイス
  • キャシーのスマホからSIMを抜いていない
  • 前後不注意
  • 名前を言わないと、カーッと来る
  • 誘拐に使ったクルマを使い続ける



ルイスはおっちょこちょいで、抜けている。

最初の誘拐の手腕こそ見事なものだったが、それ以降の彼はミスだらけ。
もちろん監禁の経験がある者など少ない方が当たり前で、彼も同じだろう。

にしてもやはり、色々まずった。特にスマホはすぐにSIMカードを抜かなければならなかっただろう。

これら背景にはルイスの怒りっぽさが潜んでいる。作中で彼は感情をむき出しに、そのまま行動へ直結させる。
感情表現が世界一乏しいと言われる日本人成年男子にとっては、ちょっと羨ましいぐらいだ。


もちろんこれら根底には、「妻の殺害」という最も強い負の感情が眠っているためになる。
感情を起因にすれば、感情に帰結する。

評価

ツッコミどころも多いが、そこそこ楽しめるスリラー映画



時間の使い方としては悪くない。

★★★☆☆
三ツ星の良作。
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綿密な計画と準備を整え、ルイスは花屋を営むキャシーを白昼堂々誘拐する。ルイスは自らが造り上げた 10×10フィートの防音室にキャシーを閉じ込め、彼女が抵抗しようものなら激しく殴りつける。彼の動機 – それは、キャシーによって隠蔽された暗い秘密を告白させること。過去のある事件が解き明かされるにつれ、本当の犠牲者が白日の下...




以下、考察及びネタバレ注意。






ラストシーンのあと、どうなる?

かなり意地悪く、ルイスの行動がいかに無駄で無意味であったかを解説していく。

キャシー死亡の場合

車庫前で倒れるキャシー

明示されないキャシーの生死だが、仮に電動シャッターで彼女が死亡した場合どうなるだろう?


まず刑事責任のあると見られる被告が、既に死亡している場合の取り扱いだ。
この場合、検察が起訴を行うことはほぼ無いと思っていいだろう。

刑事訴訟の意義とは被告の有罪無罪の追求であり、既に起訴される者が死亡していれば、その存在意義はほぼ失われる。
いくらルイスが声を上げたところで、検察が死人=キャシーに鞭を打つことは考え辛い。


一部例外として、既に死亡した被告の有罪可否により、別件の証拠状況が変わるケースだ。
この場合、法令を扱う国家によるが裁判が進行する場合がある。
ただしこれは起訴後の死亡が主であり、起訴前に死亡している者を被告とするのはやはり困難である。


また日本の刑事訴訟法では起訴中でも被告死亡時は、明確に公訴棄却を指示している。

第三百三十九条  左の場合には、決定で公訴を棄却しなければならない。

四  被告人が死亡し、又は被告人たる法人が存続しなくなつたとき。



いずれにしろ、警察も検察もノーマークのキャシーを死亡後に起訴することはほぼありえない。

よってルイスの行為は法的には全く無意味になり、単純な復讐でカタルシスを得る以上のものではなかったことになる。

キャシー死亡時のルイスその後

エンディングで警察が到着したのは、キャシーからのSOSが理由になる。
まず彼は拘束され、所轄の警察署で事情聴取、拘禁を経る。

ここで正当性を示すためにUSBメモリを提出するが、彼女の自白があろうとルイスの拉致監禁に免罪符が発行されるはずはない。
実際に彼は誘拐の罪を犯しており、これを否認する材料は持ち合わせていない。


また状況から家政婦の死亡もルイスの責と見られる可能性が高い。
彼の銃から発射された弾丸で、彼の家の玄関先で死んでいるのだから。

家中の録音をしていた」と彼は言ったが、自宅で改竄可能なデータを自ら提出しても、検察はこれを証拠排除申請することは間違いなく、大抵の判事はそれを認めるだろう。
唯一の証人は娘だが、血族、それも一親等で幼い子供とあれば、証言としての価値は著しく低い。

つまり家政婦殺害を否定できるだけの証拠はなく、逆にそれを示すものは溢れかえっている。


これらからルイスには少なくとも、

  • 誘拐
  • 監禁
  • 暴行
  • 二名、ないしは一名の殺人



この罪を問われ、おおよそ有罪となる見込みだ。

幼い娘を一人きりで残し、長い間堀の中で暮らす””を新たに重ねる。

キャシー生存の場合

独白するキャシー

ではラストシーンでキャシーが生きていた場合はどうなるか?


まずルイスは所轄に連行される。これは前段と同じだ。

次にキャシーは病院に移送され、監視付きで療養を受ける。

ルイスは拉致監禁の罪で逮捕され、起訴中にUSBメモリを検察に託すだろう。
「これがあれば、全てひっくり返る」
このように考えるかもしれない。

だがキャシーは起訴されない。

検死は行われない

ルイス以外の遺族がこの事実を聞きつければ、すぐさまキャシーを逮捕するよう働きかけるだろう。

だが忘れてはならないのが、既に二回以上の司法解剖を経ても毒物の検出されない遺体だ。
もちろん遺族は再度検死を希望するだろう。
しかし検察はこれ以上の司法解剖を拒否するに違いない。

検死過程で何も見つからないという確信はもちろん、逆に見つかっても困る、というのが本音だろう。
再三の検死で、しかもそれが素人からの指摘で毒物が見つかればどうなるか。

担当した検死官の手腕は疑いを持たれ、それ以前の検死結果すら疑問視されるだろう。
これが仮に、公判中の殺人を担当していたとすれば目も当てられない。

つまり検察としては、”毒物が見つかっても見つからなくてもマズい状況”なのだ。

自白は証拠排除

では検死を度外視して、密室で行われた自白のみで案件を進めるとする。

この場合でも、一見して決定的な独白は、その実証拠として採用される見込みはほぼゼロだ。

脅迫、暴力、恫喝を用いて引き出した自白に証拠能力は無い

拳銃を持った相手が、「(求めている)真実を言え」と脅せば大抵は望むままに話す。
これに証拠能力を認める判事は存在しない。(国で例外アリ)


本来自白とは、被疑者の権利を全て読み上げた上で、圧力の無く納得した状態で初めて効力を持つ。(名前は伏せるが、先進国でも一部そうしていない国はあるが)

また同席するのは司法に精通した者が望ましく、多くは警察官や検察官である。
ルイスは明らかにどの基準も満たしていないことが窺えるだろう。

仮に検察がゴリ押しで、この録音を元に起訴を行ったとする。しかし相手方の弁護人がよほど間抜けでない限りは、必ずこの音声は証拠排除申請される。

そしてキャシーの証言以外に立証の見込みは無い。毒物は検出できないのだから。
よって彼女は無罪、それも憐れな被害者となる。

キャシー生存時のルイスその後

キャシーが急激に善良な心に目覚めない限りは、彼女は無罪を勝ち取り、尚且つルイスの罪を糾弾する。


家政婦の死亡は、銃の持ち主がルイスである面から有利に働くだろう。
完全に彼に罪を擦りつける覚悟で挑めば問題は無い。

或いは正当防衛を前面に押し出してもいい。乱闘の末の誤射であったことをアピールし、涙を流して謝意を見せれば温情を勝ち取れる。

いずれにしろ発端はルイスの拉致監禁であるため、多くの責任は家主の彼に帰結する。
ともかく、いかに彼が非道な男であるかを示唆出来るかがキモになる。
実際に行われていない罪をでっち上げれば上げるほど、キャシーにとっては有利に運ぶことになる。

USBの音声はルイスのみが編集可能な環境下であるため、内容に遠慮する必要は無い。
ありったけの罪を上乗せすべきだ。


こうして重犯罪者として裁かれるルイス。初犯であっても、長期刑は免れないだろう。
かくして最も不幸なのは、ひとり残される娘だけだ。

終わりに

どう足掻いても破滅の道しか残されていないルイス。
娘を不幸にしたのは、キミだよ。

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綿密な計画と準備を整え、ルイスは花屋を営むキャシーを白昼堂々誘拐する。ルイスは自らが造り上げた 10×10フィートの防音室にキャシーを閉じ込め、彼女が抵抗しようものなら激しく殴りつける。彼の動機 – それは、キャシーによって隠蔽された暗い秘密を告白させること。過去のある事件が解き明かされるにつれ、本当の犠牲者が白日の下...

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