Apple TV+より配信中のドラマ、SEE 暗闇の世界シーズン1エピソード1をレビュー及び 評価、感想、解説。
あらすじ
21世紀、致死性ウィルス蔓延により世界中の人口は200万人まで減少。
生き残った人々も全員が視力を失う。
数世紀後、視力という存在は単なる幻想であると目され、口にすることすら憚られた。
ババ・ヴォス

アルケニー族、族長。
大柄な体躯に見合ったパワーで村の防衛を一任されていた。
村に遭難のような形で訪れたマグラを妻として娶り、その時には妊娠していた胎児を我が子として迎えることにした。
大半の部下からは信頼が篤いが、一部の者からは反発を買っているようである。
ネタバレ概略
- 1.出産洞穴の中で産気づくマグラ。産婆として付き添うのは魔術師パリス。
そこに夫のババ・ヴォスの姿はなく、遠くで投げ縄の音が響く。 - 2.戦闘準備ババ・ヴォスは戦闘の準備を行う。部族は岩壁で敵を迎え撃つことに。
- 3.裏切りアルケニー族を裏切ったゲザー・バックスは、マグラという女が族長のババ・ヴォスの妻となった経緯を明かす。
彼女の孕んだ子の父であるジャーラマレルは、タクマティ・ジュン将軍が追っている男だ、と。 - 4.双子男女の双生児をマグラは出産する。
- 5.戦闘開始岩壁にて戦闘が始まる。
苦戦したババ・ヴォスは岩壁を崩す最後の手段を用いたが、相手の本隊は未だ後方で戦力を温存していたのだった。 - 6.二分追い詰められたアルケニー族は、魔術師であるマグラとその子たちを引き渡すように言う者と、ババ・ヴォスを支持する者に割れる。
しかし魔女パリスは女王が温情を示すことはないと言い切り、逃げなければ全員が殺されると言う。 - 7.橋パリスは生まれた子供たちの父親がかけた橋が峡谷にあると言う。
誰もそのような話は聞いたことがなかったが、今はパリスに従うほかない状況だった。 - 8.追撃タクマティ・ジュン率いる軍が迫る。彼は最初にゲザー・バックスに橋を渡らせた。
- 9.切断橋を切り落として追撃を振り払うババ・ヴォス。すんでのところでゲザー・バックスは助けられ、裏切ったはずのアルケニー族にまんまと潜り込むことになった。
- 10.合議女王と有識者による会談が行われる。
ジャーラマレルの子にその特性が受け継がれるか否か、という問題だったが、ケイン女王は彼の子も同じく異端者であると認定した。 - 11.聖域西へ向かったアルケニー族は、ジャーラマレルの示した聖域に辿り着く。そこで彼らは、新たな営みを始めることにした。
登場人物たち
SEEに登場する人物たちを、エピソード1の時点で読み解いていこう。
アルケニー族

アルケニー族はウィルス汚染から生き残った未来の人々であり、さほど多くない人数の山で暮らす民になる。
鉄や革製品を用い、戦闘では刃と投げ縄が主な武器とされる。
ただし鉄に関しては”神の骨”と呼ばれる奇跡の品と目されており、すなわち前時代の遺物を扱っているにとどまる。
金属の錬成を行うには盲目では厳しいことが窺える。またそれら技術自体もとうに失われているのであろう。
角笛や雄たけびで鼓舞したり、まじないのような文言を唱えるのが特徴的。
このあたりには現代の未開部族感がやや見える。
鼻利き
アルケニー族には”鼻利き“と呼ばれる特殊技能集団が居り、遠く離れた場所からでも気配を察知するに長けている。
視力を失った世界の人物は各々、生活や戦闘における周辺環境を察知するには十二分な身体感覚を有している。
が、これら鼻利きの能力はその数段上のレベル。
人数や感情、それらを取り巻く匂いすらも感知可能なのだ。
鼻利きには各々で得意分野があるようで、ババ・ヴォスは彼らに得意な分野の情報を探らせている。
- マタル
- アユーラ
馬、犬、人すらも区別可能なこれらは、戦闘前の優位性を築くには重要な手段になる。
また真偽は不明ながらも、敵方のタクマティ・ジュンの部下にはウソを感知する能力者も居るとされた。
視覚を失った代わりに人類へ発現した能力は、かなり現代では異色と思われるものの数々になっている。
敵対勢力

- ケイン女王
魔術師狩りを推し進める暴君としての一面を窺わせる。
また妹を殺した罪で死刑宣告した男を追わせている。
- タクマティ・ジュン
密告者を使い、アルケニー族を襲った。
- ゲザー・バックス
マグラがババ・ヴォスの妻になった事実をタクマティ・ジュンに伝えた。
女王の兵の特徴として、犬や馬を扱うことがポイントになる。
これら動物はウィルス汚染によって視覚を失っていないと思われ、必然的に相対する者には大きな脅威となり得るからだ。
ただし視覚そのものを否定している女王が、動物のみに例外を与えているとは考え辛い。
よって視覚を有しているという理由でなく、単に鼻の良さや騎馬としての利便性で利用していると考えるにとどめるのが世界観的には正しそうだ。
またケイン女王に関しては、かなり奇抜な人物になっている。
自慰行為を通して神と通ずる祈りの捧げ方をしており、炎と煙を乞い、暗闇と権力と栄光を捧げる。
また「アーメン」という言葉を使うことからも、これが変形したキリスト教であることが窺える。
魔術師

魔術の定義はかなり特殊なものになる。
前段の鼻利きなども現代においては充分に”魔術”の類いだが、この世界でそれらは類しない。
主に現段階で判明しているのは、三人の人物になる。
- パリス
ケイン女王からの魔術師狩りの対象ではないようだが、存在を知られれば危うい節は感じさせている。
- ジャーラマレル
また過去の人類の繁栄を説いていることで、現有の宗教信仰の教えと相反したために異教徒と断ぜられる。
視力を遺伝で相続したと考えられる彼の子供らもまた、同じく魔術師とされる。
- マグラ
彼女の子供らが魔術師として扱われるかが、今後の争点になり得る。
ケイン女王の理念の中では魔術師は等しく罪人で、断罪されるべき人物になる。
これは現実の魔女狩りとよく似ており、宗教観の異なりや異端な能力者をして「魔女」と断じた過去が我々にはある。
SEEの世界は遥か未来の舞台だが、そこでもやはり人間は、同じ過ちを繰り返しているという示唆になるだろう。
時代設定

単純な中世ファンタジー作品でなく、未来のSF色を含んだ本作。
なぜこうした設定が必要かと言えば、それはロストテクノロジーをテーマとして据えているからと思われる。
現代でも紀元前以前のオーパーツは多々見つかっている。
ピラミッド、モアイ像、ギガス写本など様々だ。
当時の技術では到底作り得ず、中には現代ですら再現不可能な代物は多々存在している。
SEEの世界でそれらは、鉄や機械、我々の身近にある全てのものになる。
神の骨と呼ばれている神からの贈り物は、我々には見慣れた金属製品だ。
ただしこの見方はアルケニー族と他で異なると思われる。
ケイン女王の住まいはダムで、レコードをかけて祈祷を捧げている。
ある程度の文明の名残を享受している彼女とアルケニー族では、かなり文明レベルに差異がある。
感想
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戦闘

最大の懸念として、盲目の者同士の戦いというと、かなりスローペースな探り合いが多いかと思っていた。
ダークファンタジー作品の華とも言えるバトルシーン。重要なファクターだけに、かなり心配な部分でもあった。
しかし蓋を開ければハイテンポなスリリングバトルで、見ていてストレスを感じる部分は無い。
また特有の”気配を殺す”という技術により、従来見られた戦闘シーンとは異なるアプローチに成功している。
更に飛び道具の扱いが、これまた特殊。
戦闘行為の歴史として、いかに遠距離の安全圏から相手を無力化出来るかということに人類は腐心してきた。
しかしSEEの世界では、技術的な意味でも身体的な意味でも、遠距離攻撃がほとんど用いられない。
彼らのほとんどは第六感的な身体感覚に優れ、周辺の敵性を刃物や鈍器で襲うことに苦は無い。
また恐らくアルケニー族の文明レベルでも弓矢は作成可能で、最強クラスの武器になり得るはずだ。
にも関わらず彼らがこれを用いないのは、ひとえに放った矢ではヒット確認が不可能だからになる。
対象の無力化を確認出来ない攻撃ほど、信用の出来ないものはない。
そこで彼らが用いるのが、鉤縄(かぎなわ)による投擲攻撃になる。
主に相手を引きずり出すことに長けたこの武具によって、相手の懐に入らずに戦力を削ることが可能になっている。
これら背景には、盲目という特徴と時代背景の絶妙なマッチングが窺える。
かなり設定を練り込まないと、このような戦闘を描くことは困難だったろう。
異能力のさじ加減
作中の人物は総じて盲目であるものの、歩行や日常生活、更に戦闘行為もなんなくこなしている。
これらを支えるのは、各人に備えられた特殊な身体感覚と思われる。
人類は長い視覚の喪失に伴い、新たな分野の感覚器を発展させたのであろう。
およそ数メートル以内の物体であれば、その動きを感知するのに手間は無い。
また前述の鼻利きであれば、かなり遠隔地の人物を探り出すことも造作ないようだ。
この部分の設定だが、物語を遅延なく進めるための仕掛けとして必須だと言わざるを得ない。
若干都合の良すぎる能力にも思えるものの、ある程度の周辺環境を探れる技能が各人に無い場合、かなりシーンの選択肢が狭められてしまう。
ただし鼻利きに関しては、少しやり過ぎた超能力に思えなくもない。
今後の展開に際して、異常な優位性を一方的に勝ち取ってしまったり、或いは有効に活用しないことで齟齬を疑われることに繋がりやすい。
総評
やや内容に薄い一話目だったが、今後の展開には充分期待出来るだろう。

次のエピソードは以下から。
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