ワイルド・ウェストで繰り広げられるスプラッターアクション映画、BONE TOMAHAWKをレビュー及び 評価、感想、解説。
あらすじ
ここは西部開拓時代。
とある小さな町ブライトホープはその夜、何者かの襲撃を受けた。
馬番の男は馬舎で八つ裂きになって死んでおり、また幾人かの住民の姿も見えない。
保安官と補佐官のチコリーは現場に残された矢じりから、蛮族の襲撃だと判断した。

原住民に詳しい教授によれば、この名も無き部族は母親を喰らう穢れた一族と目され、関わりを持とうとする者は居ないという。
奴らにとっては文明人であろうと未開人であろうと、同じ胃袋を満たすたんぱく質に変わりはない。
人を喰らう蛮人。
アーサー・オドワイアーの妻と、保安官事務所副官のニックという若者はこの穴居人たちに攫われたのだ。
町の住人により、すぐさま救助隊が結成された。救出、そして報復のために。
アーサー、ブローダー、保安官、チコリー。命知らずなこの四人の男たちは一路、人を喰らう鬼たちの棲む穴倉へと旅を始めたのだった。
アーサー

牛追いの頭領。現在は足を骨折して療養中の身。
看護助手である妻が攫われたことを知り、居ても立ってもいられずに救出作戦に志願する。
足の状態はかなり悪く、長い悪路を耐えられるものではないだろう。
だが諦められるはずない。愛しい妻が今にも、恐ろしい悪魔の胃袋へ導かれているかもしれないと思えば。
ブローダー

気障な男。銃の扱いには慣れているらしく、部族との戦いも経験豊富である。
多少冷酷な一面もあるが、蛮族との戦いにおいては頼りになる戦力だ。
保安官

頼れる町の執行官。よそ者へ対しては些か手厳しく、怪しい人物の足を撃つのはお決まりのパターンらしい。
町を襲った穴居人へ対して激しい憤りを見せており、根絶やしにする覚悟で今作戦に挑んだ。
チコリー

保安官補佐官。軍医経験があり、多少の治療の心得を持つ。保安官への忠義はたいへんに厚く、死地へ自ら赴いた。
穴居人

肌に土を塗り、獣の頭蓋で装飾をした人喰い部族。投石や弓術に優れており、馬の扱いも得意なようだ。体格は皆大柄で、組み合いでの力強さを見せつける。
また特殊な周波数での鳴き声を出すことが出来る。何らかの技術で発するこの音によって、遠隔地の仲間への連絡手段としているようだ。
他部族からも恐れられており、カニバリズムを行う穢れた一族と忌み嫌われている。
名は無く、洞窟に住むことから単に「穴居人」と呼ばれる。
ネタバレ概略
- 1.強盗荒野の追剥ぎ、二人組。狩った獲物の懐を物色中、奇妙な音楽のようなものに気付く。
音に誘われた強盗たちは、気付かぬ内に墓のように積まれた石を崩していた。 - 2.襲来放たれる矢じりに倒れる強盗。老いた犯罪者は恐ろしげな部族に腹を裂かれ、その内にもう一人の男=バディは逃げ出したのだった。
- 3.骨折ブライトホープ町。
牛追いの頭領アーサーは、折れた足のために外出すらも出来ない日々が続いていた。 - 4.穴掘りその夜、生き延びたバディはブライトホープの外周に何かを埋めていた。
- 5.目撃保安官補佐のチコリーは、怪しげな穴掘り現場を目撃。
すぐさま保安官にこれを報告した。
酒場に向かったとされるその男を調べるため、保安官はあとを追うことに。 - 6.脚を撃つ酒場での質問中、明らかにバディという男は怪しげだった。
隙を突いて逃げ出そうと目論んだ彼の脚を、保安官は一発撃った。 - 7.慣習夜間にオドワイヤー家を訪ねたブローダー。保安官の遣いで、アーサーの妻に弾丸の摘出を依頼したいそうだ。
またやったのか、と言わんばかりに妻は出かけていった。 - 8.治療保安官事務所の監房内で治療は行われた。
安全のため、見張りには副官のニックが夜通し立つことに。 - 9.事件翌日。保安官の家に、朝一番で緊急の一報が入る。
馬番で厩舎に居たビューフォードが、なんと八つ裂きで死んでいたというのだ。
小さな町に似つかわしくない事件に、驚きながらも一同は現場を見に行く。 - 10.不安厩舎ではビューフォードが死んでおり、更に馬が盗まれた形跡もある。
不安になった保安官は、事務所の牢に急ぐ。 - 11.誘拐事務所には惨劇の痕はないものの、誰の姿もなかった。
ニック、バディ、オドワイヤー夫人。全ての人物が消え去ってしまったのだ。 - 12.穴居人酒場に主要な人物を集めた保安官。ただちに対策を練らねばならない。
矢じりから未開部族の関与を疑った保安官は、そこで恐るべき人喰いの「穴居人」の存在を聞かされる。 - 13.出立アーサー、保安官、ブローダー、チコリー。
四人は攫われたニックとオドワイヤー夫人を救うため、一路穴居人の棲む洞穴を目指すことに。 - 14.代償骨折した脚で乗馬し続けることで、アーサーの容態は徐々に悪化していく。
彼は妻の医療具から持ち出したアヘンチンキを飲むことで痛みを誤魔化していたが、保安官にそれを見咎められ、落馬防止のためと没収される。 - 15.判断夜営中、拙い英語の男たちが一行に近寄る。
盗人とも旅人とも判断しかねる彼らだったが、ブローダーは確かめる前に彼らを射殺した。
責める保安官だったが、ブローダーは経験則から追剥ぎだったと言い切る。 - 16.泥棒睡眠中にふと目を醒ましたアーサー。するとブローダーに覆いかぶさる盗人の姿があった。
慌てて犯人を撃つも、他の強盗によって全ての馬は盗まれてしまった。 - 17.遅延骨折しているアーサーは、これより後の行程を徒歩で往くため、一行とは別軸で移動することになった。
前を往く保安官らの野営を引き継ぐ形で、一巡遅れで進むアーサー。 - 18.壊死遅れて来たアーサーの病状を診るチコリーだが、ますます悪化の一途だ。
もはや壊死寸前の脚を見た保安官は、彼に引き返すように勧める。
だが彼は、骨を接いでくれるように頼む。 - 19.到着先遣の三人は、遂に穴居人の棲み処に辿り着く。
しかし見張りの男たちは猛烈な勢いで彼らに襲い掛かり、ブローダーは手首が千切れかける重傷を負った。 - 20.自爆保安官とチコリーにあとを託したブローダー。
彼は手持ちのダイナマイトに火を着けると、穴居人を巻き込んで自爆した。 - 21.数の差襲い来る穴居人は多勢で、保安官とチコリーはとうとう捕らえられる。
- 22.檻の中保安官らは檻に囚われる。向かいの牢にはオドワイヤー夫人と気を失ったニックが居た。
彼女の話ではバディは既に食べられており、自身らの身も危ういとのことだった。 - 23.股裂き檻から引きずり出されるニック。
彼は裸に剥かれたまま髪を削がれ、喉を打たれ、股から一直線に裂かれてしまう。
死の際の、最期の瞬間まで気高いままだった副官の無念を晴らすと誓う、保安官とチコリー。 - 24.麻薬酒瓶に入れたアヘンチンキに興味を持たせることに成功した保安官。
穴居人は強烈な麻薬を回し飲みすると、たき火の中に空っぽの酒瓶を放り投げた。 - 25.執念もはや這うように進むアーサー。彼は見張りの穴居人を撃ち殺すと、喉に仕込まれた笛をほじくり出す。
血まみれの笛を吹いては、おびき出した蛮人を葬っていくアーサー。 - 26.露見麻薬の過剰摂取で死亡した、ひとりの穴居人。異変に気付いた彼らは、仕掛けられた罠に怒り狂う。
檻から引きずり出される保安官。 - 27.焼き石裂かれた腹に、熱した酒瓶をねじ込まれる保安官。
更に穴居人は、ライフルの仕組みを見よう見まねで覚え、彼の腹部に一発発射した。 - 28.到達アーサーは遂に忌まわしい牢に到着する。
騒ぎに隙を見た保安官は、穴居人の斧を奪うと、蛮人の首を叩き切る。 - 29.殿妻を助けたアーサー。保安官は足止めで残ることを告げ、チコリーにあとを託す。
アーサーたちが洞穴から逃げ出したのち、ライフルの銃声が数発、穴の中で響いたのだった。
ゴア表現

臓器露出、欠損表現を含むため、グロテスク度でいえばそこそこ激しい部類に入る。
意外なことに人肉を穴居人が食するシーンは殆どなく、それらは前後で推察が出来る程度にとどめられる。
が、戦闘や遺体の扱いにおいてはその残虐度を見せつけるだろう。食肉をおろすように目の前で解体される友、容赦なく一片の慈悲すら見せぬ苛烈な責め、残酷な仕打ちを受けている女性たち。
胸が悪くなるような描写で描かれるこの穴居人たちの習性に、思わず目を覆いたくなるかもしれない。充分に注意して視聴されるのが良いだろう。
疲弊していくアーサー

前述したようにアーサーは足を骨折しており、通常であれば12週間は安静を要する容態である。
無理な強行軍がたたり、彼の足は次第に悪化していく。乾燥した西部の大地に、吹き付ける砂風。一歩進むごとに骨はずれ、暑く蒸れた包帯の下では菌が繁殖する。
およそ普通の人間であれば引き返すのではないか。見ていて痛々しいその姿に、残りの者に任せて町へ帰ってくれ、と何度心の中で願ったことか。
だがアーサーは決して諦めない。
妻を救う。ただそれだけの原動力でこの男は、荒野の果てまでも辿り着く。
戦いだけではない

旅路は長い。
彼らは共に進む中でぽつりぽつりと、自らの背景を少しずつ語っていく。
触れられたくない過去であったり、亡き妻の思い出であったり。
穴居人の棲み処へ近づけば近づくほどに、彼らの人となりが浮かび上がってくるだろう。
実際に奴らと遭遇するのは終盤近くであり、これが単なるホラー作品であれば冗長な前フリに嫌気も刺すだろう。しかし本作はショッキングホラーではない。
ひとりとして弱音を吐かず、死の淵にあっても気高い誇りを抱き続ける男たちの胸の内にあるものをじっくりと見守っていよう。
評価
おぞましい穴居人と、それに挑む四人の男たち。
ショッキングシーン慣れしている方には是非ともご覧になって頂きたい作品だ。
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