【映画】ディスコード/謎多き人間図を徹底解明【考察あり:ネタバレ注意】

ホラー

一軒家で起きる怪奇現象を扱ったサイコホラー映画、THE PACTをレビュー及び評価、感想、解説 、考察。

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あらすじ

絶縁状態の母の死をきっかけに、生家へ里帰りすることを姉から促されたアニー。
しかしその通話を最後に、姉ニコールは忽然と姿を消してしまう。

訝しく思った従姉のリズと共に生家を調べるアニーだが、なんとその晩、今度はリズが失踪することに。
同時に多発する怪奇現象と、奇怪な悪夢。

アニーは真相を調べるべく、警察や霊能者の力を借りるのだが……。

和ホラー感

クローゼットの中に広がる圧倒的な闇

光と闇のコントラスト、特に闇へのフォーカスが強い。
根源的恐怖を誘引するこの暗闇が、作中の至る場面で我々をおびやかす。
目が痛いほどの暗闇に、静寂と微かな物音。
古き良き和ホラー感を随所で感じ取れるだろう。

SEを入れたビックリ演出やチープなポルターガイストはいかにも欧米感に溢れているものの、不気味な一軒家という雰囲気形成に関しては素晴らしい出来映えに思える。

また後半で現れるサイコキラーに関しても、かなり役作りがハマっている。
身体つきや姿勢、目線や肌色。
不気味で怪しげな怪人のイメージを存分に発揮している。


唯一の難点は、肝心の幽霊があまり恐怖を醸し出せていないことかもしれない。
だがストーリーの背景を考えると、おどろおどろしい風貌で現れるのは齟齬になる。よってこのレベルのゴーストが、最も具合が良いとも言えるだろう。

実家が怖い

不気味な実家に帰省したアニー

義理の両親が意地悪でイヤだ、という意味合いではない。

アニーは幼少から生家に良い思い出を持っておらず、また母親との折り合いも悪かった。
更に母の死で戻った実家で姉が消え、従姉も消え。
おまけに壁紙の向こう側には、見たこともない扉が一枚現れる。


世界中でこうした”知らない部屋が有る”という気持ちの悪い話は多々語られており、大抵が間取りのおかしさでそれに気付くことになる。
特に日本のそれは独特の湿っぽさで彩られることが多く、心霊にしろそうでないにしろ、聞いていて気味の良い話ではない。


さてアニーの発見した小部屋だが、これがまた不気味なのだ。
真っ暗な部屋のあちこちに、覗き穴。
自分が生活していた頃を思い出すと、身の毛もよだつような恐怖を感じるだろう。

こんな実家はイヤだ。

霊能者のクセが強い

霊視を行うスティービー

アニーの高校時代の同級生、スティービー。
つてで実家を霊視してもらうのだが、とにかくクセ強。

  • 色白を超えて蒼白
  • ジャンキー感モリモリ
  • 霊感マックス



霊障の前に健康状態が不安だ。
およそ今までにホラー作品で見たことのないようなキャラである。
どうやら目が見えていないそぶりがあるが、霊視の力か、ある程度の物体を把握している節はある。


彼女は霊との交信で、お馴染みウィジャボードを推奨する。
子供用の遊び(=こっくりさん)と捉えられている同品だが、案外大人も頼れる万能アイテムなのかもしれない。


また実家霊視によって、その後の伏線がいくつか張られることとなった。
詳しくは後段の考察で解説しよう。

焦らしとテンポずらし

闇に現れた謎の幽霊

拷問の話をしよう。

何度も繰り返し痛みを受けていると、実際に苦痛を与えられる瞬間よりも、それを待たされる時間の方が何倍も苦しいんだ



実はこの言葉は、恐怖にも当てはまる。

実際に現象が目の前にかざされる瞬間より、いざそれが「来る!」と分かっていながら待たされる時間の方が、ずっとドキドキやヒリつきは強いのだ。


本作はこの人間の習性を熟知している。

上記画像のように、見えているものがアクションを起こすまでにたっぷりと猶予を取ることで、その間に感じる自らの鼓動やイメージ力を爆発的に向上させている。
またそのテンポも独特で、随所で「思った瞬間のワンテンポずれ」を強く感じさせられた。

ホラー玄人の、職人妙技と言える。

評価

細かく予想を裏切りまくる、脱・テンプレホラー映画



ありきたりなホラーに食傷気味の方にこそ、オススメの一作になる。

★★★★☆
四つ星の優良作。
ディスコード(字幕版)
ディスコード(字幕版)




以下、考察及びネタバレ注意。






人間関係の謎

ここでは明言されない人間関係を考察する。

殺人鬼とアニー

アニーと殺人鬼の共通点

同じオッドアイを持つ彼らが、血縁関係にあることは容易に想像出来る。
単純に考えれば、父娘であるとするのが最も正しいだろう。

チャールズ・バーロウとアニーは親子関係



図らずともアニーは、実の父を射殺したことになる。

また彼女は最後にこの事実に気付いている。
明るくなった家屋で殺人鬼の瞳を見つめた時にそれは表されている。


更にスティービーの指した、

その答えに信じて従える?



という言葉はこの認めがたい事実を示唆していた。

ジェニファー・グリックとアニー

写真に映るジェニファーとジュディ

彼女が身に着けていたペンダントをアニーが託されたという事実と、霊魂がアニーを助ける理由。
これらを総合すると、ジェニファー・グリックはアニーの母親であった可能性が高い。

つまり何らかの理由でジュディ・バーロウはジェニファーの子供であったアニーを奪い取り、自らの子として育てたことになる。

ジュディとニコール、及びアニー

大きな木の前で写真に映るジュディとジェニファー

写真の時点で、ジュディは妊娠している。
すなわち姉のニコールはジュディの実の母ということで間違い無いと思われる。

またこの段階でジェニファーは妊娠しておらず、この後にアニーを身ごもったと考えられるだろう。

リズ

リズが父方、母方のいずれの従姉であるかは判明しない。

行方知れずのジュディの夫か、或いはジュディの兄弟姉妹いずれかの娘であることは確実である。

過去になにがあったのか?

具体的に過去、どのような経緯があったのか?推測していこう。

ジューダスによる犯行

ジューダス犯行のロードマップ

1975年から最低でも7件の監禁殺人を犯したジューダス。
最後の被害者はアニーの母である、ジェニファー・グリックだった。

この事件を最後に、ジューダスによる殺人はぴたりと止まる。
つまりこの一件で何かしらが起きたのち、妹ジュディ家の秘密の部屋へ匿われたことになる。

またジェニファー殺害時、少なくともアニーは誕生していた。
この記憶が全くないことから、彼女がまだ赤子だったと考えられるだろう。

前段までの推測が正しいとすると、チャールズはジェニファーと交際をしており、子をもうけた。
その後トラブルで妻を殺害した、という筋書きが通るだろう。

ジュディの夫殺害

アニーは明確に父を記憶しているようなことを語った。
ということは幼少期を共に過ごしたのち、彼は失踪したことになる。

またこの父はアニーの実の親チャールズ・バーロウでなく、ニコールの父親である。
対面した時にチャールズから父を感じなかったことから、アニーの中に彼の記憶は一切無い。


ここで彼女が考える、「問題があると逃げ出す血筋」が誤りであったことは、殺人鬼チャールズ・バーロウの存在で示された。
つまり消えたジュディの夫は蒸発でなく、殺されたと考えるのが正しいだろう。

その理由に関しては、

家の中に匿われるチャールズの存在に気付いた



これが最もシンプルに強い。

虐待

ジュディはニコールとアニーに対して虐待を行う。

ここに関しては後段で解説しよう。

消えたニコールとリズ

ジュディという枷を失ったチャールズは、ニコールとリズを殺害する。

作中ではリズの遺体は明確に示されないが、画面外の暗闇の中に遺棄されていたと考えるのが正しいように思える。

疑問点

様々な疑問点を追求しよう。

エヴァ、及び幼少アニーはなぜ無事だったか?

幼い姪を連れ出すアニー

ジェニファー殺害時にそばに居たと思われる幼少のアニー、またリズ襲撃時に寝室に居たエヴァ。
彼女たちはいずれも無事であり、チャールズの標的にはならなかった。


恐らくチャールズの標的は、成人女性に限定されると思われる。
これはニコールとアニーが生家で暮らした頃に無事であったことで示唆される。

チャールズは何らかの理由で精神的に衰弱し、その矛先を成人女性へ向けたと考えられるだろう。

チャールズの犯行理由は?

ジューダスと写真を結びつけるシーン

推察するに、過去に女性関係でプライドに傷を負い、アイデンティティを喪失した。
ベッドルームでさめざめと泣く彼の姿を思い出そう。

やがて監禁して殺害というプロセスに支配欲を満たすものを見出した彼は、止められない犯行に手を染めたのだ。

なぜ犯行をやめたのか?

最後に被害者となったジェニファーと、その友人が妹のジュディであったことが決定的な一件になった。


兄の精神疾患と連続殺人を知ったジュディは、彼を家屋で匿うことにした。
引き換えにこれ以上の犯行を重ねないことを約束させ、こうして殺人鬼ジューダスは闇に消えることになる。

同時に遺児となったアニーを引き取ることに。
またジェニファーの身に着けていた十字架のアクセサリを預かり、アニーへのちに渡した。

ジュディはなぜ虐待をしたのか?

棺の中で横たわる母の遺体

ここでは肯定的な意見と、否定的なものに分かれる。

兄チャールズから子供たちを守るため?

物置に閉じ込められた子供たち。
母ジュディは殺人鬼の目に触れないように、ニコールとアニーを隠したという説だ。



しかしこの説はよくよく考えると穴だらけになる。

道義責任

母ジュディを美徳で語るならば、真に彼女が選ぶべき道は殺人鬼の逮捕協力である。
にも関わらず彼女は兄を匿うことを選んだ。
これにより、ジュディが聖人君子でないことが明白になる。

”虐待”している

スティービーによる霊視で、アニーの過去が垣間見えるシーンがある。
そこでは、

ひどすぎる



とまで言わしめた。

単純な閉じ込めのしつけというのは古今東西行われており、その是非はともかく歴史は古い。

欧米では地下室、日本では押入れなど。
視聴者の中にも、こうした経験を記憶の片隅に持つ者は少なくないだろう。


だがそうした”閉じ込め”の記憶が果たして、「ひどすぎる」とまで印象を与えるようなものだろうか?
スティービーの見た光景は果たして本当に、物置に閉じ込められただけの姉妹の姿だったか?


以上からほぼ、”善意の匿い説”は消える。

ジュディも異常者

兄チャールズが成人女性を好んで殺すシリアルキラーなら、妹のジュディも幼児をいたぶる悪趣味であったという説。

前段から不必要な虐待を行っていた可能性の高いことが示されたジュディ。

スティービーはジュディを指し、

彼女は隠したかった



と言った。
その思惑からは、純粋な無償の愛というより、込み上げる悪意を感じるだろう。


彼女を悪人であるとした場合、更に様々な可能性が浮上する。

  1. ジェニファー殺害の指示
  2. 連続殺人への関与
  3. 連続殺人の主導



最悪のケースだと、そもそもジューダスの正体が二人組であり、尚且つその主導権を握っていたのはジュディであるパターンだ。

そこまではいかずとも、一連の殺人事件に関与していた可能性はある。
この場合、兄チャールズを匿うことは必然となる。

また純粋にジェニファーだけを殺害指示した可能性も否定出来ない。
ジュディには幼児虐待趣味があった以上、アニーを奪い取り、我が物としていたぶるために彼女を殺害してもおかしくはない。

ジュディが止めている内は、チャールズが殺人を思い留まれていたという状況

これらを強く支持する証拠として、ジュディによる言いつけでチャールズが殺人衝動を抑えることが可能だった部分が挙がる。

彼女の死後は暴走したものの、それ以前の20年間は殺人を犯していない。
よってジュディによる教唆が行われていたと考えるのが自然だ。



つい母の愛を盲信しがちな識者の意識を、逆手に取ったジュディの異常性。
虐待という揺るがぬ過去がある以上、彼女が異常者であったと考えるのが最も手早いだろう。


またどちらの説に基づくかで、アニーに託されたアクセサリの意味合いが大きく異なる。

優しい母:真の母への敬意
異常な母:殺害した被害者を侮辱し、尚且つその子を騙した深い業



ラストシーンの意味は?

暗闇から覗く不気味な瞳

売却された家屋の秘密の部屋で、覗き穴を見つめる何者かの眼。
これは単純に、

射殺されたチャールズは悪霊となり、再び蘇った。



この解釈で良いのだろう。

一連の流れ

作中以前の全貌を、最も可能性の高い仮説でタイムラインにしてみよう。

事件の全容
  • 1.
    ジューダス誕生
    殺人衝動によりチャールズは連続殺人を犯す。
    ジュディも監禁、殺害に関与を持った。
  • 2.
    アニー誕生
    ジュディの紹介で、チャールズとジェニファーが交際を始める。
    ジェニファーはアニーを出産。
  • 3.
    ジェニファー殺害
    チャールズの殺人衝動を利用し、ジュディはアニーを奪い取るために殺人を教唆する。
    チャールズは後悔に苛まれ、しばしば泣き暮れることが増えた。
  • 4.
    アニー引き取り
    戸籍提出前に奪われたアニーは、ジュディの実子と登録される。
    夫には亡き友への友情と慈愛、敬意を偽ってみせた。
  • 5.
    チャールズ隠匿
    自宅を改装し、ジュディは兄を匿うことにした。
    同時に殺人を控えるよう言い含める。
  • 6.
    夫殺害
    チャールズの存在を見られたため、ジュディは夫の殺害を兄に依頼。
    死体は処分され、彼は失踪人として処理された。
  • 7.
    虐待開始
    歪んだ欲望により、ニコールとアニーは虐待を受ける。



このような経緯になるだろう。

タイトルの回収

邦題

邦題はディスコード=DISCORDになる。

これは主に「不和」を意味し、恐らくオッドアイの部分に引っ掛けて、アニーの実親を意識させるタイトルになる。

原題

原題はTHE PACT、これは「協定」などを意味する。

この題こそ物語の真実を表しているだろう。

ここで言う協定とは、

ジュディとチャールズの秘密の盟約



これを指すことになる。


だが協定とは、双方に利益が無いと成立しない。
前段でジュディが悪人であるとしたのは、このタイトルに依る部分が大きい。

彼女が単純な善人で、無償の愛を唱える聖人であればタイトルは、

UNCONDITIONAL LOVE = 無償の愛



こうなるはずだ。

だが反して明確に、ジュディにも利益がある双方向取引と明示される。
よって彼女がチャールズと同じく悪人であることに、それほどの疑いは無い。


つまり兄妹で交わされた秘密の協定とは、

ジュディの利益=子供を虐待したい欲望

×

チャールズの利益=殺人罪からの隠匿



このような図式がタイトルから読み取れるだろう。

終わりに

実はチャールズ≠ジューダス説も考えたものの、それだとスティービーの霊視がやや噛み合わない結果になった。

次作ではディスコード/ジ・アフターもリリース済なので、興味のある方はそちらも観てみるといいだろう。

ディスコード(字幕版)
ディスコード(字幕版)

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