【映画】パッチ・オブ・フォグ 偽りの友人/友情の押し売りはいかが?【ネタバレ:レビュー】

スリラー

不気味な男に友情を強要されるスリラー映画、A Patch of Fogをレビュー及び 評価、感想、解説。

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あらすじ

ベストセラー作家にして大学教授、またテレビ番組も持つ著名な男、サンディ。

彼はある日、量販店でふと魔が刺してペンを万引きをしてしまう。警備担当のロバートはそれを見逃さず、警備室に彼を呼び出した。

地位と名誉を失うことを恐れたサンディは、何とか金で解決できないかとロバートに問う。
しかし彼の提示した条件は、自分と友人になってほしいというものだった。

内心で面倒ごとに巻き込まれた、と感じるサンディ。しかし窃盗の現場を撮影した監視カメラ映像はロバートの手中にあり、彼は渋々この条件をのんだ。

やがてロバートの、距離感をわきまえない不気味で一方的な友情にサンディは悩まされ始めるのだった。

サンディ

ショッピングを楽しむサンディ

大ベストセラー作、「一面の霧」の著者。若干25歳にして発表したこの素晴らしい作品に、読者たちはみな虜になり、褒め称えた。

壮年までの間、多くのメディアに対して著書への思いを語り続けるのは些か疲れたようで、今の仕事をやり終えたら表舞台からは引退すると決めている。

金銭的に不自由はないが万引きをしてしまう、いわゆる「病的窃盗症」を患っていると思われる。
日常から乖離したスリルや達成感が、興奮剤として作用しているように見える。

ロバート

万引きを問いただすロバート

サンディの万引きを見つけた警備担当。事実を葬る見返りに、自身との友情を強要した。
その歪んだ友人像や不躾な距離感にサンディは大いに悩まされることになる。

これまでに友人を持ったことのない孤独感からか、それらは一層加熱していくことになる。

ネタバレ概略

ネタバレストーリー
  • 1.
    万引き
    裕福な身なりの男、サンディ。彼はデパートで買い物の途中、アクセサリを上手く盗むことに成功する。
    勝利のあとの一服は至高だった。
  • 2.
    ベストセラー作家
    大ベストセラー、”一面の霧”の作者サンディ。
    彼は毎週テレビ出演中で、作品の25周年記念の特番が決定となることに。
  • 3.
    引退
    すでに大金を手にしたサンディは、次の特番を最後に引退する意思を伝えた。
    本について人に話すのに疲れたという彼。
  • 4.
    露見
    とある昼下がり、雑貨店で買い物をするサンディ。
    いつものようにボールペンを万引きしたところ、セキュリティに店先で捕まってしまう。彼は事務所に連行された。
  • 5.
    懇願
    警備責任者のロバートは通報すると言うが、著名人であるサンディはそれをなんとかやめてほしいと頼む。
  • 6.
    コーク
    通報をやめたロバート。彼はお礼として、コークでも奢ってくれ、とサンディに頼んだ。
    見逃してくれたことこそ有り難いものの、関わり合いになりたくない人物との同席に、ややうんざりとするサンディ。
  • 7.
    記録
    これきりと思っていたサンディだったが、ロバート曰く、まだ問題が残っているらしい。それは万引きの瞬間を捉えたビデオだ。
    彼はディスク持ち出しを約束すると、強引に一週間後の約束をサンディにとりつける。
  • 8.
    予想外
    大学で講義を終えたサンディは、なんとそこに現れたロバートと出会う。
  • 9.
    友情
    サンディを連れてロバートは、線路内に侵入する。
    彼は二枚のコインを列車に轢かせると、それを友情の証として分け合った。
    一方的な友情の押し売りを感じたサンディは、ここで改めて彼の不気味さを再認識する。
  • 10.
    頼み事
    数日後。再びバーで落ち合わせたサンディとロバート。
    彼はサンディの著書を購入し、その内容を絶賛した。
    だが文字を読むのが苦手な自分のために、それを朗読して音声データにしてくれ、と頼んできたのだ。
  • 11.
    恫喝
    友人のアドバイスから、法的手段を盾に万引き映像を要求するサンディ。だがロバートはネットに映像を流すと逆に彼を脅した。
  • 12.
    警察
    互いに主導権争いが続く。彼らは警察に赴くと、判断を仰ごうとした。
    だがロバートが言ったひと言で、サンディは凍り付く。
    「常習犯だと知れたら?」
  • 13.
    累積
    数か月以上前からサンディが常習的に万引きを繰り返していた事実を知るロバート。
    彼はボールペンの一件以前からの全ての窃盗映像を保持しており、それらはサンディを貶めるに充分な働きを持つ。
  • 14.
    敗北
    事態を把握したサンディは、全てロバートの言うとおりにすると誓う。
    彼らは美術展で親交を深めると約束した。
  • 15.
    独白
    当初はサンディを知らないように振る舞っていたロバートだったが、実は彼の番組を観たことがあり、今では毎週欠かさないと明かす。
    彼の望みはただひとつ。サンディと友人になりたい、と。
  • 16.
    朗読
    自分の作品を朗読させられ、たったひとりの脅迫者に向けて贈り物とさせられる屈辱を味わうサンディ。
  • 17.
    懐柔
    自宅にロバートを招いたサンディ。彼は出来るだけ客人をもてなし、本当の友人であるように振る舞った。
    そして彼は、ディスクという脅迫を盾に友情を続けるのは不本意だ、と提案した。
    だがロバートは、サンディの安全のためにディスクを保管するとこれを拒む。
  • 18.
    侵入
    タクシードライバーを使ってロバート宅の住所を聞き出したサンディは、彼の留守中に家宅へ侵入。
    ディスクを取り戻すと、家中を荒らして鬱憤を晴らし、その場を去った。
  • 19.
    誤算
    全てが終わった。そう感じていたサンディだったが、ロバートから連絡が入る。
    「俺は防犯のプロだ」
    自宅内に置かれた隠しカメラに、サンディが家屋を荒らし回る姿が映っていたというのだ。
  • 20.
    篭絡
    新たな脅迫のネタを与えてしまったサンディ。これまで以上の従順さを求められた。
  • 21.
    偶然
    たまたまロバートの働く店に来店した、サンディの番組で司会を務めるルーシー。
    彼女の娘フィービーが持っていた”ぺしゃんこのコイン”を見て、ルーシーと彼が男女の関係であると理解したロバート。
  • 22.
    嫌がらせ
    サンディの自宅で団欒を楽しむルーシーとフィービー。しかし軒先に駐車した車のフロントガラスに、何者かが石で叩きつけた跡があった。
    サンディは瞬時に、彼らの仲をやっかんだロバートの仕業だと理解した。
  • 23.
    ストレス
    ロバートに人生をめちゃくちゃかき回されている。
    耐え難いストレスを発散するため、サンディは立ち寄ったガソリンスタンドで安物のライターを盗み、カタルシスに浸る。
  • 24.
    奇策
    サンディは自分の講義で、あえて例の”家屋荒らし動画”を学生に見せると、それを芸術課題として扱った。
    これによりロバートの持つ映像は効力を失ったことになる。
  • 25.
    決別
    後ろ盾を失ったロバートに、サンディは決別を突き付けた。
  • 26.
    原本
    サンディとの友情を諦め切れないロバート。彼はサンディ宅へ忍び込むと、”一面の霧”のオリジナルを金庫から盗み出した。
    そこにあった署名は、サンディの父のものだったのだ。
  • 27.
    提案
    作者を騙った偽りの作家サンディ。またも新たな脅迫ネタを手に入れたロバートは、互いに仕事を辞め、協力して本を書きあげることを提案した。
  • 28.
    拒絶
    寝食を共にし、同じ墓に入れと強要するロバート。彼を拒否したサンディは、遂に彼の首を絞めて殺してしまう。
  • 29.
    遺棄
    湖に死体を遺棄したサンディ。だがロープが足に絡まり、自らも水底へ引き込まれる。
    彼らは同じ墓に入ることになった。

思いがけず恐ろしい

酒場でコーラを飲むロバートとサンディ

コンセプトやあらすじからは想像できないほど、思いの外このストーリーから恐怖を感じることになるだろう。

無礼で粘着質、距離感をわきまえないロバートの要求がエスカレートするたび、サンディへの共感はどんどん増していく。
単純なストーカー行為とは異なり、あくまで友情の一環として彼はサンディの生活を脅かしていく。
それが無意識か或いは意図してかは自身で確かめて貰うとして、いずれであろうとも自らに同じ境遇が降りかかったかと思えば、これ程恐ろしいこともない。

これにはサンディの側にも後ろ暗い一面があることに起因しており、単に警察へ訴えることも出来ない。彼は内心では苦渋を舐めながら、表ではにっこりと笑ってロバートの頼みを聞かねばならないのだ。

奴隷にはならない

ロバートの家に落書きをするサンディ

相手の要求をのみ続ければ、いずれは傀儡として奴隷のような生涯を送るはめになる。
サンディもまた、右の頬を叩かれた時に、左の頬を黙って差し出すことには我慢がならないのだ。

彼は自身の窮地を救うための策を巡らし、またロバートもそれを巻き返すための一手を弄した。

これによりワンサイドゲームでなく、互いの攻勢が二転三転するさまを見せている。
あまりにもロバートのしつこさや不愉快さを一方的にぶつけ続けるのではなく、サンディによる逆襲で爽快感やハラハラ感を演出することに成功している。

これらはストーリーに大きな起伏を与え、その後へと引き込むための導火線の役割も果たした。
非常にバランス良くこの優勢と劣勢は反転し、その度にスクリーンへ釘付けになるだろう。

ストーリー構成

サンディの家でオリジナル原稿を見つけるロバート

単純なロバートによる、「嫌がらせ映像記録簿」とならない為には、映画としての仕掛けも必要だ。
パッチ・オブ・フォグではその点で心配は無い。忍ばせた伏線やその回収、最終的な顛末に至るまできちんと映画としての作法を心得ている。

仮にこれが、

しつこい嫌がらせを受けた→困った→どうにかした


という面にしかスポットライトを当てないのであれば、大きく評価を落としていただろう。

もちろん主軸は概ねこのフローを辿るのだが、その裏で錯綜する思惑や過去への対峙をサイドへ据えることで、色味や深みは格段に増しているのだ。
ここに思慮深く上映時間を使い切る、匠の業が見える。


徐々に明らかになる、サンディとロバートの過去。その先にあるのは真の友情か、それとも。

評価

ボートに死体を積むサンディ

かなり変わったテーマで描かれる本作。似たようなジャンルは挙げ辛いので、ともかく万人向けと言っても差し支えないだろう。

良質なスリラー作だった。

★★★★☆
四つ星の優良作。
パッチ・オブ・フォグ 偽りの友人(字幕版)
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