出口の無い館で殺人鬼から逃げ惑うコメディスリラー映画、CRUSH THE SKULLをレビュー及び評価。
あらすじ
オリーとブレアはケチな泥棒稼業を生業にしている。彼らはある日、侵入した家屋でふとしたヘマにより、多額の借金をこさえることになる。
高利貸しから解放される為には、迅速にビッグマネーを掴む必要があった。
ブレアの兄、コナーとその友人ライリー。そこにオリーらも加えた計四人は、郊外の立派な屋敷に泥棒に入ることにした。
だが奇妙なことにこの家屋、入ることは容易いのに出ることは難い。完全に袋小路に閉じ込められた四人は、ともかく屋内を散策することにした。
そこで彼らは、この住居の持ち主が恐るべき殺人鬼であることを知ってしまう。
最高の出だし

導入でちんたらともたついて視聴者の心を離れさせる作品はことのほか多いが、本作にそれは当て嵌まらない。
殺人鬼の館へ導かれるまでの前哨戦として描かれる最初のエピソードが、とてつもない強さで我々のハートを掴みに来るからだ。
オリーとブレアのキャラクター性を僅かな時間で語りつつも、このぶっ飛んだファーストコンタクトで作品のコンセプトを同時に説明する役割も果たした。
バカバカしくて間が抜けたコメディと、当の本人たちの至って真面目なスリラー色。
概ね半々程度にミックスされた、この融合したジャンルの配分は、きっちりラストシーンまで守られる。
OPの流れが楽しめる方は、最後まで虜にするチカラが本作には有されている。
クセ強し

ともかくキャラが濃い。
コメディホラーのしては珍しく「オモシロ黒人枠」を排した本作は、オリーとライリーがアジア系、ブレアとコナーが白人兄妹になる。
誰も彼も個性的な人物で、いちいち真面目にふざけた台詞が笑いを誘う。
特に「彼女を巨乳にするため」泥棒に入ったというライリーは屈指のクセ強キャラであり、愛すべきアホキャラと呼べるだろう。
逆に殺人鬼側の素性は殆ど明らかにはならず、その点を少し掘り下げてもより良い結果になったかと感じた。
また圧倒的に登場人物の少ない部分も特徴で、連続殺人鬼という設定の割に、館で出会う人物は生者死者問わず、かなり限られている。
恐怖作品としての側面

良質なホラーやスリラーとしての側面を求めるのは、この作品に限っては難しい。
コメディ感を含む特性上、どうしても怖かったりドキドキしたりする場面は描き辛い。というかそもそも、その点で真摯に取り組んではいないだろうし、またその必要もない。
ちょっとしたドッキリ演出はいくらか見られるものの、怖さを求めて視聴すれば肩透かしであることは免れないだろう。
パッケージの煽りだけで視聴に挑んだ方の中には、この罠にかかった者も多く居そうではある。
一部で斬首などの残虐描写も含むが、悪趣味なオブジェクトとしては撮影されていない。
それらはあくまで欧米圏でのブラックジョークの範疇に留まる。
意匠のカメラワーク

急なズームイン/アウトの使い方や、息遣いすら表現しそうな手ぶれの表現に、視認出来るギリギリの範囲で振り回す視点。
これらに「24」シリーズを思い起こす方も居るかと思う。
作中のカメラワークは非の打ち所がないほど素晴らしく、この撮影技術によって本作の評価が一段階増していると言っても過言でない。
撮影技術が「悪い」場合にしか話題に上がり辛いカメラマンの手腕だが、本来はスクリーンを挟んで我々と制作陣とを繋げる、もっとも近しい存在でもある。
彼らの熟練した腕前に、感謝を示したい。
評価
娯楽作品としての出来映えは一級品。
休日にビールでも飲みながら見るには、最高の時間浪費だ。
作品に含まれる伏線や複雑なストーリー、社会風刺やメッセージ性などに疲れた方には、息抜きとして大いに進められる一作だった。

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